第3話 堕ちていく
俺は、初めて会社を無断欠勤した。
新聞配達の仕事は、早朝に行われる朝刊の配達と夕方に行われる夕刊の配達の2種類を行なって、1日の勤務が完了するのだ。そのため、厳密に言えば、まだ、会社を無断欠勤したわけではない。夕刊を配達する際の、会社の点呼までに来れば、大幅な遅刻には変わらないものの、欠席扱いにはならないのだ。今の時間は、朝の7時。夕刊を配達する際の点呼は、午後2時であるため、点呼には余裕で間に合う。
「だったら、午前中はゆっくりして、午後から行こう」と思ったが、いざ、午後の1時になり、出勤の準備をしようと思っても、なかなかやる気が出てこない。俺の中のサボりたいという気持ちが、仕事をサボったために、一気に吹き出し、それが体じゅうに巻き付き、まるで重りとなって体の動きを制限していったからだ。制限された体は、思うように動いて来れず、結局、点呼の時間である2時に、家を出ることすらできなかった。
その日俺は、1日中、布団の中にいた。不幸中の幸いなのかどうか定かではないが、会社からは電話がなかった。又、俺は、家族と一緒に住んでいるものの両親は、家業の林業で、家を出払っており、俺の無断欠勤には気づかなかった。両親は、午後の6時ごろに帰ってきて、母親が作ってくれたご飯を家族で食べて、そして寝た。