vsメディス②
はぁ、俺ここで死ぬのか……
「魔王様ー!」
後からリオサが俺を呼ぶ声が聞こえる。リオサの声でこちらに気付いたのか、他の皆も声を上げだす。
終わるの早かったなぁ。俺の異世界生活、魔王人生は……メディスがニヤニヤしながらこっちを見てやがる……本当にイラつくなぁ……こんなあっけない死に方するのかよ俺。まあ、なんだかんだ言って楽しかったなぁ。走馬灯のように色んな事を思い出す。短い時間だったけど、色々あって楽しかったな。皆とここでサヨナラするのは悲しいなぁ……
で、俺はいつ倒れるんだ?
「魔王様!」
リオサが俺のそばに来た。
「ごめん……リオサ……今からでも急いで逃げるんだ。そして……皆を……頼んだ……ぞ……」
俺はリオサの手を握った。
「あのぉ……魔王様……? 傷が……塞がっているのですが……」
「え……!?」
俺はさっきまで血が出ていた自分の胸を見た。
「なくなってる……」
傷が完全に塞がってる。なんでだ!?
あ……そう言えば、メニアのスキルが確か……。俺は自分のステータスを確認した。すると、スキルの欄に【自動回復】のスキルが追加されていた。
「まじか……」
どうやら俺はメニアの【自動回復】のスキルのおかげで助かったらしい。てか【自動回復】凄いな。一瞬で傷が塞がったみたいだ。
メディスの方を見ると、さっきまでニヤニヤしていた顔がいつの間にか曇っていた。
「何をした……? 間違いなく俺、の氷の剣はお前を貫いたはずだ。なのに何故!お前の傷は塞がっているんだぁ!?」
やつは動揺している……!今がチャンスだ!
俺はメディスに向かって全力で走った。
「貴様ぁぁ!!」
メディスが再び、氷の剣を飛ばしてきた。が、俺はさっきの出来事でアドレナリンが出ているのもあるだろう。謎の自信が湧いてきていた。さっきまでは当たった死ぬという恐怖から躱すのに必死だったが、当たっても死ななかったという経験が俺の恐怖感を鈍らせた。
今なら……イケる!
氷の剣を躱しながら、メディスの所へ直行する。当たっても死なないという謎の自信のおかげか、全てを紙一重で躱しながら走る。
「何!?」
俺はいつの間にか、メディスの近くまで来ていた。メディスに向かってジャンプしながら、拳を引いた。
「歯ぁ、食いしばれ! クズ野郎!」
俺はメディスの顔面を思いっきり殴った。
殴られたメディスは後方にすごい勢いで吹っ飛んでいった。
「はぁ、はぁ」
倒した……大魔王を……
「やったぞー」
俺は皆の方を振り返った。
「魔王様! うしろです!」
リオサが叫んでいるのが聞こえた。リオサの焦り方を見て、俺は横に思いっきり飛んだ。すると、氷で出来た龍が俺の横を通っていった。
「あっぶね!」
あれは当たってたら即死だった……。てか、冷静に考えたら、さっきの剣も同時に食らったら即死だったな……俺はゾっとした。
「ご無事ですか? 魔王様!」
リオサが飛んで転んだ俺に駆け寄る。
「ありがとう。大丈夫だよ」
氷の龍が飛んできた方向から声が聞こえた。
「テメェだけは……ぜってぇに……殺す……!!!」
怒りで震えているメディスが見えた。俺の全力パンチを耐えたのか……!?あの筋肉モリモリのグランテレスが一発だったのに!?こんな細身でどうやって……
メディスの頬に氷の破片がついていた。そういえば殴った時、何か硬かった気がする。咄嗟に氷で防いだのか。
「まだやるのか?」
メディスが一歩ずつ近づいてきている。これはもう……殺すしかないのか……?
俺がそう考えながら、メディスの方に向かおうとした瞬間だった。
何かが目の前を通った。すると大きな音と共に、目の前からメディスの姿がなくなる。と同時に、近くの建物が崩壊した。
なにが起こった!?
「魔王様! 気を付けてください! 信じられないほど強大な魔力を持った者がそこにいます!」
リオサが見ている方を見ると、そこには大ダメージを受けたメディスと、メディスの髪の毛を掴んでいるルードの姿があった。
「ねぇ、メディス。今日はやめとけって、オレリーに言われなかったか?」
遠くから見ていてもわかる。とんでもないルードの殺気が……
「も、申し訳ございません。ルード」
メディスは震えながら答えている。異様な空気感に辺り一帯が静まり返る。そして、その場にいた全員が本能的に理解した。この人には逆らってはいけない、と。
「わかればいいんだ。わかればね」
話が終わったと思ったのか、メディスは髪を掴まれながらも、ホッとした表情を見せる。するとルードは、メディスを解放するかのように見えたが、メディスを思い切り蹴飛ばした。メディスは凄い音を立てながら、建物を貫通して吹っ飛んでいった。ルードがこちらへ向かってきた。
「ごめんね、ユリウス。あいつが勝手しちゃってさ!」
俺はさっきの光景を見て、ちょっとだけルードに対してビビっていた。
「い、いや、いいよ。こっちはあまり怪我人とか出てないしさ」
「そう? それならよかったよ。ここは俺が片づけとくからさ、ユリウスはもう帰っていいよ!」
ルードがいつもの笑顔で話す。
「あ、あぁ。そうさせてもらうよ」
俺はそう言って、帰ろうと出口の方を向いた。皆は恐怖で黙っていた。そりゃそうだ。さっきのを見たら、誰だって怖いと思う。
「それじゃ、またねー!」
後からルードの声が聞こえたので、振り返ると、ルードが満面の笑みで手を振っていた。
「ああ、また」
俺も手を振り返した。そして、俺たちはサステメルシンを後にした。
「あれが大魔王ルード……か」
帰り道、レオが口を開いた。
「あれは、敵に回さない方がよいでしょう。今の私たちでは瞬殺されてしまうでしょうから」
リオサの言う通り、ルードは敵に回さない方がいいだろう。実力が違い過ぎる。戦闘経験もステータスも遥かに俺たちを上回っているだろう。
「ユリウス……様……ごめん……なさい……メニアを助けたから……大変な事になっちゃって……」
メニアが悲しいそうな顔をして俺に謝る。そんなメニアの頭を撫でながら俺は言った。
「全然、気にしなくていいんだよ、メニア。俺たちは今日から家族だ!」
俺がそう言うと、メニアが満面の笑みで頷く。俺はこの笑顔を守りたい。そのために俺はもっとステータスを上げる。そう誓った日だった。




