表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/53

最後の切り札は

「なんと」

 

 突然の魔術に対し、驚きながらもしっかりと腕を交差させて防ぐナナナ。

 だが吹き荒れる風によって一時は耐えたものの、そのまま吹き飛ばされ、空中で体制を立て直すが少しの距離が空く。

 だが、少し空いただけでも十分だ。

 そのまま僕は言葉を続ける。

 

「御身に願い(たてまつ)る。風霊よ、今ここに精霊の風にて厄災を(はら)い給え!」

 

 距離が空いた隙に人差し指と中指を立て剣指と呼ばれる形にして、詠唱を終わらせる。

 

「後述魔術。珍しい。ね」

 

「いざという時に使えると、教えていただいたので」

 

 この東洋魔術のアイディアはドレディアさんからだ。

 後述魔術とは、本来詠唱を先に言わないといけないが先に魔術を発動させ、その後で詠唱を行う魔術だ。

 発動を一言で出来る反面、その後直ぐに詠唱を行わないとならない。

 行わなかった場合、数倍以上の魔力を消費することになる。

 これも癖が強い魔術の一つだ。

 

 ただ、癖があっても即仕切り直しが出来る術が一つは欲しいと言うドレディアさんのアドバイスが、生きた。

 しかし、剣が離れてしまった。

 まさか跳ね飛ばされるほどとは、やはり、教師だけあって強い。

 ……僕は弱すぎる、という説もあるけど。

 

「肉弾戦。する?」

 

「遠慮したい所ですね……」

 

 流石に素手では防御も出来ない。

 爪で切り裂かかれるのは勘弁願いたい所だ。

 なので、なんとかして剣を拾わないと刺し身になってしまう。

 

 が、流石に後ろにある剣を拾いに行けば後ろからざくっとやられてしまうのは、想像に易い。

 距離は離れたものの、今だ窮地なのは変わりなかった。

 

「チェック、というものでしょうか」

 

「そう。だから。残念だけど。終わり」

 

 飛び跳ね、間合いを詰めながら爪を振るうナナナ。

 単純に、一直線に、しかし、それを素手で防ぐことも魔術の詠唱も難しい。

 

 ……終わり?

 いや、まだ終わってない。

 

「いえ、まだ、メイトではありません…っつ!」

 

 鮮血が舞う。

 僕は両腕を盾にし、その腕を爪が突き抜ける。

 幸い、交差させたせいか凄い痛みは感じるものの、眼前すれすれで爪は止まった。

 痛い。

 痛い痛い!

 

 激痛が走る。泣きそうなほどに。

 というか、本当に涙が出てくる。

 

「むう。その根性はよし。……あれ。抜けない」

 

 魔力強化して、腕で締め付けながら掴んでるからね!

 お陰で手も爪が食い込むし切り裂かれるしで、血まみれだ。勿論痛みは倍だよ!

 でも、これなら逃げられない。

 

 ここから肉弾戦に持ち込むのも手かもしれないけれど、身体能力で圧倒的に負けている僕では辛い。

 正直勝ち目はない。

 

 だったら僕の最後の、札を使う。

 使えるか分からない、魔術を。

 最悪の場合、自爆すらもありうる程だけど。

 

 この状況を打破できるのは、もうこれしかない!

 

「……金色を示す針の鐘は曇天に笑う」

 

「!!」

 

「刻の戒めは……」

 

「『黄雷の大蹄鉄』!」

 

 一瞬だけ見えたナナナの顔は、焦りと驚愕が入り交じった顔に見えた。

 次の瞬間、僕の視界は真っ白に染まった。

もう二話投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ