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詰め込み教育はわかんない

 さて、すぐに図書館に向かいたいところだけどまだ授業は残っている。

 今起こったのは魔術学。次は属性学だ。

 それが終われば必修は終わりのため、その後に図書館に向かう予定だ。

 

 この学院では、人によって資質や能力が大きく違うため、自分にあった授業を受ける制度になっており、必修はその名の通り全員が必ず受ける授業だ。

 逆に言えばそれ以外は受けなくても良い、と言う所は大学と似ている。

 そして、教師の方が教えてくれるのは一緒だが、日本と大きく違うのは自主性に任せているということだろうか。


 悪く言えば放任だが、生徒数も多いこの学院、確か数千人はいるって聞いた筈だ。

 その分敷地面積も凄いことになっているけど……それだけいると一人一人に構ってられないらしい。

 だから僕が軽い案内と紹介だけされた後、特に教師の方から何かしてくれるということはない。

 知りたい事や確認したい所があれば自分でなんとかしろ、と言うのがこの学院の基本ルール、らしい。

 いや、僕も父さんから少し話を聞いただけの全部聞きかじりなんだけれども。

 

 そうそう、そういえばこの世界の言葉や文字について、僕が何故理解できるのかと言うところについては未だに不明だ。

 共用語、と呼ばれる言葉や文字で書かれているらしいが僕の眼には日本語で書かれているように見えるし、日本語で話しているつもりで、聞こえる言葉も勿論日本語である。

 が、父さんに聞いた所共用語で話しているらしく、何らかの力で自動翻訳されているのだろう、という所までしか分かっていない。


 だからこそ、他の人がこの世界に存在しない物や名前を言ったりするのは自分がわかるように翻訳されている、そう言う事だろう。

 全くちっとも理由はわかんないけどね!

 なにせ検証しようにも言葉が通じているから言葉の差異はわかんないし。

 そもそも友だちがいないからね!

 ……しょ、初日だからね!

 

 でも一から言語の習得をしなくて済んだのは僥倖だ。

 何分、物覚えが良い方ではないのだ。

 本当に言葉を理解して読み書きが出来るまでに一体どれだけかかることやら……英語でさえ中学レベルの僕にはとても難しかっただろうなあ。

 

 

「……全員集まっている? 属性学。始める」

 

 と、そこに入ってきたのは一人の……!?

 

 ね、猫耳の少女?


 背は自分と同じぐらいだが、属性学を始めるという事は教師なのだろうか?

 しかし、猫耳? 猫耳……本物?

 

「あ、あの。あの猫耳って……」

 

「話しかけんな。獣人種じゅうじんしゅくらい珍しくねえだろうが」

 

 じゅ、じゅうじんしゅ?

 良くわからないけど珍しくないって事は……よく居る人なのかな?

 うーん、凄い不思議だ。村にもそんな人居なかったしなあ。

 

 いや、もしかすると! ひょっとして

 

「ああいった耳のアクセサリーではなくて?」

 

「ッチ!」

 

 あ、違うみたいですね。

 そ、そうか……初めて見たけど、そうか。魔術があるんだから、ああいったじゅうじんしゅ? って言う猫耳の人もいるんだ。

 ……凄いなこの世界。

 

 そんな世界のギャップを肌で感じつつ、授業が始まる。

 

 

「知っていると思うけど属性は基本四種の火水風土。発展四種の金雷光闇がある」

 

 すみません、ご存じないです。

 あ、でも火と水の魔術は使えるから、なるほどそれが基本四種の火と水なのか。

 

「それぞれの特色は重要。知っていると思うけど。復習する。テストにも出す」

 

 こ、これちゃんと聞いておかないとだめなやつだ。

 

「火は威力。水は操作性。風は切断。土は変質。金は変性。雷は速度。光は守護。闇は吸収。勿論これが全てじゃない。

術によってぜんぜん違うから。基本的な特色と考える。後呼び方も、地域差がある。土を木と呼ぶ場合もある。主に東方。また闇を悪しき属性と考える、とこもある。注意。相性もある。火は風に強い。風は土、土は水、水は火。相克と呼ばれて、火の魔術が水の魔術とぶつかると、不利。でも一方的に負けじゃない。あくまで、相性。発展は金と雷、光と闇が相克同士。ぶつかった場合、術者の力量が、特に問われる。一方的に打ち消しもある。それ以外の属性同士は普通」

 

 ……うわあ、覚えきれないや。いっぺんに言われても、その、ちょっと困りますね。

 これは、徹夜で勉強する必要があるかもしれない。

 いや本当わかんないって……うーんあらためてまとめるのが一番いいのかもしれない。

 今直ぐ覚えなきゃいけないわけじゃないし、徐々に覚えていこう。

 

 しかし、独特な話し方をする人だなあ。

 獣人種の人は皆そうなのかな?

 

 うーん、覚えることが一杯だ。

 この世界の事、礼儀作法、魔術、属性。

 ……でもやるしか無いか。

 

 僕はこの中で、一番にならないといけないのだから。

 泣き言は言ってられない。

 よし、早速メモを取ってあとで復習できる様にしよう!

 ……。

 

「あの、何かメモを」

 

「ッッチ!!」

 

 盛大な舌打ちが聞こえたような気がした。

 ……ような、じゃないよね。流石に。

 

 迷惑掛けちゃったのがよくなかったかなあ。

 あと図々しいかったかな。そうだよね、初対面だし!


 うん、今度メモとか色々文房具含めて買いに行こう。

 お金、足りるかな?

 一応お小遣いとしてお金はもらっているから大丈夫だと思うけど、何かでお金を稼ぐ必要もあるかもしれない。

 アルバイトとかあるんだろうか?

 

 流石にこの世界にコンビニのバイトはないよね。

 でも魔術があるこの世界のバイトってどんなのだろう?

 

 あ、危ない仕事がいいな。命の危険がないやつで、地道に働きたいね!


 そんな事を頭の片隅で考えながらも必死に授業を聞いたのであった。

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