配下希望者
勇者の襲来から数日が経った。
「魔王様ー! 魔王様の配下にしてくださいっスー!」
外から大きな声が聞こえる。
「また、ですか」
「魔王様ぁ。また新しい奴が来たぜぇ。どうする? 追い返すか?」
城の前に立って大きな声を出している女性の方を指さしてレオが言う。
勇者を退けてから数日。その噂が広まったのか、配下希望者が来る。これで二人目だ。
ちょっとだけ観察してみる。一人目がとんでもない奴だったから。
そう、あれは二日前のこと。配下希望だと言うから仲間に加えようとした奴がいたんだが、ステータスが上がらなかった。そしてそいつは、夜中に俺を殺しに来た。ステータスが上がらなかったので一応警戒していたからいいものの、同じ事が起きるかもと思うと、ちょっとだけめんどくさい。ちなみに2人がボコボコにした。
スキルの性質上、仲間を増やさないといけないから、
「とりあえず、話聞こうか」
「ウチ、ナモと申しまっス! よろしくお願いするっス!」
来たのは、身長が140cm後半くらい。赤髪でショートヘアのちょっと幼めな可愛らしい女の子だった。
声がとてつもなく大きかったから、もっと体格のいい人物を想像してた。
あまり強そうには見えないし……ちょっと若すぎるか?
「えーと、年齢とステータス、あと配下になりたい理由を聞いてもいいかな?」
「うっス! 歳は18歳! レベル27! 攻撃力が83で魔力が20! MPが15っス!」
確か、この世界の成人年齢は15歳ってリオサから聞いたような気がする。年齢は合格。ステータスもかなりいいな。
「配下になりたい理由は、魔王様が勇者を殺せたのに殺さないで解放したって噂を聞いたからっス! その優しさに惚れたっス!」
やっぱり噂が流れてるんだ。早いなまだ数日しか経ってないのに。しかも『優しさ』って……
「あと、称号は無くて【怪力】というスキルを持ってるっス!」
ほうほう。【怪力】のスキルね……って、
「スキル持ちなの!?」
初めて自分以外のスキル持ちを見た。この前の奴隷市場の奴隷もあんなにいたのに誰もスキルを持ってなかったんだよな。
「っス! スキル持ちっス!」
「【怪力】はどういうスキルなんですか?」
リオサが問う。
「【怪力】は重たい物が持てるっス!」
……
以上?なのか?
「どのくらい重たい物が持てるのですか?」
「ここじゃちょっと出しづらいっス! 外で見せてもいいっスか?」
「分かった。外に行こう」
「それじゃ皆さん離れてて下さいっスー!」
かなり離れた所にナモが立っている。
「いくっスよー!」
ナモがポケットから何かを出している。
「あれは……小せぇ、ハンマーか?」
レオが言う。
小さいハンマー何か取り出して何をするんだろう?
そんな事を思いながら見ていると、
「なんだありゃ!?」
ナモが手にしていた小さなハンマーが、みるみるうちに巨大化していく。見た感じ城を一発で壊せそうな大きさだ。やがてナモは、そのハンマーを振り回し始めた。凄まじい風が巻き起こる。
俺たち三人は手を顔の前に出す。
「もういいよ! ナモ!」
ナモは振り回すのを止めた。次第に風が収まっていく。そしてナモがハンマーを置くと、ドンッと砂ぼこりが舞った。
「どうっスかー!?」
これは文句なしの合格だ。スキル【怪力】はとんでもないな。
レオが置いてあるハンマーを持とうとする。
「くっそ重てぇ……ビクともしねぇわ」
「そりゃそうっスよ! これはウチの【怪力】に合わせて作った特別製っス! そんじょそこらの奴には持てないっスよ!」」
「それでウチは合格っスか!?」
「もちろん。合格だよ」
「やったーっス!」
ぴょんぴょんと飛んで喜ぶナモ。
なんだこのキュートな生き物は……
「これでウチも魔王様の配下っスー!」
念のためステータスを確認してみる。
・レベル13 攻撃力5(+263)魔力3(+150)MP3(+335)
・称号【魔王】 スキル【友達の輪】【怪力】 種族【人間】
ステータスがきちんと上がってる。それに、スキル【怪力】が追加されている。
【友達の輪】の効果は数字の上昇だけじゃなかったのか。ステータスが上がってスキルを獲得なんてかなり美味しい。
「レオちょっといいかな?」
「ん? なんだ?」
【怪力】を持った俺ならナモと同じようにハンマーを扱えるはずだ。
「流石に魔王様でもこれは無理っスよ」
ふふっ、それはどうかな?
持ちあがるハンマー。
「そんな!? これは【怪力】持ちのウチしか持てないはずっスよ!?」
「まさか、魔王様……」
リオサがこっちを見ながら言う。
「そう。そのまさかだよ」
「どういう事っスか!?」
俺はナモにスキルの説明をした。
「凄いっス、魔王様! そんな激凄スキルを持ってるなんて!」
だろ?
「それじゃあ、配下を増やせばどんどん魔王様は強くなるって事スか!?」
「そういう事。だから配下希望者はウェルカムなんだよね」
「すげぇっス!!」
そんな事を話していると――
「魔王様。お客様です。」
リオサが話に割って入ってくる。
え?お客様?もしかして――
「また勇者!?」
「いいえ、違います。今回は勇者ではありません」
「来たぜ」
人が近づいてくる気配を感じてそちらを見る。
そこにはレオより少しだけ小柄な、爽やかな金髪の青年が立っていた。
「お初にお目にかかる、ガルトーヴァの魔王よ。私は隣国スーラから来た者。スーラの魔王、スーラリオだ」
魔王来ちゃった……




