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声はしとどに  作者: 芥
4/7

4話

おはようございます、芥です。


そういえば、何で挨拶がおはようなん?と聞かれそうな気がするのでお答え致しましょう。ずばり、はじめの挨拶はおはように尽きる!

…えー、ということで、ただの私の拘りです。


それでは、しばしお付き合い下さいませ。

何をオロオロしているのだろうと気にはなったが、いざ声をかけようとなるとさすがに勇気がいる。隣の席ではあるもののコミュニケーションをとったのは、7番くんの眩い笑顔対微妙にヘラっとした私の挨拶という、あれのみ。声をかける勇気だとかいう前に、まず印象が最悪なのではないか。いや、印象云々ではなくてそもそも私自身が恥ずかしい。などとぐるぐる考えている間にも、7番くんはずっとオロオロとしている。

「あの、どうかしました…か」

考えるよりも先に、いつの間にか声に出ていた。すると7番くんは驚いた表情を見せたが、すぐに嬉しそうな顔をした。ああこれだ、眩しい。

「お、あえ、あ…」

「あー…えっと、もう1回ゆっくり言ってもらっても?」

唇の動きで理解しようと、私は7番くんの口元を凝視して構えた。すると7番くんは、

「あ…え、えお…」

と言うと、私の手首を持って手のひらに人差し指を滑らせた。そうか、筆談するとか言っていたな、そういえば。

《おかねがつりぐちのところにのこっていて それをつたえようとしたんだけど とどけられなかった》

届けられなかった。それは、お釣りをなのか、思いをなのか、言葉をなのか。多分、きっと全部だ。7番くんの右手の人差し指以外で握られている手の中には、10円玉が4枚あった。7番くんが買う前にパック飲料を買った人は、今すれ違ったいちごみるくの先輩なのかもしれない。

「いちごみるく買ってた女の先輩?」

そう聞くと、7番くんは嬉しそうに頷いた。確か二人の女の先輩のスリッパの色は緑色だった。ということは3年生。しかし、このやり取りだけで結構な時間が経ってしまったはずだ。3年生の教室は…

「分かった、40円届けてくる」

そう言うと、7番くんの手から40円をさっと奪うと走り出した。7番くんが何か言った気がしたが、私はそのまま走った。何故、こんなにも私は必死になって走っているのだろう。たかが40円だ。しかし歩を緩めることはなかった。


3階と4階の踊り場のところで、いちごみるく先輩に追い付いた。

「あのっ、すみませんお釣り忘れてます…!」

「え…?ああ、取り忘れてたのかー。1年生?わざわざ4階まで来てくれたの?ありがとね」

「あ、いえ、これは私じゃなくて、その、私の隣の席の人が見つけてっ」

息を荒らげながら、上手く整理されていない言葉を先輩に言う。

「……?うん、ありがと」

もう一人の方の先輩が、どういうこと?とお釣りを忘れた方の先輩に聞いている。聞かれた先輩は、よく分からんと答えてストローに口を付けていた。まだ肩を上下させながら、私はしばらく踊り場に立っていた。


自動販売機のところに戻ると、7番くんがいた。

「あ、帰ってていいよって言っとけば良かったね。ずっと待たせてごめん」

すると7番くんはぶんぶんと首を横に振った。

「あとごめん、君が釣り忘れに気付いたんだって、上手く先輩達に伝えられなかった」

7番くんはきょとんとしている。

「いや、上手く言うのって難しいなって思って。じゃあ」

「あ…」

「ん?」

「あ…い…あ…お…うっ」

「……あ、り、が、と、う?」

私がそう言うと、7番くんは大きく頷いた。

「いや別に、大したことは…」

7番くんはまた大きくかぶりを振った。

「あ…い…あ…お…う!」

そう言う7番くんの笑顔は本当に眩しくて、私は少し照れた。

「まあ…うん、どういたしまして」

7番くんはまた笑顔を見せてくれた。くしゃっと音がしそうなほどの。例えるなら桜が満開になった時のような、晴れやかで、それでいてどことなく儚げな笑顔だった。

お読み頂きありがとうございます。


さて、4話でございました。やっと二人の絡みが描写できてうほほいな気分です。早く濃い展開までいきたいなあ、うずうず。

そして、誤字報告ありがとうございました。お手を煩わせてしまいまして…感謝です。「となり」って、動詞の時は隣り、名詞は隣となるんですねー、知らなんだ。賢くなりました。


それでは、また次回お会い致しましょう。

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