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短編-1

男女間の友情に関する命題についての考察

作者: ヒバマリツ



よくさ、オトコとオンナの間に友情は成立するのか? って話が出るだろ? これって、つまりソレだと思うんだよね。ダンジョの間に友情は成立すんのか、っていう。

オレは、まあアリじゃね? って思ってるけど。実際は、どうなんだろな?


オレは彼女が欲しーとか、オンナとヤリてーとか、そんなんよりダチとつるんで遊んでる方が楽しいってタイプだ。幼馴染みなんかには「ガキ」って言われたりするけど、でも事実は事実だし。実際、コーコーセーなんて立派なガキだろ? いーじゃんな、別に。


オレがつるむダチってのも、まあ、似たりよったりみたいな連中だ。

中には彼女持ちもいるけど、だからどーだって話でもない。たまーに彼女連れのヤツが一緒に連れて来たりして遊んだりすることもあるけど、そういう子ならいいかな、って思う。だって女って何か面倒くせーってイメージあるじゃん? そういうんがないなら、まあ、いいかな、って。

ま、オレだってそんな選り好み出来るようなご身分じゃねーんだけど。自分じゃブサ男でもキモ男でもない、顔も中身もフツーの男だと思ってっけど。こればっかりは自分じゃ判断出来ねーし。


で、オレのダチの中に絶賛片思い中のヤツがいる。

何でいきなり、って話だけど。まあ、こういうのって結構いきなり始まるもんなんだろ? だからいいよな、別に。


相手の女子は、オレらのクラスメートだ。特別可愛いってわけでもないし、すんごい美人ってわけでもない。まあ、フツー…よりは、ちょっとカワイイのかもな。あいつが惚れるくらいだから。

肩にかかるくらいの髪をガッツリ染めて、いつもキレイに巻いてある。化粧も、よく分かんねーけど、結構バッチリしてある方。なんつうの? 自分を可愛く見せる方法をよく知ってる、って感じ。顔自体はフツーなんだけど、見せ方が上手いんだろうな、って思う。

背は高くもないし、低くもない。まあ、あいつと並ぶと丁度いいんじゃね? ってくらいの印象。

あいつの身長はまあ、それなりだから、並ぶと彼女の頭のてっぺんが、あいつの口んとこに来るくらいになるんだよな。オレ的には、コレって結構いい感じな身長差だと思う。

あいつ自身の外見は、あー、オレと大差ない。つまり、フツーってことだ。ダチって立場の欲目で見れば、それなりにはカッコイイ、かもしれない。それだって、あくまで"それなり”って表現が入る時点でタカが知れてるよな? でもいいヤツだぜ? 頭だって悪くねーし。

けど、オレらの学校にはホンモノの王子がいるから、オレらみたいなモブはよっぽどのことがねーと存在すら忘れられる。引き立て役って意味では価値があんのかもしんねーけどな。まあ、アレと張り合おうなんて気、最初っからさらっさら持ったこともねーけど。


ホンモノの王子、って言うのは、まあ、言葉のアヤだ。いくらなんでもソコソコの偏差値しかないような、フツーの県立高校に、どこぞの国の王子サマが入学するワケなんてねーし。

でも、ヤツのあだ名は本気で王子だ。顔が良くって頭も良くって、運動も出来て、家は金持ち。あ、背も高い。女子が話してんのが聞こえただけだけど。180オーバーっつってたか。デケェと思ってたけど、マジでデケェな。で、あだ名が王子。ある意味、存在自体がネタだよな。王子には王子なりの苦労とかあんのかもしんねーけど、ハタで見てるぶんにはぶっちゃけ、ウケる。


で、ダチが片思いしてる相手の子は、その王子にこれまた絶賛片思い中だ。


言ってるだけで背中がかゆくなるな、この状況。

うん、でもまあ、事実だ。ま、この学校の女子の半分は王子に片思いしてるっつっても大袈裟じゃねーんだし、よくある話だよな、これも。


そんで、あいつは王子に片思いして頑張る彼女をずっと側で応援してた。オレに言わせりゃ、アホか、って話だ。何で好きな女と別の男との仲を応援なんかしてんだよ、って。誰でも思うだろ?

しかも相手が王子だぜ? 倍率がおっそろしいことになってんのなんか、考えなくたって分かんだろ。

その子がさ、すっげー可愛いとかムチャクチャ美人とか、王子のコーショーな話についてけてメチャクチャ話が合う、ていうのだったら、まあ、少しは勝ち目があるのかもしんねーよ? 王子の女の趣味がどんなんだか知らねーけど。

でも、あの子はダメだなって、オレだって分かる。


あの子と話すとそれほど遊んでるってわけじゃない、ってすぐ分かる。でも、外見がハデだから、やっぱり知らねーやつはそういう目で見ると思う。そんで、オレらと王子の接点なんてないも同然。で、もっと言うなら王子は割とカタブツっつーか、マジメくんだ。

な? 結果なんか見えてんだろ? 倍率うんぬん以前に、あの子は王子には合わねー。あー、この場合は逆だな。

あの子に王子は合わねー。


彼女とダチは、横で見てても仲がいい。フツーに友達だ。だから、彼女とオレもフツーによく喋る。オレとダチがダベってるとこに彼女が来て、そのままダベり続けて休み時間が終わる、てのも割とよくある。

自慢じゃねーけど、オレは女子と喋るのが苦手だ。ちょっとしたことですぐギャーギャー騒ぐし、よく分かんねー話ばっかしてくるし。

でも、彼女とはフツーに喋れる。てか、フツーに楽しい。ヤローと喋ってんのと、あんま変わらない、っつうくらいには楽しい。バカな話とか割ときわどい話にまでフツーについてくるしな。気ィ遣わなくていいってのはラクでいい。


で、気づいたことがある。


あの子がさ、小テストの結果が悪かったーとか、王子と話すチャンスがあったのに上手く喋れなかったーとか、愚痴ってるとするだろ?

オレは大抵笑って済ますんだけど、ダチは、まあ、慰めてやったり励ましてやったりすんだよな。惚れた弱みっつーのか、いちいちご苦労な話だと思うけどさ。んで、あいつの話を聞いた後にさ、彼女がすっげー嬉しそうに笑うことがあんだよな。

ちょっと顔を赤くしてさ、そんで、あー嬉しいんだなぁ、って思うくらい、嬉しそうにニコーってすんの。

その顔見たらさ、確かに可愛いな、って思えた。あいつがこの子好きになんのも分かるなー、って。自分の言ったことでさ、あんなに喜んでもらえたら、そりゃ確かにトクベツになるよな。それが、一度きりってわけじゃなけりゃ、尚更だろ?


で、さ。もーいっこ、気づいた。


この子がそういう顔すんのって、あいつ限定なんだ。似たようなことを、あの子の女子の友達とか、例えばオレが言ったって、そんな顔にはならない。それってさ、あいつに原因があるってことだろ?

あいつの言ったこと、でもいいし、あいつのせい、でもいい。どっちにしろ、彼女がそんな顔になんのは、あいつにだけ、ってことだ。


それって、つまり――そういうことだよな?


オレとしては、友情だって恋愛だってどっちだって構わねーんだ。そんなん、別に大した差じゃねーって気もするし。

だけどさ、ダチが幸せになってくれんなら、そりゃ、そっちの方がイイに決まってる。だから、ちょーっと期待してるんだよな。これからの展開に。


あの子があいつに落ちてくれんなら。

オレは大喜びで歓迎するぜ?







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