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声はしとどに  作者: 芥
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1話

はじめまして、芥と申します。

この作品を見つけて下さりとても嬉しいです。ありがとうございます。

普段は看護学生を生業としている私ですが、ふと、何だか小説を書きたいぞ!と思い、素人ながら物語を綴っております。テスト勉強や実習などで連載ペースが不定期になってしまうかもしれませんが、気長にお付き合い頂けるととても有難いです。


それでは、暫しお付き合い下さいませ。

こういう空のことを、世間は快晴と呼ぶんだろうか。(はるか)はそんなことをぼんやりと思った。吸い込まれそうな空の青。雲一つないそれは、陽の光を全て私に向ける。

「眩し…」

無意識にそう呟いていた。


「おーい早く席着けー、チャイム鳴ったろおー」

担任の佐藤先生の大きく間延びした声が響き渡ると、先程まで散り散りになって会話に花を咲かせていたクラスメイト達が、そそくさと各自の席に着いた。

私の在籍する1年6組は42人クラスで、縦に7つ、横に6つ、机が配置されている。私の席は左から2番目の一番後ろ。現代文と古典の授業は少し厄介だが、その他の横に文字を羅列する科目に関しては、黒板が良い感じに見やすい角度である。真ん中過ぎず、その上一番後ろの席だ。つまるところベストポジションである。

ふと左の席に目を向ける。出席番号7番。入学式からずっと空席のままだ。入学してちょうど一週間が経つが、その席の主を未だ見たことがない。

(あれかな、入学初日から不登校ってやつ)

(ここ、結構倍率高かったんでしょ?勿体ないよねー)

(1年生のうちからこんなんで大丈夫なのかなあ)

(いやまず自分の心配しなよ)

初めて高校生になった日、式が始まるまで教室で待機していた時に、女子の数人がそう会話していたのを思い出した。本人のいないところではそうやって好き勝手に言われるのか、なんだか面倒くさいなと思ったのを覚えている。

7番の席には朝の優しい陽の光が差している。陽の光を受けて、その机から少し埃っぽい木のにおいがした。その席は惰眠を貪るのには最高だな、と思った。

「はいみんないいかー、今日からやっとクラスメイトが全員揃うぞー」

佐藤先生の言葉に、自分一人の思考していた世界から現実の教室へと引き戻された。周りはざわついてる。

(えっなんだ、来るんかい)

(ていうか、このクラスにいない奴いたんだ?)

(ばーか、気付かなかったのかよ)

(あれでしょ、一番左の隅の席)

(あー、あの席羨ましいよねー)

クラスメイトの声には、やっと全員揃うのだというような喜びは感じられなかった。ただ興味がある、という感じだった。どんな奴なんだ、入学初日から一週間も休んでいたのは、というような。

「おい静かにしろーって。まったく、お前達は本当にすぐ話し出すなあー。口から生まれてきた奴らばかりかー?」

クラスの半分が笑った。

「よーし、お前達よく聞け。今から大切なことを話す」

佐藤先生の声のトーンが低くなり、クラスはしんと緊張の空気を纏った。

「これから教室に入ってくる奴だが…、実は口がきけない」

(えっ、どういうこと)

(耳が悪くて、ってこと?)

「いや、聞き取りに関しては何ら問題はない。だが何故か話せないらしくてな、病院にも通っているそうだが、原因不明だと医者から言われているらしい」

(へえ、どんななんだろ)

(いや、授業付いてくの大変じゃね)

(それな)

本当に好き勝手言う人達だな、と思った。いちいち反応するんじゃない、どうせくだらない言葉しか発せないんだから。

「ま、というわけで色々と大変そうだったらサポートしてやってくれ。1年6組、互いの助け合いはチームワークだ」

佐藤先生はイマイチ分からない言葉を残して、7番の人を迎えに教室を出ていった。教室内は当たり前のようにまたざわつき出す。

(ねえ、どんな人なのかな)

(話せないんでしょ?手話とか使うのかな)

(でも聞くことは出来るんでしょ、あんま意味なくない)

(はっ、確かに)

(筆談なんじゃないかな)

(うっわあ、それはまた大変そうな…)

(ねえ、どう思う?)

その言葉が私に向けられたものだと気付くのに、幾分かタイムラグがあった。

「……あ、えっと、はい?」

「だからー、新しく来る口のきけない人、どう思う?」

「どう思う…とは?」

そう返すと、その人は笑って言った。

「いやー、影森さんって独特だよねえ。いやさ、今から入ってくる人、影森さんの隣じゃん。大変じゃない?話せないんじゃこう、色々とさ?」

ほお、この人私の名前を知っていたんだな、と少し感心した。…この人、何さんだっけ。

「大変…、まあ初対面の人は、どんな人でも大変なんじゃ」

「やー、やっぱ独特だねえ」

そう言うとまた笑った。先程の笑い方とは違う。こういうの何て言うんだっけ、あ、そうだ苦笑だ。


教室を出てから5分後、佐藤先生が戻ってきた。

「よし、じゃあ紹介するぞー。おい、入ってこい」

廊下にあった人影が、佐藤先生に促されて入ってきた。

最後までお読み頂きありがとうございます。

い、いかがだったでしょうか…?気になったことでも感想でも何かありましたら、コメントして頂けると嬉しいです。執筆のエネルギーとなります…!


それでは、また次の話でお会い致しましょう。

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