第8話 告白の答え。
<カクヨムでも連載中>
血族らしいです。
今日ばっかりは人の目を気にして家に帰った……割と朝の行きの通学路の男女の反応の差がトラウマになりかけてるかも。
帰りの通学路はシールド薬のおかげで今朝と違ってなんともないけどね! むしろいつもよりも挙動不審な私が出来上がってそれはそれで変な目で見られたかもしれないけどね!
……え? さっきの告白イベント的なのはどうなったのかって?
それはまぁその……断りましたよ?
いや、だって急だし! 私からしたら顔だけなら知ってる気がするけど名前も知らないような後輩っ子だし!?
今までちゃんとした会話をした記憶もない相手から愛の告白・それも結婚を前提に・あと色々重そうな付随要素的な言葉があったら嬉しさとかよりも困惑寄りの驚愕が先に来ちゃうよ!
確かにこの世界で悪意を持って告白なんて出来ないことは分かってるし、何か思惑があっての告白であっても私を害するものじゃないことは分かってる。
実際にその子も本気で告白してくれたのは……なんとなく分かるわけで、まぁ勘でしかないけど。
それでも、私は百合を眺めていたい勢であって百合相手だったり百合に挟まるようなことは不本意であって──ようは誰かと付き合ったり結婚することは全然考えていなくて!
例えば友人の好きな女性との幸せな結婚式を友人・同僚席から微笑ましく見ていたい……的な、今は関係なかった。
ともかく、私はその子にズバっと言ってやったんだ!
『えっと……お友達からお願いします?』
ムリとは言えなかった!?
私側からキッパリ振るとか何様だよって話だし、それならちゃんと友達付き合いしてから私を諦めてくれた方が色々納得もしてくれるはずだという結論に至ったわけですよ。
……友達として長い付き合いするのは大歓迎だよ? むしろそっちの方が嬉しいよね!
『よく考えたら先輩を恋人にするのはナシでしたけど、私とは一生友達でいましょうね先輩!』とかの方が嬉しいやつ、友達の私以外とちゃんと恋人を作るんだよ……。
でも今回の私の言葉は単なる先延ばしでしかなく、ぬか喜びさせるだけなのかもしれない。
それでも後輩っ子は『…………友達? わかりましたっ! 友達”から”ですね。よろしくお願いします下十条先輩!』最初こそ困惑してくれたけど、納得 (?) してくれた。
それからは『じゃあ連絡先教えてくれる?』と私が勇気を出して『はいっ、じゃあこれで……やった! 先輩の連絡先っ!』と飛び跳ねる後輩っ子、かわいいなこの子。
そこで私は初めて彼女の名前を知る…………やっぱり名前に身に覚えも聞き覚えもなかったですね。
『これからよろしくお願いしますね。ユリ先輩っ!』
おおうっ、名前先輩呼びで距離を詰めてきた……。
こう、やっぱり苗字じゃなくて私の名前で呼んでくると私が相手なんだなぁって改めてドキっとしちゃうよね。
宮浦ミヤコ、一歳年下で高校一年生のツインテ―ル小柄女子と私は友達になった。
末永い友達付き合いをしたいものだ…………と回想している内に家に着いた。
「ただいまー」
自前のカギで自宅の玄関扉を開けて家に入っていく。
「おかえりなさい~」「おかえり」
すると玄関には私の両親が待っていた。
異能対策課から連絡が行っているということで、今日の朝の顛末も聞かされているのかな。
「嫌な目に遭わなかった?」「大丈夫かい?」
そう両親は心配してくれる。
嫌な目……ってほどではないのかな──嫌そうな目では見られたけど。
何か色々あった気がするけど私にあてられた人の中でケガ人も治療済み・後遺症もなく・認識改変とかで忘れてくれたのだというから、私の中でも過去のことになった。
むしろ放課後の告白騒動がなかなかに疲れたというか、軟着陸 (先延ばし) 出来て良かったとは思うけど……。
「大丈夫大丈夫、それよりも私のことお母さんたちは聞いたんだよね……?」
私の女性に対する”催淫”と男性に対する”嫌悪”の異能はサキュバスのものらしい。
でもよく考えると男性から”嫌悪”を引き出す? この異能って、悪意を持てないはずのこの世界では珍しいような。
”悪意を持った行動”をするのはダメであって、嫌悪からのそれが表情に出てしまう”だけ”なら関係ないのかな?
うーん、その内聞いてみるのもアリかもしれない。
「お姉ちゃんもまだ帰ってきてないし、落ち着いてお話しましょうか。着替えてくる?」
「このままでいいかな、カバンは部屋に置いてくる」
「その間にお茶を入れておこう」
こうして私と両親とでの三人での家族会議が開かれることになった。
居間に向き合う私と両親、私の対面に両親が並んで座っている形だ。
私としては聞きたいことがあって。
「二人は知ってたの? その……私がサキュバス種だって。いや、責めるとかじゃなくてね! 今さっき知ったのかどうかとかを聞きたくて……」
私は生まれてから自分がヒト種もとい人間だと思っていた・思い込んでいた。
普通に人間と同じ生活をしているはずで、食べ物も生活様式もテレビやマンガなどで見る一般家庭と変わらない。
サキュバスのサの字も出てきてないし、サキュバスらしい生活の片鱗もこの家庭で見たことはなかったんだ。
だから私が人間なの? と聞く発想すらなく、別の種族であるという考えにも至らなかったわけで。
「んー、正確には違うのよね」「そうだね」
まさかの否定……じゃあサキュバスじゃないの私!?
でも尾久さんはサキュバスの異能だって…………よく考えたらサキュバス”種”とは一言も言ってなかった気がする。
私がサキュバス種について聞いて、あくまで私にサキュバスにみられる異能が出ていたことを説明してくれただけで。
ということは……私ってなに?
「どゆこと?」
「私の先祖にサキュバス種が居たのは本当よ。でもその先祖の時点で人間と番になって、その子孫はサキュバスハーフになったの」
サキュバスハーフ……文字通り捉えるならサキュバスと人間のハーフってことになるよね。
というかさらっとお母さん……リン母さんの先祖にサキュバス種がいて・私にそのサキュバスの血が流れているということは……リン母さんもサキュバスハーフ!?
「サキュバスの血が流れているのは本当だったんだ……」
「もちろんその後はサキュバスハーフと人間の間で子供が産まれるから、どんどん血は薄くなっていったはずなのよ」
なるほどなるほど、少なくとも私の両親にサキュバス感がないのはそういうことなのかもしれない。
……サキュバス感ってなに、って話ではあるんだけど。
「だからユリは隔世遺伝あたりでサキュバスの異能が発現したのかもしれないね」
「種族は調べればわかるけれど、異能が発現してもいないのにサキュバスハーフなことを知らせてユリを困らせたくなかったの。ごめんなさい」
「秘密にするような形になって申し訳ない。ただ言い訳になってしまうけどリンも義母さんもサキュバスの異能が発現しなかったからユリも関係ないと思いこんでいたんだ」
下十条リン、私と同じく栗色のくせっ毛な髪質でおっとりとした女性、今も若々しいので私と姉妹に間違われることがある。
そんな私のお母さんで──私を産んだ人、そして私と同じサキュバスハーフらしい。




