初めての外
「よし、今日はパパとお出かけしてみようか!」
今日はいつもはあまり見ることのできない父の姿がある。
今日は仕事が休みなのである。
★
この世界に来て数ヶ月、ようやく俺はこの家から外に出られるようである。
本当はステータスの本を読むつもりだったが、外にも興味はある。父母がいないといけないので、今日はこちらを優先することにした。
父が俺のことを抱っこし、外へと向かう。
「行ってらっしゃい。」
母はついてこないようだ。
目にくっきりとしたクマを残しており、しばらく寝ていないようである。家事をしていて忙しいのかと思ったが、そうではないようなクマの濃さだ。
何かあったのだろうか。
毎日会っているのだが、気づかなかった。
こういうところもモテないところなのだろう。
今日はゆっくり休んでくれるといいのだが。
さて、父と一緒に外へ出ると、外に景色が目に飛び込んできた。
ここは実に殺風景なところだった。
周りには小さな家が数軒しかなく、あとは田や畑しかない。
畑はかなり広く、奥の方にうっすらと森が見える。
…こんなところで何をして遊ぶというのだろうか。
「今日はお前に友達ができるかもな。パパは楽しみだぞ!」
ふむ、友達か。前の世界ではほとんどいなかったし、この世界では数人くらい欲しいものだ。
(幼馴染のライバルとかっていいよな!)
前の世界では剣道をしていたが、そこでは上手くもなく、下手でもなかったので、ライバルなどはできなかった。
だから、そういう関係に憧れていたのである。
(…でもこの村に同い年ぐらいのやついるかな?)
俺は0歳でまだまだ産まれたばかりだ。
言ったら悪いが、こんな過疎の進み切ったような村で俺と同い年のやつがいるとは思えない。
「…この前ここに越してきたやつが子供を産んだんだ。」
…あんたはエスパーかよ。
「そいつは俺が王都で働いていた時に、一緒に仕事をしていたんだ。ライバルだったんだぞ。
まあ、俺が勝ってたけど。」
…最後の言葉は強がりだろう。
それよりやはり王都とかあるのか。
大きくなったら行ってみよう。
というか、王都で働くって結構すごいんじゃないのか?漫画とかだとかなり凄くないといけない気がする。
…やはりあのステータスは凄い方なのか。
「ついたぞ。」
そうこうしているうちに到着したようだ。
外観は特に大きくなく、木製だがかなり頑丈そうな感じがする。二階建てだ。
「待ってたぞ、ダライアス。」
俺たちのことを出迎えてくれたのは、ガタイの良い男性だった。
キリッとした顔立ちで、少し怖い。
だが、優しい笑顔で、爽やか感がすごい。
少し長い感の髪が綺麗だ。
…絶対にモテただろう。
「久しぶりだな、クロン。」
名前はクロンというらしい。
「まあ上がれよ。茶でも飲んで、話でもしようや。」
絶対アバ茶だぞ!飲むな、ダライアス!
…冗談はさておき、早速席に着くダライアス。
俺は父に抱えられたままだ。
そういえばこの世界では部屋に上がる時には靴を脱ぐようだ。こういうこまかいマナーもしっかり覚えておこう。
「これが俺の子だ。」
そういうとクロンはシャボン玉でも触るかのように優しく、リビングで遊んでいた子供を連れてきた。
確かに俺と同じくらいに見える。
「お前、流石に慎重に持ちすぎじゃねえか?」
「バカやろー。男手一つで育てたんだ。力加減間違えてあいつの忘れ形見殺しちまったらオレァ死ぬぜ?」
…母親は居ないのか。
「…あいつが死んでから、もう半年もたつのか。」
「ああ、呆気ないもんだよな。こいつを産んで、喜んでたんだぜ、あいつ。病気でころっと逝っちまった。あのバケモンがだぜ?」
「兵士学校の頃から一緒だった俺が一番よく知ってるよ。」
…あの父がバケモンと呼ぶって、どんなやつだよ。
というか以外とクロンは口が悪いらしい。
「覚えてるか?俺らが兵士だった頃にアイツがやったことをよぉ。」
「…圧倒的だったよ…」
「ああ、バカな山賊たちが50人ぐらいで襲ってきて、一人で全員半殺しにしてたのは…ちょっとちびったぜ…」
「お前が告白して、照れ隠しに殴られて、全治2ヶ月になってたしな…」
「ああ、あの時は死ぬかと思ったぜ…」
本当にヤベェやつじゃねえか。
「懐かしいよな…覚えてるか?俺とお前で決闘したことをよぉ。」
「勿論だ。確か俺の20勝0敗だよな?」
「バカ言え。俺の20勝0敗だ。」
「いやいや、記憶喪失してんじゃねえよ。俺が勝ってた。」
「いやいや…」
…少し明るい空気になってよかった。
しかし暫く続きそうだ。
俺は不意に、クロンの抱いている子へと目を向けた。
目を向けると、その子もこちらを見ていた。
かなり整った顔だ。まだ赤ん坊だが将来的にモテモテになっているだろう。
クリクリした大きな目は少しつり目だ。
気の強そうな印象を受けた。
髪は父とは違う赤色だ。
「だー。」
「おっと、どうしたのかな?」
「そうだ、積もる話もあるが、とりあえず顔合わせでもしようか。」
「そうだな。この子はアーマだ。嫁が名付けた。」
「だー。」
「アーマちゃんか。よろしく。この子はダイナだ。俺と妻のかしらをとって名付けた。」
「あう。(よろしく。)」
「そんじゃ、リビングを使って遊ばせるか。俺たちは話ししてようぜ。」
「わかった。でも目の届く位置でな。」
遊ぶ、か。ずっと本読んでたからこの年の子は何をすれば楽しいのかわからないな。
「だ!」
アーマが人形を持って俺の方へ来た。
ほう、人形遊びか。
俺に対して人形遊びを選ぶとはいい度胸だ。
前世で一人で人形遊びをし続けた腕前を見せてやろう!
「あう!(こい!)」
俺たちの熱き戦いが、今始まる!
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目標
父を超える
ステータスについて知る