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第二章 クロード殿下という難題

まず敵を知らなければならない。


クロード・フォン・アルドレア第一王子殿下。

年齢十八歳。陽光を凝縮したような金色の髪に、晴れた空を閉じ込めたような碧色の瞳。すっと通った鼻梁、形のよい口元、肩幅の広い均整のとれた体躯。

学園の制服——紺色のジャケットに金のボタン、白いシャツという標準的な装いのはずなのに、身につけると別の衣装に見える。顔面偏差値は人類の限界を超えており、笑うと周囲の女子生徒が一斉に赤くなる。


「キラキラしすぎている」


私は食堂の隅から殿下を観察しながら呟いた。

食堂は天井が高く、アーチ型の窓から午後の光が白く差し込んでいる。石床に長机が規則正しく並び、生徒たちの話し声とカトラリーの音が混ざり合う中で、殿下はその景色に溶け込みながらも際立っていた。なんだあの人は。光ってる。物理的に光ってる気がする。


「この世のものとは思えない」

「リーナ様、殿下のことをじっと見ていらっしゃいますが」

「観察よ。戦略的観察」


今日の私は学園の制服——白いブラウスに薄いクリーム色のジャケット、くるぶし丈のスカートという一般的な学生の格好だ。特別でも何でもない。平民聖女らしい目立たない装いだと思っていたのだが、エルに「リーナ様は何を着ても可愛らしいですね」と言われた。社交辞令だろうか。


作戦その一。無礼を働く。


その日の午後、石造りの廊下で殿下とすれ違った。細長い窓から光が差し込み、石床に縞模様の影を作っていた。私は立ち止まらず、会釈だけして通り過ぎた。王族に対して不敬である。


「リーナ」


すぐに呼び止められた。


「……はい」

「急いでいるのか?」

「少し」

「そうか。引き止めて悪かった。気をつけて」


微笑まれた。碧色の目が優しく細くなった。眩しい。目が痛い。


「……」


怒らない。なぜ怒らない!

作戦その一、失敗。


翌日、作戦その二。返事を素っ気なくする。


「リーナ、今日の魔法学の授業はどうだった?」

「別に」

「難しそうにしていたから、何かわからないことがあれば教えると言いたかったんだが」

「けっこうです」

「遠慮しなくていいんだが」


また微笑まれた。光っている…


「…………」


その夜、私はベッドの上で天井を見つめた。

問題は殿下の解釈だ。私が無礼を働いても素っ気なくしても、殿下は好意的に解釈してしまう。


「もっと強硬な手段が必要ね!」

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