第3話 クラスの百合を眺めて・友達の恋バナを聞いているだけですが?
『もう! 昨日会いたかったのにさ!』
『ごめんなさい、どうしても用事が──』
教室内で平然とクラスメイト女子がいちゃついている、高坂さんと霧島さんで、片方が長身系で片方が小っちゃめなので身長差が尊い。
そしてクラスメイトの大半は女子同士の友人的いちゃいつきに見えるかもしれないが、私は二人お揃いのペアリングをして同じシリーズの髪留めをしているのを見逃さなかった。
どこまで行ってるんだろう……手つなぎは、今恋人繋ぎしてるぅ! たまんなぁ! じゃなくて、キスもしてたりする? してそうだな。うん、ごちそうさまです。
それ以降も……この想像は教室でするものじゃないな! うん、家に帰ってから妄想しよう、そうしよう!
『モフモフしてますなー』
『ちょっと、整えたばっかりー』
更に視点を動かせばクラスメイトの女子と女子がいちゃついている──片方は赤みがかった黒髪に碧眼が印象的な人間種女子の犬養さんと白の混じった栗色の毛並みに頭から三角のケモミミの生えた亜人種と人間種ハーフの獣人女子の芝さんが。
ガチなケモナー的には物足りないとある識者は語る、少々初心者向けとも言うべき頭から耳が生えて、手から肘あたりまで体毛が生えていて、丸くカールした尻尾が尾てい骨あたりから出ていて、もちろん制服・スカートも対応している。
それ以外が人間に近しい身体的特徴で、遺伝子的には人間要素が濃く出ているのかもしれない。
そんな髪と耳の境目をモフモフナデナデしている……すこしくすぐったそうにするケモ女子と美少女の百合、とてもよろしいです!
「むふふ」
正直女の子なら誰でもいいので年の差OK種族も見た目がヒトに近しいならOK、たぶん自分が分身して自分の分身セカンドとイチャイチャしてても楽しめると思う。
自分が当事者にならなければいいのだ、私のコピーであっても。
「おはよー」
「おはよ」
昔の価値観なら異性を好きになるのが普通だったかもしれないし、今でも多数派には違いないと思う。
ただ私は男子を好きになれなかった……嫌いとか生理的に無理とかではなく、単純に私たちとは別の生命体だと思っていて、人が花を愛らしいとも好ましいと思っても”恋愛”をしないのと一緒で──
うーん……でもそれは古い価値観なのかな? どちらかというと私の好き嫌いなだけなのかな。
だって──
「ねー、ユリユリ。はい、私の彼氏!」
「おー」
ユリユリ。
休み時間にこっち側に顔を向けて座ってきて話す彼女からの私の愛称で、ちょっと可愛いので私も気に入っていた。
そんな私の幼馴染の蒲田ミドリはスマホの画面に写っている彼氏 (?) と付き合っているらしい。
「ちょっと綿毛が出てきてねー」
「そうなんだ」
写真そのままの意味でミドリが語ることの通りなら、ミドリが付き合っているのは──
「ポポクン、かわいいよ~」
「…………」
キク科タンポポ属の多年草、黄色い花を咲かせのちに綿毛となって旅立つ野草……ミドリの今の彼氏らしい。
中学校の卒業する頃はツバキと付き合っていた、ツバキ科ツバキ属の常緑樹。
その前はカエデだったような……小学校の頃から季節ごとに彼氏・彼女が変わる子だった。
なのでさっき花に恋しないというのは、正確には私に限ってであって……ちょっと訂正、それを否定するわけじゃない。
「ポポくんね! 昨日ね! ミドリと一緒にいると楽しいね、って言ってくれたの。で、私もポポくんと一緒だと幸せなの~って! 」
「お熱いねぇ」
「今度一緒にデートしに行くんだ! 森林公園を歩くだけなんだけどね!」
「よかったじゃん」
「よかったの!」
そんな彼女の惚気に相槌を打つ、ミドリと私は長い付き合いで幼稚園からの幼馴染。
その頃からミドリは植物が好きだったけど一つの植物を一対一に恋愛的な方面で愛し始めたのは小学二年生頃から、キク科ヒマワリが最初の彼氏だったらしい。
『私、ひまくん (ミドリが通学中の花屋で出会ったひまわり) のこと好きかもしれない!!』
ミドリはその植物の種類を好いているわけではなく、植物のたった一輪・一株・一本に恋をする。
昔は出来なかったそうだけど、今は植物相手でも意思疎通が出来て本当にミドリは相手の植物と”同意のもと”交際している。
「今度紹介するね!」
「うん」
私はミドリのように植物を愛せないけど、ミドリの価値観や恋愛観を言葉で否定しないしミドリも私の考えをある程度察していてもその考えを否定されたことはない。
私でも自分の趣向にあう大前提としても花を見て可愛いと思う感性はある──恋愛感情こそ持たないだけで。
私は女の子が仲良くしているのを見るのが好きだけどミドリはそういうのじゃなくて、友達として仲良くやっている。
きっとずっとこの関係が続いていくのだろう、というかそうだといいなと思う。
「そういえばギンコに聞いたけど、ギンコは扇風機のろくくんと付き合い長いよねー」
「お、続いてるなぁ」
私のもう一人の幼馴染、季夏ギンコは小学校卒業時に出会った古い扇風機に一目惚れ、今も交際は続いている。
扇風機のろくくんと私たちは呼んでいるが、正確には形式名と製造番号が名前でギンコは愛称で呼んだりフルネームで呼んだりしているらしい、たしかEF-6U……なんだっけ。
昔は無理だったという無機物的機械とも人間はコミュニケーションが取れるようになった、そして”お互いの同意さえあれば”交際も結婚も出来る、そういう世の中だった。
人間同士の交際・結婚は変わらずあるけれど、動物や植物や機械との交際・結婚も今は普通に見かけるようになった。
「というか……出来ちゃったみたいだって」
「えっ!? ほんと!?」
正直仕組みはわからないけど──人間と機械の間に子供が出来る。
そして子供を産む (?) のは扇風機のろくくんの方、あと数か月もすればギンコの遺伝子を継承した扇風機くんの子供ミニ扇風機くんが誕生するとのこと。
次は私がろくくんとの子供を産むとギンコは意気込んでいるらしい、仕組みはやっぱりよくわからない。
「私も子供……憧れるなぁ」
もちろん今の科学・医療技術なら植物との間に子をなすことも可能、ただミドリは憧れてこそいるけどそうすることはないのだろうと思う。
彼女は季節ごとに付き合う相手を変える、それは植物の開花と落花や寿命もあるが、だいたいは相手を尊重してのこと。
ミドリの恋は離別か死別で終わる、それでも別れる直前まで愛し合うのだという。
そんなことをいつか話してくれたが、別れた時は話題に出なかった時だと私は察している。
それについて追及もしないし、話してくれるなら聞くつもりだけど。
「ところで……ユリユリはどうなの~?」
「え~、今のところ予定もないよ」
そりゃ憧れの人はいるけど、好きかどうかでいうと……?
既に預けているバンクに許可さえすれば私の子供は私の目にしないところで人工的に産まれて育っていく、この国に対する義務は果たせるので問題ない。
現代においての出生は極端に言えば精子と卵子さえあれば機械でなんとかなる、ヒト同士で子をなそうとするのは当人らの感情を尊重してのことであって強制ではないのだ。
だから私が生涯独身で暮らしたとしても咎められることはない……まぁ両親はは残念に思うかもしれないけど。
私と付き合う、ねぇ……それで結婚、とかねぇ……想像出来ないかなぁ今は。
「だ、だよね~」
私がいつものように予定もない相手もいないと返すとミドリのほっとする表情をするはなんなんだろう?
やっぱり幼馴染の恋路は気になるし、悪い相手に引っかからないか警戒もするのかもしれない──私の事を心配してくれるなんて、いい友人を持ったなぁ。
<カクヨムでも連載中>
趣味・趣向・性癖は千差万別で、この世界ではそれが許されているそうな。




