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VSドレディア

 サトリの様な師匠ちゃんはわかっていると言わんばかりにはっきりといった。

 

「そう思っている原因は、魔力がないから?」

 

「! わかるんですか?」

 

「師匠ちゃんにかかればそれぐらいわかるわよ。でもね、違うわよ。だからこそ、戦わせたいのよ」

 

「それはどういうことでしょう?

 

「ヒストリカちゃんが使える魔術は教えてもらった通り、火球、流水、 |LittleArmour《小人の手持ち盾》、風式:翠華(ふうしき・すいか)、|奪い尽くす黒触の大太刀ヴォーバル・アバターその名は世界である(ステイシス)……西方、南方、東方、北方全部使えるのは強みよ」

 

 そこで一度言葉を切った。

 

「でもわかっている通り、全部クセが強いわ。基本となる火球と流水は別だけど、火球じゃ威力が弱すぎて精々牽制ぐらいしか役に立たないし、流水なんて水を出すだけで攻撃力はない、LittleArmourも防御系だし、攻撃としては使えない、そうね?」

 

 う、返す言葉もない。

 

「風式も相手を吹き飛ばす緊急回避用で、後ろが鉄のトゲとかならまだしも、それ自体にも攻撃力はない。黒触は威力は有るけど剣を触媒にしてその後消えちゃうからから基本一度しか使えない。ステイシスは決まれば勝ちに近いけど、決まれば、ね。さて、仮に決まったとして、それが今の状態よ(・・・・・・・・)。そんな状態でヒストリカちゃんはトーナメントをどう勝ち上がるのかしら。何度も勝負がある(・・・・・・・・)のよ?」

 

「……つまりこれは、模擬的なトーナメントということですか」

 

「大体正解。ヒストリカちゃんは一回戦でステイシスを決めて勝ちました。さて、第二回戦に彼女、ロシェットさんと戦うことになった……そういう状況と考えなさい」

 

 それは、確かにありうる状況だ。

 は、反論の余地がない……。

 

「まあ! 負けても洗いっこするだけだし、むしろお得よね」

 

 それが一番問題なんですよ!!

 

「さあ! 初めますわよ!」

 

「え、ちょ、ちょっと待ってくだ」

 

「勝負初め!」

 

「師匠ちゃん!?」

 

「行きますわ!」

 

「ドレディアさん!?」

 

 言うだけ言って速攻で離れていった師匠ちゃんの開始の合図と共に容赦なく襲ってくるドレディアさん。

 既に右手には銀色の手甲をつけている。

 あれ、何か模様が刻まれてる……?

 

「代々我が家に伝わるロシェット式体術!」

 

 侯爵が体術を伝えるの!?

 ってヤバイ、は、始まってしまった以上は仕方ない、集中しないと!

 

「掌炎!」

 

 直線的に胸を狙う拳ではなく、手の平で突く掌底を魔力強化をし腕を交差させて防ぐ。

 ぐぐ! ふ、防いだのに衝撃が凄い!

 

「まだですわよ! 火槌!」

 

 今度は拳を握って裏拳のように上から殴り掛かるのをそのまま、若干しびれた腕で再度防ぐ。

 がくんと交差した腕が衝撃で下がるがなんとか堪える。

 が、その拳を振るった勢いでドレディアさんは僕に背を向けると。

 

「焔身発勁!!」

 

 そのまま、身体全体の捻りと突進を加え、その背によって僕は大きく吹き飛ばされる。

 み、見たこと有るような動き、たしか、鉄山靠と言ったっけ……なんとなくの知識だから本当は違うかもしれないけど。

 

 吹き飛ばされたが僕は体勢を立て直して、足でブレーキをかける。

 す、凄い、全部威力が高い上にしっかり連携されてて全部が1つの動きみたいだ……。

 魔力強化してなかったら一撃で危なかったと思う。

 

「どうしました! さぁ、掛かってくるのですわ!」

 

 いつもの腕組みポーズでドレディアさんは追撃せずに待ってくれている。

 あれは余裕とかそういうのじゃなくて、多分素でやってるんだろうなあ。

 

「簡単に言ってくれますね……」

 

 とはいえ、正直難しい。

 火球は以前見せてもらった通り手甲で払われるだろうし、勝ち筋としてはやはり黒触しか……いや。

 そこで師匠ちゃんを見ると察したように笑みを浮かべていた。

 

 当たるかどうかは不明、そして使って仮に当たったとして、これが想定しているトーナメントニ回戦目だとすると、三回戦もあるはずだ。

 そしてその三回戦の試合は魔力がなくなった果汁0%の僕だ。勝ち目は確実に無い。

 

「来ないなら、こちらから遠慮無く行きますわよ! 炎よ、紅蓮の炎よ! 燃え盛れ! 空を焼け! 地を焼け! 驟雨(しゅうう)の如く!」

 

 手の平を大きく上に上げてこちらに強い視線を投げかけながら詠唱を始めるドレディアさん。

 そうだよね! 肉弾戦のイメージが強かったけど魔術はぐらい普通に使うよね!

 しかも言葉が強い! 魔術の詠唱は装飾語とかの言葉が強い程威力が高い傾向が有る。

 そして詠唱で実行することを唱えるから何となくわかるけど、雨って広範囲魔術じゃないかあ! 中位クラスだよ!

 

「さぁ! 踊りましょうか! 『灼炎の流星群』!」

 

 ドレディアさんの頭上の魔法陣が大量の火の玉を上に撃ち出す。

 それは放射状に広がりながら文字通り流星のごとく、雨のように落ちてくる。

 うわ、ドレディアさんの周りは振ってこないんだ……ああ、これで接近戦に持ち込むんですねわかります!

 

「ああもう! 行くしかありませんね!」

 

 あんな数避けれないし、防いでたらいつまでも炎の雨に晒されるだけだ。

 僕は特攻するようにドレディアさんへと飛びかかる。

 

「ロシェット式体術……」

 

 弓を引き絞るように右腕に力を込めるドレディアさんを見た瞬間。

 ぞくりと背筋が震え、ほぼ直感で足で制動を掛けて、自ら後ろに飛ぶ。

 もちろん、それは上から振ってくる炎の雨に身を晒す行為ではあるんだけど、何故かこうしないといけない気がした。

 

「鉄火竜貫!!」

 

 真っ直ぐに打ち出された拳は正拳突きに似た、本当に直線的に打ち出された拳は空気をぶち抜くような勢いと音をさせて、振るわれた。

 

「……避けられましたわね」

 

 悔しそうに、だけど嬉しそうにそう言った。

 いやいやいや、あんなの受けたら腕ごと粉砕されちゃうよ!

 しかし窮地を脱したわけではない、上から降り注ぐ炎が僕に雨あられと降り注ぐ。

 

「熱っ! 熱っ!」

 

 魔力強化を限界まで使って、ドレディアさんの見よう見まねで炎を振り払うが数が多すぎる!

 全ては防ぎきれず、身体に炎が当たる度に焦げた香りが鼻孔をつんと付く。

 身体が熱い、腕も熱い、周囲も熱い!

 

 だめだ、耐えきれない!

 腕を盾に強引に前へと再度飛び出す。

 

 距離が近くなっていたお陰か、ドレディアさんも構えただけで先程の技は放ってこない。

 炎の雨を抜けて、ようやくドレディアさんの前、安全地帯に入ることが出来た。

 だけど正直腕は所々焦げて、かなり痛い。

 魔力強化とはいえ、万能じゃない。一部火傷している。めっちゃ痛い。

 全身の何%かで死んじゃうって聞いたことあるけど……。

 

「流石ですわね。でも、勝負はこれからですわよ!」

 

 そう言うと上空に大きく飛び跳ねる。

 今だ炎を吐いている魔法陣……え、まだ続いてるの? その放射線に放たれる炎ギリギリ下まで飛び、そのまま僕に向かって落下してくる……いや、若干前?

 

「直撃か! 炎の雨か! 選んでいいですわよ!」

 

「! そういう事ですか!」

 

 僕のちょっと前に飛んだのは前に逃げにくくするためか!

 落ちてくる時間を考えると、前に逃げて避けれるかは五分五分!

 でも引くよりかは!

 

「っく、間に合って……!」

 

 前に走り始めるが、間に合わないか!

 

「火山! 大! 崩落!」

 

 落下速度と強く引き絞って放たれた拳は大地を打ち抜く。

 瞬間、爆発したような音と共に大地が完全に砕け、その衝撃の余波が風となって荒れ狂った。

 その場所は正しく、隕石が落下したようなクレーターになるほどだ。

 

「……驚きましたわ」

 

 その声が僕の()から聞こえる。

 

「地面に撃つ直前に、上に飛ぶ。遅ければ直撃、早ければ拳はヒストリカさんを狙った。その本当に僅かな隙間の時間に上に跳ぶ……見事ですわ」

 

「これしか手がなかっただけ、とも言いますけれどもね!」

 

 そしてこの後の展開も正直読めている。

 

「ええ、上に逃げる。それは弱点ですわ。だからその対策も当然してありますわ」

 

 ですよね!

 

「ですので、その場で跳べば良かったのですわ。真上でなければ、まだ良かったですわね」

 

 ドレディアさんはその場で両手を上に伸ばす。……元気玉?

 

「炎よ! 噴き上がれ炎! 風を雲を空を! 全て撃ち抜く炎の槍!」

 

 言葉に呼応して、炎の槍が生まれ、右手を引いて槍投げの様なポーズを取る。実際に触れているわけではないけど。

 後は上にいる僕に向かって撃ち出すだけだろう。

 










 

 賭けは、勝った。


今日は1話です。すみません。

明日も夜頃更新します。

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