移住希望者
「魔王様、連れてまいりました」
「ありがとう。サリア」
色々あって国民を増やそうと思った俺は、サリアに頼んで村というグループで移住を希望している種族を各地から探してきてもらった。城の外には、3つの種族が集まっていた。
「結構、集まったね」
サリアが頭を撫でてほしそうに俺の方に頭頂部を向けてきたので、いつも通り頭を撫でてあげる。何がいいのかわからないけど、サリアが嬉しそうなのでよし。
「よし、それじゃ軽い面談を始めようか」
色んな種族が集まっているが、もちろん全員を迎える気はない。悪意を持った奴らが混ざってたら困るので、一応面談をする。今回は国民を増やすのが目的であって、配下を増やしたいわけじゃないから、ステータスの変化は判断基準に入れないつもりだ。住める所が欲しい、安心できる所が欲しい等の目的で移住する人たちもいるだろうからね。
「よし、それじゃ最初の代表者を連れてきて」
リオサに最初の代表者を連れてきてもらった。
「お、お初にお目にかかります、魔王ユリウス様。私は熊人族の代表、ケイです。よ、よろしくお願いいたします」
深々と頭を下げる熊人族のケイ。
くまびとぞく、か。そんな種族もあるんだな。見た感じ。ガタイがいいし、力も強そう。女性の熊人族もかなり大きいし、これは国を作り上げる過程で必要になりそうかもしれないな。
「よろしく。それじゃ、いきなりなんだけど、熊人族の特技は?」
「はい! 我々の特技は――」
その後も数回、質疑応答を繰り返し、3種族の代表と面談をした。
3種族の代表と面談が終わり、客間に集まってもらっている間、俺の寝室で仲間の皆と話し合いをしていた。
「3種族とも話した感じ、よさそうだったけど……どうかな?」
リオサが頷いた。
「私は、3種族とも受け入れたほうが、良いと考えます。熊人族は力がありますし、人数も17人もいます。受け入れれば、力仕事を任せられるので国の完成に一歩近づくでしょう。虎人族も同様。力を持つ種族なので、数は少ないですが力仕事を任せられます。犬人族は、希望者を募ってサリアの諜報部隊に入れるのがよいかと思われます」
それを聞いて、皆が頷いている。
「悪そうなやつは、いなかったよね?」
俺がそう言うと、サリアが口を開く。
「悪人はいないと思われます。一応、こちらで3種族とも観察して確認はしているので、そこは心配ないかと」
流石サリア。ぬかりはないか。
「よし! それじゃ、全員受け入れようか!」
俺たちは、希望者が集まっている客間に向かった。
「遅くなってすまない」
俺がそう言いながら客間に入ると、皆がこっちを向いた。
「全員の移住を受け入れることにした」
そう言うと、ワっと声が上がった。
「えー、静粛に……」
場が静まり返る。一度、言ってみたかったんだこの言葉。
「熊人族と虎人族には、城の建設や町づくり等の、力仕事を任せようと思う。いいかな?」
熊人族と虎人族が膝をつく。
「お任せください! 素晴らしい城と町を作って見せましょう!」
熊人族と虎人族の皆、頼りにしてるぞ!
「犬人族には2つの選択肢がある。力仕事を手伝うか、サリアの諜報部隊に入るか、だ。希望者は後でサリアの所に来てくれ」
「分かりました!」
犬人族も膝をつく。
「一応言っておくけど、ここの国民になったからには、人殺しはご法度だ。仲間同士での喧嘩もダメだ。話し合いで解決しよう。そして、最後に……」
「皆で、楽しく生活しよう!」
俺がそう言うと、皆が声を上げた。
夜も遅くなっていたので、あれからすぐに解散した。皆には希望者を受け入れるために作った、簡易的な家で寝泊まりしてもらう事になった。俺と仲間の皆は、まだ客間で話し合っていた。
「明日から、取り掛かってくれるそうです」
熊人族は半数が町の家作り、半数が城の建設を早速、明日からしてくれるらしい。虎人族は木を切ったり、家や城の建設に必要な物を集めに行くそうだ。
「サリアの諜報部隊はどうだった?」
サリアの諜報部隊は強制参加ではないから、集まるかどうか微妙な所だ。
「わたくしの所は、23人いた犬人族のうち、8人の希望者が来ました」
「8人か。結構集まったんじゃないか?」
俺がそう言うと、サリアが頷いた。
「はい。これだけいれば、とても情報収集が捗ります」
よかったよかった。諜報部隊の人数が少なかったから、サリアとレンとロウの負担が大きかったんだよな。これで、多少は楽になっただろう。
「なぁ、魔王様。ないと思うし、思いたいんだが……」
レオが何か言いたそうだ。
「ん? どうした?」
「もし、もしだけどよ。裏切りモンが出たらどうするんだ?」
レオの質問に、うーんと唸る。
確かに、その時の事も考えなきゃいけないな。これからこの国を大きくしていく過程で、裏切り者が出てもおかしくない。むしろ、絶対に出ると言ってもいいだろう。
「国外追放……かな」
「国外追放? それだけか?」
俺はもし、裏切り者が出たとしても痛めつけるような事は絶対にしたくない。俺は悪者になりたいくない、とかじゃない。俺はそれを当たり前にしたくないだけ。裏切り者が出ても痛めつければいい。そんな考え方が普通になるのが嫌なんだ。
「うん。それだけでいい。仮に裏切り者が出ても、痛めつけるとかしなくていい。俺はなんというか……優しいとか、そんな感じの国を作っていきたいと思ってるんだ」
俺がそう言うと皆が、ちょっと考えた後、やれやれといったジェスチャーをした。
「魔王様らしーな」
「ええ、そうですね」
「らしいっス!」
皆納得してくれたようだ。俺はいい仲間たちに恵まれたな。
もし……これはもしもの話だけど、裏切り者が出て、この中の誰かが傷ついたりした場合。その時は――




