第四話 何もかもが初めてで・・。
10年前……。
私は、家の近くの神社で迂京に出会った。
幼心に、その、とても綺麗な少年が気になって、話しかけるが返事は無く……。
私は毎日のように神社に通っては、彼に話しかけた。
そして数日経って、少年が「アスタロト」と呼んでも良いと言ってくれた日の翌日……。
一つ目の事件が起こった。
その時、近くでは変質者が出没していて、私がその被害者になったのだ。
いつもの様に神社の石段を登りきり、周りを見回した時だった。急に口を塞がれ、地面に引き倒された。
そして、そのまま馬乗りになって首を締められる。
息ができなくて、頭がくらくらした。
もう、駄目か…。
そう、思った時だったと思う。
その場に、アスタロトが現れた。
「何をしている?」
そう言うと同時にアスタロトは、変質者から私を助け出す。
「邪魔をするな…!」
変質者はアスタロトに向かって行った。
「煩わしい」
だが、それも簡単に振り払われる。
ドンッ!
結構大きめな音を立てて、変質者は木に激突した。
「……す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
その時だった。
突然、変質者がぶつぶつ呟き始めたのだ。
目もどこか虚ろになっている。
「何かに、憑かれたな」
アスタロトは観察でもするように変質者を見つめた。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
ただそれのみを変質者はぶつぶつ呟く。
やがて、何処からかナイフを取り出して構え、走り出した。
その先に居るのは……李亜!!
「危ないな」
アスタロトがひょいと李亜を抱えて跳ぶ。
ザクッ。
想像していたよりも変質者のスピ−ドは速く、ナイフはアスタロトの腕をかすった。
「あっ!!」
アスタロトの腕からは血が滴り落ち、地面に吸い込まれてゆく。
血の紅が妙にはっきりと見える。
「大丈夫だ」
そう言っている、アスタロトの声も耳に入らなかった。
「嫌ーーー!」
李亜は叫ぶ。
「グ……ワ…ァ…」
近くに居た変質者は、突如、李亜から発された衝撃波で吹っ飛び、木にぶつかって止まる。
ドゴォ!
大きな音がして、変質者の首が前に垂れた。
そのまま……動かない。
死ンダ?死ンデシマッタノ?
殺シタ? 誰ガ? 私ガ?
ワタシガ ヒトヲ 殺シタノ?
思考の渦がぐるぐる廻る。
李亜から発せられかけていた光が急速に収束してゆき、その目は焦点を失ってゆく。
ワタシガヒトヲコロシターーー…。
李亜は呆然とする。
与えられたショックが大きすぎて、なかなか正気に戻れない。
ふいに、アスタロトが優しい目で李亜を見た。
「覚えてなくとも良い。また…会おう」
そして…李亜の額に手をかざす。
ポゥ…。
その手が、赤い光に包まれた。
段々強くなる光と呼応するように、李亜は眠くなってゆく。
「な、に……これ?」
「覚えてなくとも良い。……つらい記憶など」
久しぶりに投稿しました・・。