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友達

「ヒ、ヒストリカさん……?」

 

 驚きの表情をみせながら、すこし怯えたような様子でおずおずと声をかけるドレディアさん。

 

「違います。違うんですよ」

 

 口から飛び出す言葉ははたして誰の声なのか。

 いや、自分の言葉だというのはわかっていんだけれど。

 

 でも、気分が高揚して口が勝手に話し始めているようだった。

 

 心のなか。

 理性では分かっている、彼女の提案は正しい。

 そしてそれを受け入れるのが利口であり、当たり前だと。

 

 なにせ、デメリットはない。

 僕がちょっと嫌な気分になるだけで、ドレディアさんは喜び、僕は助かる。

 

「私は言いました。横に並ぶと、そう、確かに言いましたよ」

 

 でも、けど、だって。

 そんな言い訳じみた言葉が出てきそうになる。

 

「ドレディアさんの言うことは正しいですよ。でも、正しい事が正しいとは限りません。何より」

 

 だから、言いたいことを一つだけ言うことにする。

 

「───譲る、と言うのが気に入りません」

 

 友人だからこそ。

 並んで立ちたいからこそ。

 

 僕は手を取るのではなく、手に取るのだと。

 

 その言葉を聞いた彼女は少しうつむき。

 その後震えながら、壊れた。

 

「ふ、ふふふ……オーホッホッホッホ!!」

 

 …………。

 な、なんか悪役令嬢みたいな高笑いを初めたんだけれど。

 

「ど、ドレディアさん?」

 

「大変、失礼をいたしましたわ」

 

 そして、声を抑えめると同時に、頭を僕に向かって下げた。

 

 貴族が、である。

 さらに言えば、侯爵と言う地位にいる人が、である。

 正確に言えばその娘さんなんだけど。

 

「ええ、本当にうっかりですわ。友人だの何だの言って、結局は見下していたことを気付かされましたわ」

 

 ぎりっと拳を握る。

 相当お冠らしく、腕に血管がこの位置からも見えるほどの浮き出ている。

 

 女性、ですよね?

 

「だから、本気で。ヒストリカ、貴方を倒しに行きますわ」

 

 その強い意志と拳を向けられた僕は、自分のしたことに苦笑を覚えつつも

 

「ええ、お相手します」

 

 前哨戦はここまで。

 ここからは、本当の真剣勝負が始まる。

 

 

「ロシェット式体術! 鉄火地波!」

 

 ドレディアさんが地面に叩きつけた拳、それは火走りと共に砕けつつこちらに向かってくる。

 げ、ゲームの飛び道具!?

 

 そんなの現実的に存在するなんて……いや、ここは現実じゃなかった! いや現実だった!

 

「けど、これなら……払い!」

 

 先程の要領で剣を振るい、払う。

 よし、なんとかこれも払いのけることが出来た。

 

 

 

「鉄火地波!


鉄火地波!


鉄火地波!


鉄火地波!


鉄火地波!


鉄火地波!!!!」

 

 

「打ち過ぎでしょう!?」

 

 どこぞのゴリラの下Bを思わせる程、ひたすら地面を叩きつけて衝撃と炎を飛ばすドレディアさん。

 愚直かつ豪快だが理にかなっている。

 

 なにせ一回ごとに魔力強化はしてるからね!

 ドレディアさんとどっちが消費が大きいかは……わかんないなあ。

 

 

「く、なら避けるしか」

 

「炎よ、紅蓮の炎よ! 燃え盛れ! 空を焼け! 地を焼け! 驟雨(しゅうう)の如く! 『灼炎の流星群』!」

 

「あぁ!」

 

 続いてドレディアさんが使ってきたのは広範囲に炎を撒き散らす魔術だ。

 流石に戦闘センスがある、というより経験値を感じる。

 

「く、魔力強化! 仕方ありません、接近戦です!」

 

 なんとかと言うぐらいで飛び道具を回避しながら走りつづける。

 背後には炎の雨が降り注ぎ、退路は無くなっている。

 

 握りしめた剣を持つも、薄っすらと嫌な汗が滲むのは避けられない。

 なにせ、ここまでペースを完全に握られている状態での、相手の得意分野である接近戦。

 

 と、思っていた。

 

 「炎よ払え! 『爆炎風衝撃』!」

 

 ドレディアさんが手を掲げると頭上で爆発が起きる。

 自爆、と思うほどポジティブではなかったが直後に身体が浮き上がるほどの爆風が襲い掛かってきた。

 

 足を踏みしめるもずるずると後ろに下げられていく。

 それと同時に、背中から段々と熱気を感じてきた。

 

 これは、僕が使う風式と同じような距離を開ける魔術!?

 

「遠距離魔術はない、そうですわよね?」

 

 遠くで、爆風で風が騒ぐ中、そんな声が聞こえた。

 

 

 なるほど、どうやら本当に本気らしい。

 

 得意分野ではなく、相手の、僕の苦手分野で攻めてくる、なんて。

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