赤いドラゴンと黒髪の女性
鳴き声の方に向かうと、大きな赤いドラゴン。それと、綺麗な黒髪ロングの女性がいた。
女の人が襲われてる!?早く行って助けないと……!
俺は女性と赤いドラゴンの間に立って、ドラゴンを思い切り殴った。
「おらぁ!!」
ドラゴンが宙を舞う。
かっっった……!ドラゴンの鱗ってこんなに硬いのか!?城の床を殴ったときよりも、手がジンジンと痛い。これはちょっと倒すの大変かもな。【鑑定】スキルでレベルを確認してみるか。
レベル71 攻撃力246 魔力200 MP524
称号【】 スキル【】 種族【ドラゴン】
つっっっっっよ!!レベル高すぎじゃないか!?何とか【友達の輪】のおかげで俺のステータスの方が高いから、恐らく勝てる……けど、基礎ステータスが俺の何倍も高いし、こんなに強い生物は初めて見た。こんなのを討伐するAからSランクの冒険者ってかなり強いんじゃないか?ましてやソロ討伐の話があるくらい強いSランクって異常だろ……。
「このドラゴンは俺が足止めします! 今のうちに逃げてください!」
後ろにいる女性に向かって言う。ここでドラゴンを仮に倒せたとして、それを見られるのはマズい。俺は一応Sランクを目指してはいるけど、注目を浴びるような事はなるべく避けたい。ドラゴンソロ討伐出来る冒険者は、実際にいるかどうかもわからないらしいし、ここで倒すところは見られない方がいい。この女性が逃げるまでは、ドラゴンの攻撃を躱しながら戦うしかない。
「……」
ステータス的に魔法は間違いなく使えるだろう。赤いドラゴンだし、炎魔法でも使うのかな?魔物が魔法を使うところは見たこと無いけど、ドラゴンともなれば使うんだろうな。
ドラゴンが尻尾を使って薙ぎ払う。
図体がデカいせいか動き自体はそんなに早くない。躱すのは結構、楽そうだ。このまま逃げるまで時間稼ぐか。
「……」
ちょ……なんかあの人逃げないで、ずっっとこの戦いを見てるんですけど……何で逃げないんだ?死にたがり……?いや、それはないと思いたいけど……。
「あの! 逃げてください!」
「……」
全く動く気のない様子の女性。逃げるそぶりも見せず、ずっと戦闘を眺めている。
何してんだこの人!?早くどこか行ってくれよ!
「……」
もう無理だ。倒しちゃおう。当たり所が悪くて何か倒せた感じをだそう。
ドラゴンの炎のブレスを躱して、ドラゴンのお腹の下側に滑り込んだ。
お腹は柔らかいって何かで見た気がする。思いっきりぶん殴る!
「うらぁ!!」
ドラゴンが上方向に浮いた。俺のパンチがよほど痛かったのか、大きな声で鳴いているようだった。
「グルゥォォォォォ!!!!!!!」
ドラゴンは吹っ飛んだあと、地面に上手く着地できず横にズシンと思い切り倒れこんだ。
ごめんな、ドラゴン。とどめを刺させてもらう……!
ドラゴンの顔に向かって本気の拳を振り下ろした、その瞬間だった――
「はい! 終了ー!」
後ろから女性の声が聞こえてきたと同時に、目の前で倒れていたドラゴンが小さくなっていった。
「え!? え!? なに!?
ド、ド、ドラゴンが小さくなっちゃった……!しかも逃げないで後ろでずっと見てた女性の声が聞こえたと同時に……。
「あなた凄いね!」
え?この人は急に話し始めたけど、どうしたんだ?さっきまで黙ってみてたのに……。
「とても驚いているね。魔王……ユリウスさん……」
!?俺の名前を知っている……だと!?この人もしかして敵か!?
「あはは! 名前を知っている事に驚いてるみたいだね。今回の依頼、君を指名したのは私だよ」
え?この人が依頼人だったのか。
「そしてこっちがさっきのドラゴン」
女性が自分の肩を指さすと、ちょこんと小さなドラゴンが顔を出した。
さっきのドラゴンがこんなに小さくなった……のか?
「このドラゴンは私のペットで、名前はサク。サク、挨拶は?」
女性がそう言うと、「ピギャア!」と赤いミニドラゴンが鳴いた。
ドラゴンって小さくなれるんだ。
「それで……なんでこんなことを?」
つまりこれは、自作自演の依頼だったわけだ。自分のペットを使って依頼を作った。そして俺を指名して依頼を出したってことか。なんでそんな意味不明な事をしたんだろう?
「実力を見たかったんだよねー!」
女性は無邪気に笑いながら言う。
なんじゃそりゃ……。そこそこ歩いて、ここまで来てドラゴン討伐の依頼を達成出来そうだと思ったら、それは嘘だった……だぁ!?はあ……何かもう疲れちゃったよ……。
「ごめんごめん! そういえば名乗ってなかったね。私の名前はカリティア! よろしくね!」
子供……ではなさそうだ。喋り方はちょっとギャルみがある感じで、平均的な背丈、最初に見たときも思ったけど、綺麗な黒髪ロング。子供っぽさもあるが、謎の余裕を感じる。
無駄足だったな。さっさと帰ろう……。そんな事を考えていると後ろから声がした。
「安心してください、ユーリウス様。今回の依頼は達成です。ちゃんとランクポイントも依頼達成の報酬金もお渡ししますのでご安心を」
背後から声をかけてきたのは、ギルドマスターのシドウさんだった。




