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【偽装】と【鑑定】

 扉をノックする音が聞こえた。


「魔王様。スーラリオ様が到着されました」

「わかった」


 スーラリオが来たらしい。来ることは事前にサリアから聞いていたため、準備はしていた。サリアに聞いたところによると、何か2人の女の子を連れてくるとかなんとか。スーラリオは客間で待っているらしいので、俺は急いで客間に向かった。

 客間の扉の前に着いた俺は、息を整えてノックした。


「入るぞ?」


 そう言って扉を開けると、スーラリオが綺麗な女の子を2人連れていた。1人は、大人しそうな見た目に反して、男性が好きな部分がかなり大人しくない。てかでかい。もう1人はちょっと……いや、かなりもう1人と比べると色々と小さい……かな。体型は全く似てないけど、2人ともピンク色の髪色だし、顔が似ているから、双子なのかな?


「やあ、スーラリオ。今日はどうしたんだ?」

「ああ、今日はユリウスに仲間にしてやってほしい子がいてな」


 スーラリオは立ち上がり、連れて来た2人の紹介をし始めた。


「こちらの子は我の秘書の娘で、姉のカナビ。魔法による戦闘を得意としていて、スキル持ち。【偽装】というスキルを持っている。詳しい能力は後で、この子に聞いてくれ」


 【偽装】か。何を偽装できるんだろう。もし、ステータスを偽装できるなら、かなり助かるな。


「こちらの子も同じく、妹のナナビ。戦闘能力は皆無だが、貴重なスキル持ちだ。【鑑定】のスキルを持っている。この子の詳しい能力も、後で本人に聞いてくれ」


 スーラリオの説明が終わると、2人とも小さくお辞儀をした。

 ショートヘアで小さい子が姉のカナビ、ロングヘアで大きい方が妹のナナビ、ね。【鑑定】か。確か他人のステータスが見れるスキルだったよな?


「2人とも、挨拶を」


 スーラリオがそう言うと、カナビとナナビは1歩前にでた。


「私の名前はカナビです! よろしくお願いします!」


 カナビが大きな声で挨拶をする。

 カナビは元気っ子だな。場が明るくなる。


「え……と……わた、私は……ナナビ……です……。よ、よろしくお願い……します……」


 自分より小さな姉の、カナビの後ろに隠れながらナナビは自己紹介をする。

 ナナビは見た目通り大人しそうだな。


「今日はこの2人の紹介と、もう1つ、話したい事があってな」


 スーラリオが真剣な顔になる。なんとなく、大事な話だと思った俺はリオサに目配せして、皆を部屋の外に連れて行ってもらった。


「で、話って?」


 俺がそう言うと、スーラリオが座り直して、姿勢を正す。そして、ちょっと間をあけて、ひと呼吸置いた後に口を開いた。


「魔王狩りのゼクスが近くに来ている」


 魔王狩りのゼクス……大量の魔王、大魔王を屠ったって、前にレイドが言っていた奴。


「あまり驚いていない様子だな?」


 スーラリオが不思議がっている。


「ウチの情報収集部隊は優秀だからね。一応2日前にサリア達から聞いていたんだ。近くにゼクスが来てるって」


 なるほど、と納得した感じでスーラリオは頷く。


「最近は、俺もちゃんと情報を集めるようにしたんだ。いつどんな敵が襲ってくるか、他の国で何が起こってるのか、とか知っといた方が色々と有利に事を進めるからね」


 スーラリオがまたも深く頷く。


「情報の価値が分かってきたか。立派な魔王らしくなってきたんじゃないか?」


 そう言ってスーラリオは笑う。スーラリオは俺の成長を感じているのだろう。スーラリオと初めて会ったときは、転移してきたばかりで何をしていいのか分からない時だったからな。あの時とは、環境も考え方もとても変わった。


「まあ、国民が増えてきたからね。流石に、変わらざるを得ないよ」


 俺たちはその後も談笑し、いい時間になったタイミングでスーラリオは帰っていった。




「私の事は、カナビちゃん、と呼びなさい」


 えーと……スーラリオが居た時と態度が違い過ぎませんか、カナビさん?


「お、お姉ちゃん……!ダ、ダメだよ。魔王様に対して……そんな言葉づかいをしたら……」


 スーラリオが帰ったあと、スキルの説明を聞きたかったし、ちょっと会話をして仲良くなろう、と思ってリオサに2人を連れてきてもらっていた。


「えーと……分かったよ、カナビ……ちゃん? これでいいかな?」


 俺がちゃん付けで呼ぶと、カナビは満足そうに頷いた。


「それでよろしい。よろしくね、魔王様」


 めんどくさそうな子だなぁ……


「それでさ、スキルの説明を聞きたいんだけど、いいかな?」


 俺がそう言うと、カナビは説明を始めた。


「仕方ないわね。説明してあげるわ」


 ピキピキ


「私のスキル【偽装】は何でも偽装が出来るスキルね」

「へぇ、例えばどんな偽装が出来るの?」

「そうね。何でも偽装できるわよ? ステータスでも魔法でもなんでもね」


 まじか。ステータスが偽装できるのは俺にとって最高だ。仮に、これから何かで鑑定を受けることがあっても、【魔王】と【勇者】の称号とか、追加ステータスを隠す事が出来る。最高のスキルじゃないか……!


「それって見た目も偽装できるのかな?」


 呆れたように、やれやれといった感じでカナビは首を横に振る。

 何かちょっとムカついてきた。


「見た目の偽装なんて、できるわけないじゃない。何を言っているの?」

「あはは……ごめんね……」


 ちょっと……いや、かなりムカつくけど、まあいいや。【偽装】のスキルが使えるようになるのはかなりデカい。


「それでこっちの超超ちょーーう可愛い、私の妹のスキル【鑑定】は、他人のステータスを見れるスキルね。素晴らしいスキルでしょう? 流石、私の妹は天才だわ」


 【鑑定】は名前の通りのスキルか。これが使えるようになるのもかなりでかい。外で誰かに会った時に、そいつが【魔王】だったり【勇者】だったりしても、今までは分からなかった。けど、【鑑定】があれば、すぐにわかるようになる。これも最高のスキルだ。


「や、やめてよ、お姉ちゃん……」


 ナナビは恥ずかしそうにモジモジしている。可愛い。


「それじゃ、自室に戻っていいかしら?」

「あ、うん、いいよ! ありがとね……」


 俺がそう言うと、フンっと振り返って、カナビとナナビは部屋から出ていった。


「魔王様。彼女たちを教育しましょうか?」


 リオサが怖い表情で言う。かなり怒っているみたいだ。


「いや、大丈夫だよ。あの子たち、あんな態度だったけど、仲間意識はしっかりあるみたい。ステータスを確認したら、ちゃんとスキルもステータスも増えていたからね」


 そうですか、と納得した感じのリオサ。俺の【友達の輪】のスキルはこういう時に便利だ。スキル【偽装】は、俺にとってとても嬉しいスキルだった。だってこれを使えば、冒険者になれるんだから……!早速、明日メルドルの冒険者ギルドに行ってみよう。1度なってみたかったんだ、冒険者に。【魔王】の称号のせいで諦めていたけど、【偽装】を使えば冒険者登録が出来る。俺は明日がとても楽しみになった。

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