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お嬢様はお偉かった

「テルミドールさんは図書館に用事でしたよね?」

 

「はい。ですので、お二人方はそのまま修練場にお向かいになられればと思います」

 

「あら? そちらの方は?」

 

「ええ、こちらはテルミドールさんです」

 

「ご紹介に預かりました。我々は人形種です。ロシェット様」

 

 あれ、名前は?

 

「ああ、人形種でしたの。ヒストリカさんの(・・・・・・・・)ですの?」

 

 ん? 何か今何となく気にかかるような言い方だったような。

 

「いえ、我々は違います」

 

「そう……なら、行きましょうか。ヒストリカさん」

 

 そう言って、いつもの様に腕組みをしながら歩いて行くドレディアさん。

 

「あ、ドレディアさん! 先行っちゃった……ごめんなさいテルミドールさん、私追いかけますね」

 

「はい。……ありがとうございました。ヒストリカ様」

 

「え、ああ、助けたことですか? 構いませんよ。また何かあったら……いいえ、何もなくてもお話しましょうね。それでは」

 

 そう言って僕は駆け出す。

 うわ、ドレディアさん足速い、腕組みのままあの速度を!?

 

 そして、僕が彼女に追いついたのは少し後だった。

 一緒に並んで歩き、修練場に着くと、師匠ちゃんの場所に行くために僕から中に入る。

 

「あら、ヒストリカちゃん? 遅かったじゃない。何かあった? ……あら、お友達かしら」

 

 そこには師匠ちゃんがどこから取り出したのか、洋風の椅子と机を出して紅茶を飲んでいた。

 ……いや本当どっから持ってきたんだろう。

 

「すみません、ちょっと、色々ありまして。こちらはドレディアさんです」

 

 そういうと、人差し指をチッチッチと言いながら横に動かす。

 

「駄目よ。人を紹介する時は家名でないと失礼に値するわ。やり直し」

 

 う、しまった。

 礼儀作法は知ってたはずなんだけど、うーん失敗。

 

「失礼しました。ロシェットさんです」

 

「ロシェット?」

 

 何か心当たりを探るような顔を師匠ちゃんがする中、意外そうな声を発したのはドレディアさんだった。

 

「ドレディア・フェルリッヒ・フォン・ロシェットと申しますわ! 貴方が、ヒストリカさんの師匠ですの?」

 

「ええそうよ。名前はリリアナ(・・・・)。宜しくね、ロシェットさん」

 

 え? と思ったが僕に対してウィンクをする。

 どういうつもりかわからないけど、偽名を使うみたいだ。

 でも何故なんだろう?

 

「失礼だけど、ロシェットって侯爵(こうしゃく)家の?」

 

「……ええ、そうですわ」

 

「フルネームと言う事は、継承権が高い方かしら?」

 

「…………嫡女(ちゃくじょ)ですわ」

 

「ふうん、なるほどね」

 

 あれ、侯爵家って、確か凄く家柄が高いんじゃなかったっけ。

 確か下から男爵(だんしゃく)子爵(ししゃく)伯爵(はくしゃく)侯爵(こうしゃく)公爵(こうしゃく)だから……2番め!?

 しかも嫡女(ちゃくじょ)って、家を継ぐ立場の人だったはず……だから次期侯爵ってことだよね?

 

 す、すごくえらいひとだったあああああ!

 ふ、不敬罪とかになるかな?

 と、そこで何やら師匠ちゃんがドレディアさんに耳打ちする。

 

「……はぁ、来たのは失敗だったかもしれないですわね。ヒストリカさん」

 

「ひゃい!」

 

 しまった、変な声を出してしまった。

 

「勝負を致しましょう」

 

 え? 何故?

 

「突然の話が色々有りすぎて混乱してますけれど、何故でしょう?」

 

「勝った方の言う事をなんでも聞く、宜しいですわね?」

 

「宜しいわ」

 

「よろしくないです! 話がつながってないんですけれども!」

 

「師匠ちゃん命令よ。ロシェットさんと戦いなさい」

 

「遠慮は無用ですわ。貴方が勝てば、侯爵家嫡女として、なんでも願いを聞きますわ」

 

 ええ……どうしてこうなっちゃったの……?

 









 そうして、唐突に、突然に始まってしまったドレディアさんとの戦闘。

 正直困惑しか無いのだけれど、やる気がマックスなドレディアさんはいつものポーズで高らかに言った。

 

「先に言っておきますわ。手加減や容赦をしたら容赦ない命令をしますわ」

 

「よ、容赦ない命令とは一体なんですか?」

 

「私の夢を叶えてもらいますわ」

 

「夢?」

 

 そしてドレディアさんは両手を広げて堂々を言い放つ。

 

「お友達とお風呂で洗いっこですわ!」

 

 え?

 

 ええええええええええええ!

 ふ、風呂? お風呂? 洗いっこ!?

 

「な、何故……」

 

「わたくしは侯爵家の娘……そんなわたくしに利害無しで近づいてきた人はヒストリカさん貴方だけでしたわ」

 

「……いえ、話しかけてきてくれたのはドレディアさんからでは?」

 

「だから友達と呼べる人は殆どいませんでしたの。だからこそ、交流をもっと深めたいと思うのですわ」 

 

「もっと違う方法があるのではないでしょうか……?」

 

「ありませんわ!」

 

 あるよ! いっぱいあるよ!

 

「以前仰ってましたわね、家訓で肌を見せてはならないと」

 

 はい、嘘の家訓を使いました……

 

「女同士ならセーフですわ!」

 

 いやアウトです。完全にアウトだよぉ!

 

「い、いえそれは……」

 

「問題になったらロシェット家の名を持ってお話をしに参りますわ!」

 

 そこまで情熱を掛けるの!?

 

 ま、まずい、完全にドレディアさんの中で盛り上がりまくっている。

 特にマズイのは……僕がここに来る前に『その名は世界』をつかっている事だ。

 ……ぶっちゃけ魔力が結構厳しいです。

 魔力強化無しなら黒触行けるかもしれないけど……ドレディアさん相手に強化なしって無理だよねえ。

 こ、これは正直勝ち目はない。

 

「し、師匠ちゃん」

 

「あらあら、可愛い声を出してどうしたの?」

 

 紅茶を飲む手を止めて僕の方へ真っ直ぐ向かってくるあたり、多分要件はわかっているんだろうなあ。

 小声で師匠ちゃんに思いを吐露する。

 

「あの」

 

「勝てない、って言うのかしら?」

 

 師匠ちゃんは心情を本当に見透かすなあ。


今日更新出来ればと思います。

更新するとすれば夜8時頃の予定です。

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