冒険者ギルド③
「えぇーー!?」
ミルアさんが鑑定の水晶を見て驚いている。どうやらリオサのステータスを見て驚いたようだ。
「素晴らしい魔力量とMPです! リオサさん!」
リオサのステータスって高いんだ。そういえば、この世界の平均ステータス知らないな。【鑑定】のスキルを手に入れたんだし、色んな人のステータスを観察する日でも今度作ろうかな。
「少々お待ちください!」
ミルアさんはそう言うと、慌ててギルドの奥に行った。なんだろう?何か、変な所でもあったのか?リオサと目が合って2人で首を傾げる。リオサにも思い当たる事がないようだ。
ミルアさんが慌てて戻ってきた。慌てる様子のミルアさんも素敵です。
「はぁ……はぁ……。奥の部屋に来てください……ギルドマスターがお呼びです!」
ギルマスから呼ばれるなんて……もしかして、リオサは過去に悪い事でもやったのか……?俺たちは案内された部屋に行った。
「ミルアは席を外してください」
「は、はい……!」
部屋に入ると、青色の長髪で若い、とは言えないがおじさんでもない男の人がいた。年齢が分からない不思議な人だ。糸目で常にニコニコしている。
「どうぞ、おかけください」
言われた通り椅子に座る俺たち。ギルマスはお茶とお菓子も出してくれた。偏見は良くないな。この人は漫画やアニメだと、後に裏切る悪者顔だが、とてもいい人なのだろう。
「それで……お二人は何故冒険者に?」
何故って……冒険者になりたいから……それ以外の理由があるのか?
「普通に冒険者になりたいと思っただけなのですが……」
俺がそう言うと、
「お二人は強い。冒険者にならなくてもよいのでは?」
あぁー、確かに普通に考えれば変か。俺は異世界から来たから冒険者という王道の職に対して憧れがあるけれど、この世界で生まれた人間からすると強い人間は冒険者になる必要が……って、二人……?
「単刀直入に聞きましょう。何故『魔王』が冒険者を目指すのですか?」
魔王という単語を聞いて、俺の心臓が跳ねた。
ば、ば、ば、バレてる……!?俺が魔王だということが……!何でバレたんだ!?俺の【偽装】は完璧だったはず……鑑定の水晶を確認したときも、問題はなかった。何でだ……?
慌てた様子の俺を見て、ギルマスは笑っている。
「安心してください。ギルドカードはもうお渡ししたでしょう?コチラは分かっててお渡ししたのですよ」
分かってたのに渡した……だと!?そんなの変だ。犯罪者や魔王を通さないために鑑定の水晶を使っている。なのに、魔王である俺を通した。何か理由があるはずだ。
「どうして……?」
「それは……面白いからです。魔王が冒険者になるなんて、とても面白いでしょう?」
こいつ……変だ……!
もう1つ疑問がある。最初から分かっていたのなら、何故今呼び出したんだ?
「それは確信が持てなかったのですよ。あなたが本当の魔王かどうかが。でもリオサ様が来たので確信に変わりました」
ニコニコと不気味な笑顔で話すギルマス。こっわ。何で俺の考えていることがわかったんだ?心でも読めるのか?
「はい。読めますよ」
え!?この流れで本当に読めることなんてあるのか!?
「魔王ユリウス様は、とても面白い人ですね。情報通りのお人だ」
あはは、と笑うギルマス。心を読めるなんて……この人の前では変な事は考えられないな。
「冗談ですよ、冗談。人の心が読めるわけないじゃないですか」
あれ?俺馬鹿にされてる?じゃあ、なんで俺の考えている事に対して、返事をするように話すことが出来たんだ?
「魔王様。顔に出過ぎです。そして、こいつは嘘つきです。こいつは心も読めませんし、魔王様が魔王だということにも気付いていませんでした」
え!?まさか……鎌をかけたのか!?
「その通りでございます、リオサ様。申し訳ございません、魔王ユリウス様。ご無礼をお許しください」
笑顔で言うギルマス。本当に謝る気があるのか?と言いたいが、俺が間抜けなだけだった。
「私の言葉に驚いていたのを見て、魔王だと確信しました」
これからはポーカーフェイスを徹底しよう。
あっ、と何かを思い出した様子のギルマス。
「申し訳ございません。まだ名乗っていませんでしたね。私の名前はシドウと申します。よろしくお願いします」
ギルマスは名乗ると目を少しだけ開いてこっちを見た。
糸目で分からなかったが、赤い瞳をしていた。
「吸血族……ですか。珍しいですね」
リオサがそう言うと、シドウが頷いた。
「エルフ族もでは?吸血族とエルフ族は人前にあまり出ませんからね」
吸血族。そんな怖そうな種族があるのか。吸血鬼的な一族なのかな?そんな危ない人がギルマスって……
「吸血族って事は……もしかして人間の血を吸う感じですか?」
シドウは俺の言葉を聞いて、ちょっと驚いた顔をしたあと、いつもの顔に戻った。そして、回答はシドウからではなく、リオサからもらえた。
「魔王様。吸血族は人間の血は吸いません。魔物の血を吸って生きている種族です。人間の血を吸うことも勿論可能ですが、掟により禁止されています」
シドウが深く頷いている。
「よくご存じですね。流石エルフです」
さっきからシドウさんの言葉に、少しだけトゲを感じる。リオサもその度に眉毛をピクリと動かしている。もしかしたらエルフ族と吸血族は仲が悪いのかもしれない。
どうやら長い時間話していたらしく、外はいつの間に暗くなっていた。
「もう遅い時間ですし、聞きたい事も聞けたので帰っていただいて大丈夫ですよ」
シドウに帰っていいと言われた俺たちは、ミルアさんに挨拶してギルドをあとにした。
ギルドから出た瞬間にサリアが言った。
「魔王様。いえ、ユーリウス。帰ったら説教です」
どうやら俺には地獄の説教が待っているようです……。
魔王ユリウスが帰ったあと、私はそのまま部屋に残って考え事をしていた。
魔王ユリウスはとても面白い人でしたね。我々、吸血族が人間の血を吸うだなんて話、久しぶりに聞きました。吸血族は元々、人間の血は吸いません。ですが、『人間の血を吸ってはいけない』という掟があります。これは大昔、我々の祖先が始まりの勇者と共に行動をしていた時に、始まりの勇者に『人間の血を吸ってはいけない』という風に言われたのが始まりです。
不思議です、魔王ユリウスは始まりの勇者と同じように、我々が『人間の血を吸う種族』だと勘違いするなんて……。
「面白くなってきましたねぇ……」




