勇者レイドの報告
「ちゃんと町が出来ていってるし、城もかなり完成してきてんじゃん」
レイドが周りを見渡しながら言う。今朝、レイドがまた俺を訪ねてきたので客間に招いた。
「また来たんですか? 勇者レイド」
リオサがレイドを睨みつける。レオや他の皆はもう慣れたのか、普通にいつも通り過ごしている。新しく、国民になった皆は最初は勇者が来たことに驚いていたが、俺が普通に接してるのを見て、関係性を察したらしい。
「で、今日は何の用なの?」
俺がそう言うと、俺の方を見て真剣な顔でレイドが話し始める。
「2つ報告があってきた」
報告って……こいつ、いつか俺の配下に加わるつもりなのか……?
「1つは、ユリウス。お前の討伐命令が下った。近々、名を上げたい勇者、もしくは序列に名を連ねている勇者が来ると思うぞ」
とうとう命令が出たか。
「ちなみに、きっかけは先日の件だ。お前、また大魔王と戦っただろ?」
レイドの問いに俺は頷いた。
「その報告があって、討伐の命令が出たっぽい。大魔王メディスを圧倒したらしいな」
圧倒……はしてない気がするけど……まあそう見えてもおかしくはない……かな?
「それにお前、魔王連合の会議に行ってただろ?」
俺はレイドの言葉に驚いた。何で知ってるんだ?
「なんでだ?」
俺がそう聞くと、レイドが答える。
「あの日、サステメルシンで魔王連合の会議が開かれることは勇者連合も把握しているんだ。そして驚く事に、ちょうどその日にサステメルシンで、魔王ユリウスと大魔王メディスが街中で戦闘をしたらしい。という情報が入ったんだ。それを聞いたら誰でも予想できるだろう? 魔王ユリウスが会議に参加していた。だから当日サステメルシンに居たんだ、と」
レイドに言われて、確かに……となった。仮に俺が勇者側でも、たまたまその日にサステメルシンに居たんだ、と言われても信じられないだろう。しかも配下を連れて。
「で、どうなんだ?」
俺はレイドの問いに答えた。
「あぁ、確かに、俺はその日の魔王連合の会議に参加してたよ。呼ばれたからね」
「呼ばれた? それじゃお前、もしかして大魔王になったのか?」
レイドがずいっと顔を近づけてくる。近い近い。
「いや、グランテレスの件で呼ばれただけだよ。仮に魔王連合に誘われても、今の所は参加するつもりはないかな」
「どうしてだ?」
魔王連合に参加すれば、色々いい事もあるだろう。けど、デメリットもある。俺はなるべく敵の数は増やしたくない。
「大魔王になったら、面倒な事が増えそうだからな」
レイドはあまり納得してなさそうな感じだったが、本当にそれだけなので話を変える。
「そういや、サステメルシンに行って思ったんだけどさ。大魔王って結構堂々としてるのに、何で勇者連合は討伐しないんだ? 何か理由でもあるのか?」
俺はレイドに質問する。サステメルシンに行った時、疑問に思った。結構普通に大魔王って会えるんだって。
「まあ、それには色々理由があるんだと思うよ。大魔王の討伐命令って聞いたことないし、俺もあんまり知らないんだ、その辺の事情」
ふーん。レイドも知らないのか。まあ。上位の勇者しか知らない事はたくさんありそうだな。勇者連合の仕組み的に下の方の勇者には、あまり情報が行かなさそうだし。
「そっか。それじゃ、2つ目の報告は?」
レイドの表情が、わずかに硬くなる。空気がちょっとだけ変わったのを感じた。
「魔王狩りって知ってるか?」
なんだその物騒な異名は。
「魔王狩り? って呼ばれてる勇者の話か何かか?」
レイドが首を横に振る。
「魔王狩りは勇者じゃない。勇者じゃないのに魔王を狩り殺している奴だ。勇者連合に報告があったらしい。最近活動を再開した、って」
俺も一応は魔王だし、狩りの対象だよな。
「気を付けろ、ユリウス。奴は昔、魔王を100人以上、大魔王を20人以上殺してる。ここ1週間で8人の魔王がやられた。もし会ったり、襲撃してきたらすぐに逃げろ」
へぇー凄いな……って
「20人!?」
大魔王を20人だって!?そんなバケモノがいたのか!?魔王も100人殺してるらしいし、やばいな。
「魔王狩り……魔王狩りのゼクス……ですか」
リオサが魔王狩りの名前を口にする。
「知ってるの?」
リオサが口を開く。
「ええ、10年くらい前に魔王を狩り殺していた事で有名です。魔王と大魔王を狩り殺し、たったの1年で魔王連合を崩壊の危機にまで追いやった人物です。ただ、生きていたとは……」
まるで死んだと思っていたかのような口ぶりだ。そんな凄い奴が死ぬことなんてないんじゃないか?
それを聞いていたレイドが口を開く。
「そう。生きていたらしい。魔王狩りのゼクスは大魔王ルードと本気で戦って生き残った2人目の人間だ」
え!?ルードと戦ったのか!?まあ、でもそうか。魔王連合を崩壊まで追いやったんだ。ルードとは絶対に衝突するよな。
「この10年で更に強くなってるらしい。1週間で魔王8人は異常なペースだ。修行でもしてたんだろうな」
その後もレイドから色々と聞いた。
気付けば、夕焼けが窓から顔を覗かせていた。もうこんな時間か。
「こんな時間だし、帰るか」
今回は忘れずに聖剣を持つレイド。
「ああ、忠告ありがとうな。レイド」
俺がそう言うと、レイドは照れくさそうにそっぽを向く。
「別にいい。それじゃあな、魔王ユリウス。俺が倒しに来るまで、負けるんじゃないぞ」
そう言うとレイドは帰っていった。
レイドって、いつもそれ言って帰ってくよな……
俺はそんな事を思いながらレイドを見送った。




