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ロジックエラー

 そうして筆記試験が始まった。

 各机にはクラスメイト達が座り、そして教室の隅には数人の先生たちが目を光らせている。

 ……魔術があるんだし、カンニングも色々な手段がありそうだしね。

 

 おっと、他のところを見ていてそう思われたらたまらない。

 僕は羽ペン。鳥類の羽みたいな物にペン先を着けたアレにインクを浸して、眼の前の紙に集中する。

 

 問一【五大国の通称と名称を答えよ】

 

 第一問目から通称プラス名称で答えろと言う辺りが嫌らしい。えっとこの世界にある5つの大きな国の名前と、首都に着けられている名称をかけばいいんだな。

 

 騎士王城『アスティオン』


 中立都市『イコリティ』


 魔鍛冶庵『パラクセノス』


 大歓楽園『グランドスラム』


 魔法学院『リズべルド』



 これでいいはずだ。しかしこの学院大きいと思ってたけどまさか国として扱われてるほどとは……。

 

 問ニ【雷属性が光属性より速度で勝る理由を答えよ】

 

 属性の特徴とか甘い事ではなく、それを前提にした問の辺り試験の難易度がわかる。

 

 確か、実際光属性は光の速度で動くわけではなく、光を凝縮した物、つまり熱の集合体であり、実際の速度は魔術によって決定していて、その魔術での発動した時の速度であり、実施の光を発射しているわけではないから……と。 

 

 問三【三大資質の名前と特徴。またそれぞれの高い場合、低い場合を全て記入せよ】

 

 試験に出すとは言ったけど難易度を上げてある……!

 だがばっちり予習済みだ!

 

 魔力量:個人で持つ魔力の総量の事。

 

 高い場合、魔力を使える絶対数が増え、また魔力の回復速度も高くなる。

 逆に低い場合は回復量が落ち、規定量に達していない場合、つまり魔術自体が使用できない。



 魔力操作:自身の魔力を問わず(・・・)魔力を操作する力。

 

 高い場合、魔力を無機物に保存したり、他者の操作する事も可能になり、魔術自体に使用する魔力量を効率的にする事で少なくする事が出来る。また、無意識、または意識的な身体強化を可能とする。低い場合、魔術自体に通常以上の魔力を消費し、効果が落ちる場合もある。また精密性を要求される魔術行使が難しくなる。



 魔力出力:魔力量から魔力を放出する力。一度に魔力を放出出来る力とも呼ばれる。


 高い場合、魔術自体の威力が上がる他、魔力を足すことで効果を高める事も出来る。また、高位、最高位魔術を使用する事が出来る。低い場合、魔術の効果が落ちる場合もあり、高位、最高位魔術には一定の魔力出力が必要なため、中位、または下位の魔術しか使えない事もある。

 

 ……この長いのを羽ペンで書くのも大変だ。

 

 問四【四法の特徴と特徴の理由をそれぞれ挙げよ】

 

 ……三問だけに三大、四問だけに四方、大体それなら五大国は五問目じゃ……いや、下らない思考はやめよう。

 

 東方魔術:東方では魔力を強く帯びた存在を神獣や聖獣、神と崇め、奉る習慣があり、そのため詠唱が『力を借りる存在名』『祝詞』『願いの内容』となる。

 また、捧げると言う点から舞などで魔術行使も行い、また願いを届ける(いの)(がみ)という事で紙を使う事も多い。

 その内容から何かを祓ったり、特殊な効果を持つことが多く、効果も高い事が多いが力を借りる関係上、信仰や直接その相手と接した事がある等の繋がり(東方では(えにし)と呼ぶ)が必要な場合も多い。 

 


 西方魔術:西方で発達したが今は全国的な基本的な魔術として扱われ、最も使用人数が多い。詠唱と魔術名のみで発動出来るため、万能性が高く、あらゆる状況で対応が出来る。詠唱は『属性名』『装飾語』『結果』で構成されている。

 基本的には属性を主に使った魔術になるが個人の素質に左右されやすい問題と何かに特化しているわけでは無いため、一部では他魔術に劣る部分もある。

 


 南方魔術:南方では戦争が多く、その為、詠唱速度や速攻性、あるいは戦略性が高い物がよく使われ、発展していった。その為兵力として召喚術と呼ばれる、何かを呼び出す魔術も多い。詠唱は『過程』『結果』であり、それぞれ単語で発動するため非常に短い。

 反面、効果時間が短いが種類も多く、またもっとも個人の特性、資質に左右される。



 北方魔術:北方では製鉄が盛んであり、結果魔力を持った武器や道具が多く作られた結果、それらを触媒にした魔術が発展していった。魔力を持った武器、あるいは装飾品を元に魔術を使ったり、それらに刻まれた魔術を、魔力を込めるだけで発動できる。高威力な物が多く、もっとも火力を持つ魔術。追加効果を持った物もあり、非常に強力な魔術も多い。詠唱は『武器(道具)名』『装飾語』『現象』となる。

 ただし、そう言った魔力がこめられた道具が必要な事と、それらが貴重なものであるため入手が難しい事、手元に無いといけないこと、複数の所持は干渉を起こし発動しない可能性がある事、中には使い捨ての物もあったり、魔力消費が大きかったりと継続した戦闘には難しい点がある。

 

 

 う、腕が既に痛くなってきた。

 書きすぎたかな……いや、配点がわからない以上書いておくに越したことはないよね。

 

 そんな事を考えながらも、僕はなんとか全ての問題を埋めることが出来た。

 合っているかは……どうだろうか。

 

 それよりも、もっとも大事な試験が明日、待っている。

 実技試験。

 それは、この座学である筆記試験よりも重視される試験である。

 魔術を競う、試験。

 

 家に帰り、一応問いた問題が間違いないかどうか復習して、漏れがなさそうな事に安堵してゆっくりと眠った。

 本当は直前まで訓練したいところだけれど、魔力の回復は睡眠が一番良いため、今日に限っては外に出る人間は殆どいない。

 皆、最後になるかもしれない休息を取るのだ。

 

 

 

 





───そして実技試験、当日。

 

 

 僕は魔術修練場に居た。

 見たことがあるクラスメイトや、全く知らない人も大勢が今日は集まっている。

 勿論、これが全てでは無く、何十箇所かで実技を行っているため、この大勢の人達もこの学園のほんの一部に過ぎない。

 

「お、おいあれ……」

 

 と、何人かがざわつく。

 

「が、学園長だ……」

「嘘、あの人があの『ロジックエラー』!?」

 

 学園長。

 それは、名の通りこの学園の長。

 つまりは、この五大国の一つである魔法学院を統べる王と言う事。


「やあやあ! どうもみんな、ちゃんと生きているかな?」

 

 その学園長は、空から降りてきた。

 

「初めての子もいるよね。だから自己紹介をしよう、オイラがこの学園の主、王様である」

 

 背からは白い翼を生やし、羽ばたいても居ないのに宙を浮いてこちらを見下ろしているのは、少年。

 

 

「ストラディーヴァ、覚えておいてな、脳に」

 

 歳は、自分よりも幼く見えるほど。

 広げた白い翼は彼自身よりも大きく、だが何よりも。

 

「あ、あー……そこのアンタ」

 

 そう言って指を指した先、だが固まっているため、誰を指しているのか分からない。

 少なくとも向いている方は別なので僕ではないことは確かだ。ちょっと安堵。

 

「失格、もう家に帰っていいよ。この学院にいらなーい」

 

 爆弾を落とした。

 にわかにざわつきが大きくなる。

 

「オイラの話も聞かない才なしなんて、モブとしても使えない、だからいらなーい」

 

 その言葉で、心当たりがない人間が水を弾くようにその指先から逃れると、ある一人の男がその場に残った。

 

「な、待てよ。俺? いやいや、何言って」

 

 消えた(・・・)


 忽然(こつぜん)と、何の気配も、音も、一切何も無い中。

 彼は、消えたのだ。

 

ロジックエラー(・・・・・・・)。わかった? ちゃんとみんなオイラの話を聞いてね。無視されんの、嫌いなんだよね」

 

 彼がどうなったのか、それは分からない。

 何処かに、例えば瞬間移動のようなもので消えたのか、それとも……本当に、消されてしまったのか。

 ただ、この瞬間、話し声は一切なくなり、全員の眼は彼、ストラディーヴァと名乗る少年に釘付けになった。

 ……消されたくないからね!!

 

「そうそう、ちゃーんと注目してね。さてさて、実技試験の話なんだけどさ。内容は簡単、魔術を魔導板に放って、どんな魔術かを見て判断する」

 

 魔導板か。ドレディアさんが担いできたあの板だな。

 魔術に対する抵抗力があるらしく、練習用に最適な的だ。

 

 

 

「でもさ、つまんないよね」

 

 嫌な予感しかしてこない。

 こういうトリックスターみたいな人はあれよ、突然今日は皆さんに殺し合いをしてもらいますとか言うタイプだよ。

 ぐ、試験前に使うのは凄く迷うけど直感に従おう。

 

「我が身に備えを、『Little(小人の)Armour(手持ち盾)』」

 

 瞬間、ストラディーヴァ……さん? と視線が合った。

 え、ダメなんすか。

 け、消すのだけは勘弁してください。

 

 とりあえず笑顔を見せて手を振ってみる。

 敵じゃないです! 話も聞いてました!

 

「へぇ……んじゃ、まずは審査からいきまーす」

 

 そう言って、彼は人差し指を高く掲げて。

 にっこり笑ってこういった。

 

「『夜魔神の抱擁(ブラッククラック)』」

 

 天使みたいな白い翼広げておきながら使う魔術が完全に闇じゃないの!

 そんな事を一瞬思った時、空から黒い幕が落ちてくる。

 それは即座に僕達の上に降りかかった。

 

 同時に、ばたりと周りの人間が次々に倒れていく。

 幕が頭から足まで透過していき、地面に着くと音もなく消え去った。

 

 たったこれだけ。

 時間にして数秒程度のこと。

 起こったことも黒い何かが全身を通ったなと言うぐらい。

 

 

 それだけで、集められた数百はいるんじゃないかという人たちは。

 数人残して、全員が地面に倒れ伏していた。

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