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第十八話【真夜中の訪問者】

投稿しました( ´ ▽ ` )

ちょっとバトル描写ありますけど、基本はほのぼのです。

「――せやぁぁぁぁっ!」


 手に持っていた木剣を強く握りしめた俺は、大上段に構えてから振り下ろした。

 しかし、目の前にいる相手はそれを双剣で難なく受け止め、弾き飛ばす。


「まだまだ軽いです! 手加減の必要はありませんから、もっと本気で打ち込んでください」


 そう言って、ミルカは二本の木剣を器用に扱い、目にも留まらぬ速さで連撃を繰り出してきた。


「ちょっ、はや、うおわっ!」

「もっと脇を締めて! そこで後ろに下がらず、一歩前に出てください!」


「こ……のっ!」


 最初の頃はまったく受けることができず、ボコボコ(実際には寸止め)にされていたのだが、今ではほんの少しだけ応戦できるようになってきた。


 もちろん、ミルカはまだかなり手加減してくれているのだろうが、何もできずに終わってしまうようなことはない。


 連撃をなんとか捌いたところで、わずかにミルカが動きを止める。


 ――今だ!


 そこへ渾身の一撃を放とうとしたのだが――……ガゴンッという鈍い音が響き、俺の木剣は空中をくるくると舞っていた。


「……参った。降参だ。やっぱりミルカは強いな」


 両手を挙げて降参のポーズを取り、地面に転がった木剣を拾い上げる。


「マモル様は……優しすぎます。最後の一撃を打ち込もうとしたとき、躊躇されたように思えました。あれでは相手に斬ってくれと言っているようなものです」


 うん……それについては、自覚している。


 でも、訓練用の布を巻いた木剣とはいえ、当たれば相当痛いのだ。

 ミルカのような女の子に向けて、それを容赦なく振り下ろすことができないのは、当然と言えば当然だと思う。


「下手な手加減は、自分が怪我をすることになりますよ」

「えっと……ごめん」


 なんというか、ミルカに叱られると地味に凹む。


「いえ、でも、マモル様は争いのない世界で暮らしていたんですよね。そう考えると、上達はすごく早いと思います」


 その言葉がお世辞でなければ、とても嬉しい。

 まあ、生まれた場所と時代に恵まれていただけで、地球にも争いはたくさんあるけどね。




 ――さて、俺とミルカがなぜこんなバトル展開を繰り広げているかだが……。


 俺は自由に異世界を楽しもうと思っているが、この世界のどこかにおばあちゃんがいるのなら、やはり会ってみたいのだ。


 しかし今のところ、手がかりは何もない。

 おじいちゃんが昔、迷宮探索をしていたことがあると手紙に書いていたから、そのときに知り合ったのかもしれない。


 なので、迷宮のある街へ行ってみないかとミルカに提案してみた。



 幸いなことに、石鹸作りは一ノ瀬さんに任せておける状態にある。


 ここ一週間ほどは、ブライト商会に石鹸とシャンプーを卸すのが俺の日課になっていたが、工場での研究開発もなかなか順調のようだ。


 天然ソーダとやらを使った石鹸は、従来の石鹸よりも固形化に適しているらしい。

 さらに使用する植物油の種類によって泡立ちなどの特性も変わってくるため、材料や配合率を変えて大量の試作品が工場で作られていた。


 これなら皆に満足してもらえる品質のものが完成するのも、そう遠くはないだろう。


 ちなみに、一ノ瀬さんはあれからずっとヴァレンハイムの街で生活している。

 家に帰らなくてもいいのか? と聞くと、


『もうあっちの世界に未練はありません』とのこと。


 いや、さすがにそれは冗談らしいが、実家に帰るのは年末だけらしく、それ以外は日本にいる意味がないと豪語していた。

 両親には、『しばらく海外にいるので連絡が取りづらいけど心配しないで』とメールしておいたらしい。


 異世界の扉の鍵は俺が持っているので、もし帰りたくなったら遠慮なく言ってくれと伝えてあるが、今のところ帰りたそうな気配は一切見られない。



「――もし迷宮に潜るつもりでしたら、今のままでは危険です」


 提案に対して、ミルカからはそんなことを言われた。


 護衛として彼女はとてもよくやってくれているが、やはり迷宮探索は不測の事態が往々にして起こる場所とのことだ。

 自衛手段は確保しておくべきだと強く勧められた。


 そんなわけで、ここ数日、空いた時間にミルカと訓練をする毎日を送っていたわけだ。


 しかし、たかだか数日の訓練をしたからと言って、ろくに戦闘経験もない俺がミルカとまともに勝負できるはずもない。


 ……すみません。お金の力で強引に差を埋めました。


 新商品が完成するまでは、ブライト商会へ定期的に石鹸などを卸しているため、わりと資金が潤沢だったのだ。


 ちょっと奮発して、【肉体強化(中)】を購入してしまった。

 お値段は1000万ゴールド。


 自分の素の肉体を強化補正してくれる効果があるのだが、高価なだけあって、それまでとは段違いに体が動くようになった。


 まあ……それでもミルカにはまったく敵う気がしないのだが。

 これが迷宮探索をする冒険者の標準レベルだと言われたら、ちょっと自信を失ってしまいそうである。


「でも……なんだか体の調子は良いんだよな」


 いや、肉体が強化されたとか物理的な話ではなく。


 会社で倒れ、しばらく療養していたのはそう遠い過去の話ではない。

 仕事に復帰できる状態になったときでさえ、あまり体調は芳しくなかった。

 それは会社をクビになった後も相変わらずだったのだが……最近は妙に体の調子が良い気がする。


「……異世界に来たことを除けば、特に変わったことはしてないんだけど」



◆◇◆



「――よっし。今日の晩飯はこれだ」


 そんなこんなで訓練も無事に終わったところで、俺はコンビニで購入してきた飯をテーブルの上に置いた。


 異世界の我が家で食事をするのは、もはや習慣化しつつある。


「こ、これは何ですか? マモル様」


 本日は、ほかほかのカツ丼弁当を買ってきた。


 サクサクした食感はなくなっているものの、甘じょっぱい出汁がたっぷりしみた肉厚トンカツが、くたくたになった玉ねぎと一緒にふわっふわの玉子でとじられている。


 それをご飯と一緒に頬張ったときの幸福感は、ちょっとしたものだ。

 一口目で口が幸せになり、二口目には自然と顔がほころぶ。


 実に美味し。


 食べることに夢中でほとんど会話することなくカツ丼を堪能した後に、二人そろって満足そうに息を吐く。


「「ふぅ~~」」

「「ごちそうさまでした」」


 晩飯の後は、いつも他愛ない話などをしているのだが、この日はミルカがちょっと興味深いことを質問してきた。


「マモル様のお祖父様は、いったいどのような人物だったんでしょう。餞別としてお渡しになった【スキル売買】ですが、やはりそれの性能は別格のように思います。それほどの物を手に入れられる人物であれば、記録に残っていてもおかしくはないのですが……」


 うーむ、たしかに。


「それにスキル売買といっても、いったい誰と取引しているんでしょう?」


 ミルカも、これでけっこう好奇心あふれる性格のようだ。


 取引相手……か。今まで考えたこともなかったが。



 ――そんなときだ。


 玄関扉から音が鳴った。

 金属製のドアノッカーが扉を叩く音が、館内に響く。


 森の中にある隠れ家のようなこの場所に、こんな時間に来客だと……?


 一ノ瀬さんではない……よな。

誰だろうか?

ちょっと物語が動くかも。


ちなみにマモルとミルカの所持スキルは、今こんな感じです。

主人公マモル

・スキル売買

・翻訳

・剣術

・空間収納(小)

・肉体強化(中)


ミルカ

・剣術

・反射神経強化(小)

・自然治癒力強化(小)


次回の更新ですが、日曜はお休みをいただくかもしれません( ´ ▽ ` )

月曜の朝に投稿予定です。なにとぞ

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