表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/53

決勝=学年トップツー

 ゲートをくぐれば、もはや見慣れてしまった控え室に戻ってくる。


 少しだけ息を深く吸って、吐く。

 身体を落ち着けながら、木の長椅子に座って身体を休めていると、つい先ほどの試合を思い返してしまう。


 正直、出来すぎな面もあった。

 本来で言えば、僕と彼女、ドレディアさんとの間には大きな力の差があった事は疑う余地は無い。

 それでも勝てたのは・・・・・・時の運、としか言いようが無い。

 少なくとも、僕としてはだけれども。


 手加減は、どうだろうか。されていたかもしれないしされていなかったかもしれない。

 それも見抜けないのかと、自分で呆れてしまうほどではあるけれど。

 

「それでも、僕は今、この決勝の場に居る」

 

 運だろうが奇跡だろうが何だろうとなんでもいい。

 後一度だけ。ただ一度だけ同じ事が起きれば・・・・・・


「・・・・・・何を言っているんだか」

 

 首を振って頭に浮かぶ弱気な自分を追い出す。

 奇跡だ運だの、まったくもって僕自身が、僕を信じれていないじゃないか。

 

「魔力は精神力、じゃなかったのかね」

 

 思考を切り替えよう。

 ドレディアさんに勝った事は嬉しいけれど、今は先のこと。

 決勝戦の事を考えることとしよう。

 

「相手は、誰になるんだろうな。やっぱり、あのアクターって」

 

 と、そこで気付いて思わず頭を軽くかいてしまう。

 

「緩んでいますね、口調が」

 

 私でもない、僕でもない、自分の口調。

 

「もう、忘れたと思ったのですが・・・・・・」

 

 自分にかけた僕と言うベールを更に覆う私と言う嘘のカーテン。

 二重に掛かったソレはもはや誰だか分からないなと苦笑してしまう。

 

 

 そもそも、過去の記憶が無いのだから、本当の自分が何かなんてわかりはしないんだろうけれど。

 

 

 ・・・・・・実際、元の自分ってなんなんだろうか。

 

 僕は過去の記憶、らしきものがある。

 ただ、断片的かつそれを実証する事は出来ない、空想と想われても仕方ない記憶。

 

 これが僕の元なのだろうか。こんなあやふやなものが。

 

 じゃあ、そうではなく僕が正しいだろうか。

 一番近いのかもしれない。けれども、これも今の父さんの模倣のような物だ。

 

 では、私?

 それこそ元としては全然違うだろう。

 何せ、名前も性別すら違う大嘘つきの称号なのだから。

 

 

 

 

 

「私は、誰なんだろうか」

 

 






『ヒストリカ・ローリエ』



 そのタイミングよく呼ばれた名前に身体を猫の様にびくりと反応させてしまう。

 肩は跳ね上がってきょろきょろと辺りを見回した後、それが放送だという事がわかって少しだけ顔を赤くする。

 

『準備が整いました。ゲートへお願いします』

 

 ・・・・・しまった、結局は何も出来なかった。

 自問自答で終わってしまうとは、やっぱり緩んでいるのだろうか。

 

 ふうっと息を吐き出して意識を切り替える。

 

「勝たなきゃ、いけませんね」

 

 腰に差した剣を軽くなでる。

 最後の最後。

 主席戦決勝戦が、ついに始まる。



 


 

 

 

 ゲートをくぐった先には既に決勝の相手が佇んでいた。

 

「やっぱり、貴方でしたか」

 

 恐らく、と言うぐらいで予想をしていた相手。

 それは


 

 

「ああ、なんだ。アンタか・・・・・・あの程度でよく勝ち抜けたな」

 

 薄い笑みを浮かべているのは、かつて僕が負けた相手。

 

 

『ついに始まる決勝戦! 準決勝では竜殺しの兄であるアルトリウス・アクターを下したこの男!

 その操作術はまさに芸術! ベイル・アクター!』

 

 

 あのゴーレム使いである、総合一位。

 アクターであった。

 

『相対するその相手は、途中入学で最年少と言うハンデを越え、今決勝に立つ銀髪の幼乙女!

 ヒストリカ・ローリエ!』

 

 


「まあ、なんだ」

 

 彼が口を開くと同時に


『それでは・・・・・・試合開始!』

 

 




 

「今度は本気で相手してやるよ」

 

 彼の正面には、巨大な土の人形。ゴーレムが現れていた。

 そう、僕が一匹倒すのに黒蝕を使ったあのゴーレムが。

 

 





 10人、彼、アクターを守るように取り囲んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ