第十三話【空間収納って素敵】
投稿しました~^^
祝! 100,000PV突破!
一章の前部分に【スキルリスト】を掲載しております。
新しいスキルが登場すれば順次更新していく予定です。
あのときのスキルってなんだっけ? と思った方はご参考にどうぞ。
「ちょっと報酬をもらいすぎた気もするが、これで一件落着だな」
マリィさんやアーサー君と別れてから、俺はそう締めくくった。
当初の予定とは違ったが、終わり良ければ全て良し。
「マモル様は、本当にすごいです」
ミルカはそう言ってくれているが、これは俺がすごいのではなく、スキル売買の性能がすごいのだ。
潤沢な資金があれば欲しいスキルはほとんど思いのまま、しかも自分のスキルだけでなく、他者のスキルすら売却できてしまう有能さである。
「たしかに、お持ちのスキルは伝説級の性能かもしれません。だからこそ、その力を他人のために使えるマモル様は、やはりすごいと思います」
やめろ~、そんなに持ち上げないでくれ~。
さっきもらった報酬で、さっそく自分のために空間収納(小)のスキルを購入しようとしているんだよ。
俺は利己的な人間なんです、ごめんなさい。
まあ……このスキルを悪用すれば、もっと楽に大きく稼ぐことはできると思う。
たとえば、生活に困っているような貧しい人で、そこそこ優秀なスキルを所持している人を探し出し、スキルを安い値段で買い叩くとか。
ある程度の資金が貯まったところで、レアリティの高そうなスキルを買い占め、それをどうしても必要としている人に超高値で売りつけるとか。
戦闘系スキルを充実させて、暴力で全てを解決するような人間になることもできる。
もっと言えば、災厄の種を――……いや、これは本当に引かれるから止めておこう。
とにかく、色々と稼ぐ方法はある。
だが、おじいちゃんが俺にこの世界のことを教えてくれたのは、そんなことをさせるためではないだろう。
たぶん、おじいちゃんはこの世界のことを知ってほしかったのだ。
自分もかつて巡ったことのある、この世界を。
好きなように楽しむといい――手紙にはそう書いてあった。
だから、俺はこの世界を存分に楽しもうと思っている。
目の前で困っている人がいたら、そりゃあ助けるさ。
でないと自分が楽しめないからな。
「――ところで、ミルカがさっき話していた本の題名……えっと」
「紅き竜騎士の冒険譚、ですか?」
「ああ、それそれ。それは実際にあった話――実話を基にした物語なのか?」
「あ、はい。かなり昔の話ですが、主人公として描かれている竜騎士は実在の人だと言われています。各地に逸話が残っていて、それらの冒険譚を編纂して本にしたものが、さっきの本だそうです」
「昔っていうと……どのくらい前の話なんだ?」
「正確にはわかりませんが、本に書かれている内容から推測すると、百年以上前になると思います」
百年以上前……か。何か手がかりになりそうな情報があるかと思ったが、それだけ過去の話だと関係なさそうだな。
「その……なんで“紅き”竜騎士なんだ?」
「それはですね。敵の返り血を浴びて真っ赤な姿だったとか、鮮やかな朱色の鎧を着込んでいたとか、燃え上がるような真っ赤な竜に変身したとか、色んな話が描かれているんです! たぶん、それで紅き竜騎士って言われていると思うんですけど――」
おおう、ミルカがこんなに熱く語るところは初めて見た。
アーサー君とも話が弾んでいたし、本当に好きな物語なんだろうな。
「この世界に存在するとされている72の迷宮も、冒険譚ではいくつも踏破されていて、でも最深部の様子なんかは謎のままなんですよね。あの本を読んで冒険者になりたいと思ったアーサー君の気持ちは、ちょっとわかる気がします」
……なるほど。
迷宮って72個もあるのか。
ヴァレンハイムから一番近い迷宮はどこになるんだろう。
いや、さすがに凶暴な魔物が跳梁跋扈しているような迷宮に、ろくに戦闘系スキルも揃えずに突入するようなことはしないけども。
いつか気が向いたら、その冒険譚をまとめた本を読んでみるのもいいかもしれない。
さて……と。
必要なお金も貯まったことだし、念願の空間収納スキルを購入させていただくことにしようか。
現在の残高は650万ゴールドほど。
……このお金を元手にして、まずは手持ちの資金を充実させることも考えたが、欲しいものは欲しいときに購入しておいたほうがいい気がするのだ。
空間収納(小)や(中)は今のところ在庫があるようだが、これらも品切れになる可能性は十分にあるわけで、いざ自分が購入しようとしたときに品切れになっていたら笑えない。
――ポチッとな。
俺はスキル売買画面を操作し、空間収納(小)を購入した。
手元にスキルの書が具現化し、もはや見慣れた巻物をくるくると開く。
――スキル【空間収納(小)】を取得しました。
脳内にそんな情報が流れ、俺は習得したスキルをさっそく使用してみることにする。
なにげに、今までで一番テンションが上がっているかもしれない。
試しに、腰に装着していたマチェットとサバイバルナイフを収納してみようとした。
これ、ずっと装備してると意外と重いのだ。
「ていっ」
手で触れ、収納したいと念じただけで、マチェットとサバイバルナイフが一瞬で消え失せたではないか。
「すごい……」
これが空間収納ってやつか。
取り出すのも簡単で、出てこいと念じるだけで一瞬で取り出せるようだ。
「うおお! これはちょっと感動だな。せっかくだし、ミルカの武器も収納しておいてあげようか?」
「いえ、せっかくマモル様にいただいたものですし、自分で持っておくことにします。それに、街中とはいえ絶対に安全とは言えません。護衛のわたしが武器を手放すべきではないかと」
言われてみればその通りだ。
いかんいかん、ちょっと浮かれすぎだな。
いや、でも、これすごく楽しい。
まるで未来の猫型ロボットが持っている四次元ポケットみたい。
空間収納って素敵だわ。
これで重い荷物をリュックで運ぶ必要もなくなり、商品の仕入れが格段に楽になることだろう。
――一度、日本に戻ることにしようかな。
今回はちょっと短めです汗^^
でも、ちょっとだけ物語が動いた感じですかね。
さっそく空間収納を有効活用したい~
次回更新は翌日の8:00を予定しておりますb




