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隣りにいたい

 文句を言う前に試合が始まった。

 ああもう! 折角ドレディアさんへのリベンジなのに! もっとちゃんとした人を司会にしてほしかったなあ!!

 

 

 準決勝とは思えないような紹介の仕方にあっけにとられたものの、すぐさまお互いに戦闘態勢に入る。

 一瞬速く、ドレディアさんの方が構え終わるのを見て、僕は力の差を感じ取った。

 けれど、だからといって、臆するわけじゃない。

 

 力の差は一番僕がわかっている。

 なにせ、今までずっと。師匠ちゃんに会う前から鍛えてくれた人だ。

 

 ドレディアさんのお陰で、戦うことが出来た。

 なによりも、友達として接してくれた初めての人だ。

 

 だからこそ。

 今ここで僕は証明するんだ。

 

 短い間だったけれども、きっとドレディアさんはそんな事は思っていないのだろうけれど。

 

「ドレディアさん」

 

「あら、戦う前にお話なんて私好みですわ。 何でしょう、ヒストリカさん」

 

 彼女は悠然と立っている。

 声を掛けておいてだましうちとかは一切考えていないみたいだ。

 いや、勿論僕はそんなことをしないけど!

 

 そういった、堂々としたドレディアさんに対して、僕は真っ直ぐに正面から視線を投げ、言った。


「私は、もう貴方の後ろに居るのではなく、貴方と並び、そして、追い越します」

 

 その言葉をあっけに取られたように一瞬、呆けた顔を見せた後にドレディアさんが見せた顔は肉食獣を思わせるほどの凄みがあった。

 

「ええ、ヒストリカさん、貴方は素晴らしいですわ。いいですわ! このドレディア・フォン・ロシェットがお相手致しますわ!!」

 

 深い笑みを浮かべながらドレディアさんは言葉を続け、その言葉に対して僕は思わず笑みを返す事となった。

 

「荒々しい踊りは得意でして? プリンセス」

 

「ええ、最近良く練習したものですので。宜しければエスコート致しますよ」

 

 ドレディアさんの挑発に対して同じ様に返す。

 言葉の意味は、お互い同じだ。

 言いたいこと。それはたったひとつ。

 

 


 自分のほうが、上だよと。

 

 ただ、それだけを遠慮なく遠回しで言いたいだけなのだ。

 

 

「さぁ! 観客が焦れてしまいますわ。おしゃべりはここまで……行きますわよ!」

 

 声上げて、拳を突き出すドレディアさん。

 ちゃんとひと声かけてから始める当たり、やっぱりこの人は凄く真面目で優しい人なんだなと思いつつも僕は右手を上げる。

 

「金色を示す針の鐘は曇天に笑う!!」

 

「炎よ! 噴き上がれ炎! 風を雲を空を! 全て撃ち抜く炎の槍!!」

 

 互いに詠唱を開始するが、ドレディアさんが特攻してこない!?

 それにあの詠唱は確か模擬戦の時の!

 やはり、ドレディアさんの方が詠唱が早いか。

 

「『煌炎の真紅槍』!」

 

 ドレディアさんの手に生まれた炎の槍が、真っ直ぐに僕に向かって打ち出される。

 

「限界強化!」

 

 身体能力を極限まで上げ、その眼に写ったのはゆっくりと僕に向かってくる槍。

 タイミングは、本当に一瞬。

 それでも、もっともっと、もっと

 

 

───極限の集中を

 

 

 

 

 一瞬後に、風を斬る音が聞こえた気がした。

 

 

「……思わず、見事と言ってしまいますわ」

 

 感嘆の声がドレディアさんから漏れる。

 きっとドレディアさんならわかったのだろう。

 今の刹那を。


炎槍を斬り払う(・・・・・・・)なんて、初めてですわ」

 

「……教えてくれたのはドレディアさんですよ」

 

「わたしくですか? そんな事は……いえ、もしかして、ああ! ひょっとして!?」

 

 最初は思いあたりがなかったのか唸るドレディアさんだったがやがて1つの思いあたりがあったのか、ぱちんと手を叩く。

 

「はい、ドレディアさんが見せてくれた。ガントレットで炎の振り払った物と同じです」

 

「あぁ……なんだか、嬉しいような恥ずかしいような、悔しいような妙な気分ですわ」

 

 感情を表現できないような、もにゅっとした顔を見せる。

 戦闘中にもかかわらず、こういった具合なんだよなあドレディアさんは。

 

 でも、申し訳ないけど、僕はそこまで純真にはなれなかった。

 

「刻の戒めは全てに平等を告げる」

 

 詠唱はまだ続いている。

 詠唱を途中で維持するのは凄く大変だったが、なんとかしてここまで持たせる事ができた。

 唐突な中断は勿論駄目だけれど、予め僕は発動が出来ると思っていなかった。

 

 なんらか、例えば特攻してくるとか突撃してくるとか殴りかかってくるとか、そういった事で全部詠唱は出来ないことを予見していた僕は詠唱を維持するようにしていたのだ。

 だからこそ、このまま詠唱を完了させる。

 

「重ね(つづ)れ。巡れ『煌炎の真紅槍』!」

 



 2発、目!?

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