第4話 見下される
眠りについて、しばらく経つと、暗闇の中から、「会社を無断欠勤するなんて社会人失格じゃないの?本当にダメだね。」という声が聞こえてきた。声のする方に振り向いてみると、そこには八木が、俺を、見下す目線で、見つめながら立っていた。そして、八木はどんどんでかくなり、でかくなって、俺を見下ろしながら、「普通、会社を休むなら連絡を入れるもんじゃないの?本当にダメだね。」と言った。その言葉は、矢のように、俺の心臓に突き刺さった。「~じゃないの?本当にダメだね。」は、八木が俺を見下す際にいう口癖だ。集金の際、渡すお釣りを間違え、トラブルになった際も、「普通、電卓を使ったり、受け渡した金額を声に出して確認をするなりして、お客様に確認を取るものじゃないの?本当にダメだね。」と言われたり、印刷会社から新聞を受け取って、テーブルに置く際にも、「お客様に届ける新聞なんだから、無造作に置かずに、丁寧に扱うんじゃないの?本当にダメだね。」と八木に言われた。「~じゃないの?本当にダメだね。」は、俺のトラウマであった。
そして、気づくとアラームの音で目が覚めた。さっきまで見てたのは夢だった。まさか、夢の中で会いたくないやつに会うなんて、嫌な気分がした。しかし、よく考えてみると、無断欠勤した後に、会社に行った怒られるのはもちろんのこと、八木からも、夢の時のように見下される可能性が高い。かと言って会社に行かないのも、まずい。「会社に行くか行かないか・・・・」としばらく立ったまま考えたが、立ったままだと疲れるので、横になりながら考えた。しかし、次第に眠くなって寝てしまい、気づけばまた朝になっていた。