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第十一話【オークションへ行ってみよう】

投稿しました。

多くの人に読んでもらえて幸せです^^


台風が接近していますので、皆様お気をつけくださいませ。

家から出られない状態のときなどに、本作品が暇潰しになればと思います。

「ちょっと、そこどきなさいよ! わたしが先に来たんだから!」

「うるさいわね。こんなの早い者勝ちでしょ!」

「どけやゴラァ! あんたら若者と違ってこちとら肌も髪ツヤも限界なんだよ! もみくちゃにすると骨が折れるぞどけどけぇ!」


 公衆浴場で汗を流し、さっぱりしたところで、俺とミルカはパパルカさんの店の様子を覗きに来たのだが……そこはもはや戦場になっていた。


 鬼気迫る表情の女性たちが、石鹸を積んであった棚から商品を掴み取り、銀貨や金貨が文字通りに飛び交っている。


 シャンプーは詰替え用を木樽に移し替え、そこからガラス瓶に小分けして販売しているのだが……そろそろ空になりそうな勢いだ。


 男湯ではろくに宣伝できなかったのだが、ミルカが上手くやってくれたのだろう。

 お礼も兼ねて、隣にいる彼女の頭を優しく撫でておいた。


「えへへ~」


 こういうと変態に聞こえるかもしれないが、猫耳の部分はとても柔らかく、もふもふ感が癖になりそうだ。

 癒やされるわ~。


 ……それにしてもこの様子だと、次はもっと大量に仕入れる必要がありそうだな。

 とはいえリュックで運搬するのには限度があるから、やはり空間収納スキルを早めに購入しておきたいところである。


 などと考えていると、どうやら石鹸とシャンプーが完売してしまったようだ。

 山積みになっていた石鹸は一つ残らず売り切れ、シャンプーが入っていた木樽は、もはや逆さに振っても一滴も出てこない。


「次はいつ入荷するのよ?」

「ちょっと! わたしまだ一つしか買えてないんだけど!」

「ひゃっはぁ! ほれほれ、欲しけりゃこのババアが石鹸一つ2千ゴールドで売ってやらんこともないぞ!」


 ……なんかもうすごいことになっているが、商品が売り切れると皆もシビアなもので、店に訪れている女性たちは騒がしくも解散していった。




「――やぁ、どうやら宣伝は上手くいったようだな。おかげで大繁盛だよ」


 お客への対応に追われていたパパルカさんも、ようやく一息つける状態になり、笑顔を浮かべている。


「石鹸やシャンプー以外の商品も、便乗するかたちで普段より売れてくれたから、こちらとしてはありがたい限りだよ。さて……客足も落ち着いたし、さっそく売上を分配することにしようか」


 テーブルの上に、銀貨や金貨が詰まった袋がずしっと置かれた。


 内訳としては石鹸が一つ千ゴールド、200個が完売なので……売上は20万ゴールド。

 シャンプーは詰替え用を合計5リットル仕入れたが、それも完売で50万ゴールド。

 合計で70万ゴールドの売上である。


 こちらの取り分は七割なので……分配金は49万ゴールドになるのだが、パパルカさんは50万ゴールドをこちらに手渡してくれた。


「これからもぜひ仲良くしたいところだからね。支払いは金貨がいいかい?」

「あ、別に銀貨が混じっていても大丈夫です」


 日本においては金に比べて銀の価値は低く、銀貨は換金に適していないが、スキル売買の残高に振り込んでしまうのならば、金貨も銀貨も関係ない。

 もし日本円への換金が必要になったときには、そのときに金貨で現金化すればいいのだ。

 地味に両替機能も有しているスキル売買。優秀である。


 俺は分配してもらったお金を、さっそくスキル売買の残高に投入しておくことにした。

 ……これでよし、と。


 今回の仕入れにかかった金額は、石鹸とシャンプー合わせておよそ3万円。

 金貨一枚を換金すれば十分にお釣りがくる計算だし、大儲けと言っていいだろう。

 思わずにやけてしまいそうになる。


「ああ、そうだ。パパルカさんに聞きたいんですけど、この街では商品を競り落とすオークションなどは開催されているんでしょうか?」


 俺は、さっき公衆浴場で冒険者風の男たちが話していたことについて尋ねてみた。


「ああ、商人ギルドが主催しているオークションがあるよ。興味があるのなら行ってみるといい。まだ珍しい品物を持っているのなら、おれの店で売るよりも高く売れるかもしれないからな」


 やはりこの街にあるのか。それならばぜひ見ておきたい。

 パパルカさんにオークション会場の場所を教えてもらい、俺たちはさっそく会場へと足を運ぶことにした。



◆◇◆



「――ようこそお越しくださいました。本日は品物の持ち込みでしょうか。それともオークションへの参加でございますか?」


 商人ギルドが主催しているだけあって、なかなか立派な建物だ。

 ネットオークションなどを利用したことはあるが、こういった会場で競売に参加するのは初めてである。


「えっと、オークションへの参加でお願いします」

「かしこまりました。商品を競り落とす際には、ご自分の資産額を超えることのないようご注意ください。競り落とした商品の代金は、必ず支払っていただくことになりますので」

「はい、わかりました」


 他にも注意すべき事項を一通り聞いたが、オークションの基本マナーについては、俺が知っている内容と大きな差異はないようだ。

 ネットオークションとさほど変わらない。


「わたし、マモル様は商品を出品するものだとばかり思っていました」


 ミルカが言っているのは、スキル売買で入手したスキルの書をオークションに持ち込むということだろう。


「そうだな。俺も最初はそれを考えたんだが……」


 まず、オークションは必ずしも持ち込んだ品物が高く売れるわけではない。

 オークションに参加している人たちにとって需要のないものであれば、安く競り落とされてしまう場合もあるのだ。


 ネットオークションに出品したことのある人なら理解しやすいだろうが、想像していた以上に安く買われてしまって困るケースも多い。

 かといって、最低落札価格を高く設定してしまうと購買意欲を削いでしまい、そもそも誰も手を伸ばそうとしなくなる。

 そういったところが、オークションの難しいところであり、面白いところでもある。


 そして、オークションに出品するには実物の品を持ち込まないといけないわけだが、残念ながら今は俺の手元にスキルの書がない。

 残高は150万ゴールドほどあるが、高価なスキルを購入するにはまだ足りないのだ。


「――はい、こちらの商品は③番様が120万ゴールドにて落札となります! ありがとうございました!」


 会場に入ると、肌で感じるほどの熱気が伝わってきた。


「おお~、やってるな~」


 会場内では、オークショニア(木槌でガンガン叩く人)が興奮した声を上げており、それに感化されるようにして会場全体が熱を帯びているようだ。

 自分の財布の中身を考えずに高値で商品を落札してしまう人がいるのも、この空気だと納得かもしれない。


「マモル様、何か欲しいものがあるのですか?」

「今のところは何もない。それより、ミルカにも手伝ってほしいことがあるんだが」


「はい。何でも言ってください」

「もしスキルの書が出品されたら、誰が欲しがっていたか、予算はどの程度ありそうかを覚えておいてくれ」


 会場内では、参加客は胸に番号札をつけることになっており、基本的にはその番号で誰が何を落札したかを管理している。


「えっと、それはどういう……?」

「スキルの書を欲しがっていたのに、落札できなかった人を覚えておくんだ。どの程度の価格で諦めたのかもわかるとありがたい」

「わかりました。任せてください!」


 俺とミルカは、そこからしばらくオークションを見学することに努めた。

 スキルの書以外の品物も多く出品されており、興味を惹かれそうになったが、今日のところはオークションを楽しむのが目的ではない。


 結局、午後のオークションで出品されたスキルの書は一つだけ。


 ――【肉体強化(中)】


 落札額は1300万ゴールド。

 ちなみに、スキル売買における購入額は1000万ゴールドとなっている。

 品切れにはなっていない。

 ……上手くいけばいいんだが。


 会場内には、オークションが終わった後に歓談する場所も設けられており、目当てのものを落札できた人や、欲しいものが手に入らなかった人が話に花を咲かせていた。


 落札権を譲渡したり、落札した商品を高額で転売する行為は禁止されているようだが、そういった禁止行為以外については、ご自由にとのことだった。

 今も商人らしき人たちが交流を深めつつ、商談をまとめたりしている。


「たしか……最後まで競っていた人は⑧番のあの人だった……よな? 結局は⑭番の人が落札しちゃったけど」

「はい。他にも、㉕番と㊶番の方が途中までは競っていました」


 よし……行くか。




「――こんにちは。少しだけ、お時間をいただいてもよろしいですか?」

「……ああん!? 俺は今機嫌が悪いんだ。気安く話しかけるんじゃねえ!」


 ⑧番の札をつけている人物は、いかにも冒険者然といった格好をしている無骨な男性だ。

 目当ての品物を落札できなかったせいか、機嫌がすこぶる悪い。


「……失礼しました」


 俺を守ろうと前に出そうになったミルカを制止し、すぐさま引き下がる。

 ああいった人物とは取引をすべきじゃない。後々トラブルになりそうだ。



「こんにちは」


 次に声をかけたのは、㉕番の札をつけた女性だ。

 品の良さそうな人で、こちらの挨拶にも丁寧に返事をしてくれた。


「あら、こんにちは。あなたは……商人さんかしら?」

「はい、そのようなものです。こちらが今取り扱っている商品でして、よければ一つお譲りしますよ」


 そう言って、俺は試供品として取っておいた石鹸とシャンプーを女性に渡す。


「まあ……とても良い香りだわ」


 その品質の良さを理解してくれたのか、こちらへの態度が少し軟化するのがわかった。

 そのまま軽い世間話をしつつ、俺はそれとなく質問してみる。


「どうです? オークションで目当てのものを落札できましたか?」

「それがねえ。ちょっと困ってるのよ」

「……と、言いますと?」


 たしかに、俺の今の所持金では高額なスキルを購入することはできない。

 現物がないと、当然オークションに出品することもできないわけで。


 しかし……よくよく考えてみれば、俺が金を用意して購入する必要はあるのだろうか?

 代わりの誰かに支払ってもらっても、いいのではないだろうか。

 たとえば……そのスキルを必要としている本人とか、ね。


「――もしかすると、あなたのお力になれるかもしれません。よかったら話を聞かせていただけませんか?」

もっともっとお金を稼いで、役立つスキルを手に入れたい。

空間収納や鑑定が欲しいな~

作品中に登場するスキルが増えてきたので、そろそろスキルリストを作ろうと思います。

次話も明日の朝に投稿予定です^^

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