表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

螺旋階段

作者: ま〜ち
掲載日:2026/08/20

 実家にある螺旋階段。


 そこで小さい頃、深夜に鬼を見たんです。


 しかも、真っ赤な。


 誰もが嘘だと言うに決まっている、そう思って胸の奥にしまって話してきませんでした。

 でも、表に出そうと思ったのは理由がありました。


 今でも夜の階段が怖く、それを克服したい、ということ。

 いつまでも過去の事に縛られたくないという思い。

 良かったら書くことで浄化されないかという考え。


 この三つ。

 

 少しずつ私が見たことを綴っていこうと思います。


 我が家に螺旋階段があります。

 その螺旋階段を支えている一本の柱がありました。

 そこには、私と姉の身長が、名前と測った月日と一緒に黒いサインペンで書かれています。

 私は、その家で18年間暮らしていました。


 あれは、小学校に上がる前の春。


 螺旋階段をのぼりきった左側に私たち家族が寝る寝室があるんです。

 

 その寝室から螺旋階段を見れる引違い戸があって、よく両親が上がってくる姿を覗いてました。毎晩のように。


 私たち家族が、いつものように川の字のようになって寝ていた時。


 螺旋階段を登ってくる音がしました。


 階段部分が木製だったせいでよく軋む音がする螺旋階段で、最初はうちの両親が上がってきたのだと思ったんです。


 ギシ……ギシ……って。


 でも、常夜灯が照らす薄暗い部屋の中で両親を確認すると寝ていたんです。


 じゃあ、誰?


 そう思い、最初は隣に寝ていた母を起こしました。

 

 「ねえ、お母さん」って遠慮がちに母を揺らしながら声をかけたんです。


 そうすると、母は目をパッと開き、私を見たんです。


 その瞬間。


 階段の音が止みました。


 母は「どうしたの?」と聞いてきたので、私は誰かが螺旋階段で上がってきていることを伝えたんです。


 私にそう言われた母は恐る恐る障子の引違い戸を少し開けて見てくれたんです。


 私も母の後ろから一緒に見たんですが……。


 そこには、誰もいなかったんです。


 ただ、ただ、暗い空間が見えるだけでした。


 「寝ぼけてた? 怖い夢みた?」

 その夜、母は私の手を握りながら寝てくれました。

 

 その日は、それで終わりました。


 ですが、その後、週に一回もしくは二回ぐらいの頻度で、私は深夜に目が覚めるようになったんです。


 その都度、決まって音が聞こえるんです。


 螺旋階段を上がってくる音が。


 最初の方は、両親を起こしていました。

 誰かいる。

 怖い。

 でも、それが二週間も続くとですね。

 さすがに、慣れてきたんです。


 それである日、私、思ったんです。


 誰も起こさずに見てみようって。

 

 それは、早く寝なさいと言われても寝なかった日。

 映画がテレビでやっていて、それを観ていたので金曜日か土曜日だったと思います。


 母に急かされながら寝た日。

 

 私はまた、深夜に目が覚めたんです。

 そして、階段を上がってくる音がゆっくり家に響きました。

 まるで、誰かを起こさないように。だけども一歩一歩、確実に上がるかのように。


 起きた時、あーまたか、と幼いながら、そう思ったんです。

 それで、また母を起こそうと思って手を伸ばしたんですが、手を止めて、ふと考えたんです。

 誰かを起こして、音が止むのなら、私一人で見たらどうなるの?って。


 だから、私、家族を起こさないように窓側に移動して、静かに引違い戸を少し開けてみたんです。


 そこから見えるのは暗闇の中にある螺旋階段でした。


 最初は。


 そして、足が見えたんです。

 誰かが上ってきてました。


 素足でした。それは良いんですが。ただ……。


 なんか赤っぽいんです。


 暗闇でも分かる赤。

 まるで。


 血のよう。


 それが、ゆっくりと一歩ずつ、上ってくるんです。

 木の軋む音と一緒に。


 そして、螺旋階段を支えている支柱の向こうから、その足音の主が見えたんです。


 真っ赤な人。


 最初は、そう思ったんです。

 でも、口から獣の様に鋭い歯が生えてて。

 そして、顔が。


 すっごく怒っているんです。

 目が大きく開いていて、血走っているように思いました。

 誰かが憎くて憎くてしょうがない。

 そんな顔に見えました。

 

 それを見た瞬間。

 体中、鳥肌が立ちました。

 悪意。しかもとてつもない。

 

 震えながら泣きそうになりつつも 急いで、布団を頭からかぶって心から願ったんです。


 神様、助けて。


 本当に強く、願いました。

 今、思えば隣にいた両親を起こせば良かったのだと思うんですけど、その時の私はそんな余裕ありませんでした。


 そして、足音が寝室の横まで来て、ピタッと止まったんです。


 音は止まったんですが……。

 なんかいる気配だけはしてました。


 もう一度、確認する勇気はありませんでした。


 そのまま、震えながら布団の中にくるまっていました。

 そして、父が起きてくるまで眠れませんでした。


 その日、そんな話を家族にすることも出来ず。


 月日が経ちいつの間にか、そのことを気にせずに過ごすようになり、私が小学生になった時です。


 寝室の隣に、両親の書斎があるんです。


 一階のリビングに一人でいた時。


 たまに、その書斎から足音が聞こえるんです。

 家には私、一人しかいないのに。


 今でも、その足音はしますが……もしかしたら、と思うんです。


 でも、私は確認することは出来ていません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ