表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/20

第五章 令嬢への道

アルテア様の指導というのは、本物だった。


最初は礼儀作法だけのつもりだったが、気づけば魔法の制御方法、貴族社会の歴史と構造、外交における言葉の選び方、聖女としての立ち居振る舞いまで、指導の範囲が自然と広がっていた。


推しが教えてくれる…恥ずかしい思いはしたくない、と必死についていったが、そもそも、私にはどうやらこの世界が向いていたらしい。

前世で培った知識の蓄積と整理能力が噛み合った。

アルテア様の説明は要点が明確で無駄がない。それを聞いて、前世の知識と結びつけて、体系的にまとめていく。気づけば授業の理解速度が上がり、実技の習熟度も伸びていた。


「リーナ、先週の魔法制御の試験結果が出たわよ」

「はい」


「……首席だったわ」


「え」


「あなたが首席。私を抜いて」


アルテア様が複雑な顔をしていた。誇らしいような、悔しいような、不思議な表情だ。


「す、すみません……」

「謝らなくていい。実力よ」

「でもアルテア様を抜くつもりは——」

「うるさい。次は私が首席を取り返すから覚悟しなさい」

「はい……」


競争相手として認識された。

それはそれで推し活として新しい展開だと思いながら、私は密かに嬉しかった。だって、アルテア様が私の努力を認めてくれたってことだから!


学業だけではなかった。聖女としての活動でも、成果が積み上がっていった。


王都近郊の村で流行り病が発生したとき、私は単独で出向いて治癒魔法を施した。


村への道は未舗装で、馬車が揺れるたびに両側の木々がざわめいた。村に着いたとき、石造りの家々の窓から子どもたちが不安そうに覗いていた。

私は白いエプロンをつけ、治癒用の魔法陣を展開した。

薄紫の光が患者の体を包み、病が退いていく。

患者三十名を完治させ、予防のための魔法陣を村全体に展開した。


帰り際、村長が「神さま…」と言って泣いていた。大袈裟だけど、聖女の力ってほんとすごいよね。アルテア様のおかげで、本来の物語の聖女より、力が広がっている気がする。

これが新聞に取り上げられ、「聖女の奮闘」として王都中に知れ渡った。


次は国境近くの難民キャンプでの支援活動。

夜の野営地に着いたとき、焚き火の光の中で子どもたちの顔が浮かび上がった。その目に怯えと希望が混じっているのを見て、私は一晩かけて全員の傷と病を治した。


その次は孤児院の子どもたちへの定期訪問。

白い壁の孤児院の廊下に、子どもたちの描いた絵が貼られていた。私を描いたと思われる絵には「せいじょさま」とピンクの髪の人物が描いてあった。


聖女としての仕事を積み重ねるうちに、私の名前は学園の外にまで広まっていった。


「リーナ様、今日も陳情が届いています」

「何件?」

「十七件です」

「……多いな」

「聖女としての功績、学業の成績、礼儀作法。王太子妃に最も相応しいとの声が高まっています」


「最悪だ」


「リーナ様、独り言」

「わかってる」


評判が上がるほど、シナリオのレールに近づいていく。嫌われ作戦が完全に裏目に出ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ