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努力しても一般人。  作者: きゅうりの浅漬け
新たな人生
2/12

ニューゲーム

…白いような、暗いような。

…水中のような、空中のような。


「…何処だ、ここ…」


ふと、大きな、太陽のような輝きを発しているものを見つける。

何故か、そっちにすごく行きたくなる。

ここにいても、何も起こらないだろう。

俺はそっちに向かって必死に泳いでいく。


全く近づいているように見えない。

それでも泳ぐ。

泳いで、泳いで、泳いだ。


どのくらいの時間が経っただろうか。

ようやく太陽にたどり着いた。

周りには何もない。

俺はその太陽に向かって手を伸ばした。


その瞬間、身体が引きずりこまれていく。

だが、不快感はない。

むしろ幸せな感じだ。

少しずつ、意識が遠のいていく。


「あなたの名前は、ダイナよ。」


どこからか、そんな声が聞こえた。

安心する声だ。


その声を聞きながら、俺はゆっくりと意識を手放したのだった。





「よくやったぞ、ナターシャ!」

大きな声で、男性が騒いでいる。


「よく生まれてきてくれたわ、ダイナ。」

笑い泣きのような震えた声で、女性が囁く。

あの水の中で聞いた声だ。


どこからか赤ん坊の声もする。

思い切り泣いているようだ。

正直、あの男性の声と相まって、うるさい。

俺は子供が嫌いではないが、限度があるだろう。

何故、親はそのままにしているんだ。

さっさと泣き止ませてほしい。


そこまで考えたところで、ふと自分が知らない場所にいることに気づく。どこ、ここ。


体を動かそうとする。

ほとんど動かない。

目はうっすら開いているが、天井しか見えない。

天井からは洋風な感じが漂う。


「よーし、ダイナ。お父さんが抱っこしてあげよう。」

男性の声が聞こえた。


ようやく泣き止ませようとし始めたか、と思う俺だったが、男性はこっちに近づいてきた。

そして急に俺のことを抱き上げてきた。


(うわっ、なんだこのおっさん!やめろよ!)

俺はそう叫んだつもりだったが、泣き声しか聞こえてこない。


「あら、お父さんが怖いのかしら。よしよし、ダイナ、怖かったね。」

女性が、そんなことを言いながら俺のことを抱っこした。男性はショボーンとしている。


(…もしかして、泣いているのは、俺?ダイナってのは、俺のことなのか?)


ありえないことだが、鉄骨のことを思い出し、ある考えに至る。


(もしかしてこれ、転生ってやつ?俺は死ぬ前に、何処か遠くへ行きたい、って思っていた。それを神様が叶えてくれたのか?)


どんだけ遠くだよ!

確かに遠くへ行きたいって思ったけど、まさか転生するとは思わないじゃん!


無意味なツッコミが頭の中に響く。


…はあ、考えても仕方ないか。転生しちまったものはしちまったんだもんな。


そう考えているうちに、あることを思い出した。


転生ってことは、俺、勇者になれんじゃね?


俺は昔からラノベを読んでいて、それによく出てくるのが、転生だった。

主人公が転生して、最強になって、結婚して、幸せになって、周りから慕われる。


(…もしかして、俺も?)


前の人生はパッとしないまま事故で死んでしまった。

この世界で俺は最高の人生を歩むんだ!


そう心に決めたのだった。

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