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刀隠れの巫女

「ワシは、屋敷の正面の馬小屋で震えているだけでした。

 屋根の上で巫女さまと鬼が何を話していたのかは分かりませぬ。

 命を落としたのは法師さまが一人と、鬼と戦った巫女さまのお二人。

 巫女さまの亡骸を弔った塚にあの美しい刀を添えて差し上げたかったが、どなたかが持ち帰ったのか、ついぞ見つける事は叶いませんでしたのじゃ」




 村長むらおさの屋敷を後にしておやしろに帰る道すがら、私はおおじじ様の話を何度も何度も頭の中で繰り返す。

「兄様。

 あのおおじじ様の話」

 

 お社も近くなり、我慢出来ずに切り出した私に、兄様も答えてくれる。


「うん。数代前の刀隠れの巫女と見て間違いないだろう。

 この地で白い鬼の封印に携わっていた」

 戻った家の縁側に腰掛け、考え込む様に呟く。

「この地では見聞録は難しかろう。

 総本山に戻れば、旅先で絶命した巫女がいたか調べられる。

 生き残った者がいた以上、鬼についての記述もあるやも知れん」


 兄様の言葉に、私の胸には一抹の不安が残る。

 大岩の封印を解こうとしているモノがある。


 京都みやこに渡れば。


「京都に渡れば、早くとも一ヵ月は戻って来られない。

 その間、薄紅一人を残して行くことになる」

 聞こえてしまったのかと思うほど、兄様が的確に言葉を紡ぐ。


「大岩を狙う存在モノの動向も気になるところ。

 今お社を空ける訳にはいかない」

 その言葉に胸がスッと軽くなる。

 しかし


「しかし、このままでは事態が悪くなりはすれ、好転はしないだろう」

 昼も近くなり、春の心地よい暖かさの中だというのに、凍える様な背筋の寒さに腕を抱き締めた。


「あれあれ、なんぞ深刻なお話中かい?」

 明るい声に振り返ると、近くに住むおサナばぁちゃんが背中に大きな籠を背負って立っていた。

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