第八話 再び現実へ
「そして、また出会った」
李亜が呟く。
「遠いー遠い昔の約束だったからな」
「やくそく?」
迂京の一言に李亜は首を傾げた。
過去を思い出していたからかその口調はどこか幼いままだ。
「最初の約束だ」
「最初?」
李亜の魂が転生する前にした約束。
古すぎて転生により疲弊した魂では覚えていないのも無理がないだろう。
「いつか分かる」
全てを話すことが必ずしも正しいとは限らない。
必要なのは今共にいることなのだろう。
『ずっと、一緒にいてね』
幼い笑みが脳裏に浮かぶ。
寿命の長い自分にとってもけして短いとは言えない時間が経っているのに思い出は鮮やかだった。
「ねぇ」
迂京が黙ってしまって不安だったのかそれとも別の事が原因か、李亜が俯く。
「私、これからどうすればいいのかな」
「決めるのは李亜だ」
どこか突き放したようにも聞こえる言葉。
だが、その目は優しかった。
「とりあえず二択の選択肢がある。
教会側につくか、逃げるか、だ」
教会側につけば待っているのは良くて一生の監視、悪くて幽閉といったところだろうか。
「逃げるというのは和久井李亜をこの場で消すという事だ」
考え込む李亜に迂京が一言付け加えた。
「消す?」
「和久井李亜をこの場で死んだことにする。
唯一の家族を亡くしたショックなど理由はいくらでも作れる。」
「死体は?」
「それこそどうにでもなる」
事もなげに言われた一言に李亜の言葉は決まった。
「私と一緒に逃げて貰えますか?」
「もちろんだ」
李亜が差し出した手を迂京が迷いなくとる。
こうして、二人の未来は始まった。
とても久しぶりに投稿しました。
色々な方の作品を読んでいたら書きたい欲が出てきてしまって。
これから更新をこまめにする予定なのでどうかよろしくお願いします!
李亜達に関しては大まかな未来しか決めていないのですが完結に向けて頑張ります。