第七章 嫌われ作戦、本格化と本格的失敗
2年次にあがっても評判が上がり続ける現状を打破するべく、私は嫌われ作戦を本格化させた。
昼休み。
殿下が中庭で私に話しかけてきた。春の陽気の中で白い花壇が満開になっており、殿下は正午の光の中に立っていた。金色の髪が輝き、碧色の瞳が青空と同じ色をしている。花の白さと殿下の金髪が重なって、また目が痛い。
今日の私はクリーム色のブラウスに淡い茶色のスカートという格好だ。アルテア様の指導のおかげで、立ち居振る舞いも随分変わってきたとエルに言われている。
「リーナ、一緒に食事はどうだ?」
「殿下、一ついいですか」
「なんだ?」
「殿下のことが、苦手です」
言った。はっきり言った。周囲が静まり返った。
「……苦手、というのは」
「キラキラしすぎていて、直視できないんです。この世のものとは思えないくらい眩しくて、近くにいると目が痛いです」
殿下がゆっくりと目を瞬いた。そして——くっと喉の奥で笑った。
「……目が痛い、か。初めて言われたな」
「あの、怒らないんですか」
「怒る理由が見当たらない。むしろ、みんな遠慮して言えないことをはっきり言ってくれる子は珍しい。好感が持てる」
「…………」
なぜ。なぜそういう解釈になるんだ。
「これからも思ったことを正直に言ってくれ。嬉しい」
作戦、また失敗した。
その後、取り巻き筆頭のフェリクスに呼び止められた。茶色の髪をきっちりと整えた、真面目そうな伯爵令息だ。取り巻きの皆さんへは礼節を保っているため、これまでも何事もなく過ごせている。
「リーナ嬢、少しよいか」
「なんでしょう」
「殿下が最近あなたのことばかり話しているんだが」
「困ります」
「俺もそう思う。で、殿下は今日の件を聞いて何と言ったと思う?」
「……何と」
「『リーナは本当に正直で面白い、もっと話したい』と言っていた」
「…………」
「お前みたいな奴、本当に初めて見た」
「それは褒めてないですよね」
「褒めてない」




