奴隷の女の子
俺がメディスの城から出ると、入り口の前で手を振るナモと皆が見えた。
「皆も来てたの?」
リオサが大きく頷く。
「当たり前です。もし戦闘になれば、すぐに駆けつけられるように待機しておりました。無事に城から出てきたので、ホッとしました」
レオもうんうんと頷いている。
皆……じんわり、涙が出そうになる。
「よしっ! 無事に解放された事だし、帰ろうか」
俺がそう言うと、ナモが何か言いたそうにしている。
「どうしたんだ? ナモ?」
ナモに聞くと、サステメルシンにはどうやら、有名な肉まんじゅうの屋台があるらしい、との事だった。
「へぇ~。じゃあ、それ食べて帰ろうか」
「いいっスか!? やったー!」
ナモが嬉しそうにぴょんぴょん飛んでいる。ナモが嬉しいと俺も嬉しいよ。
ちょっと歩くと、肉まんじゅうを売っている屋台を見つけた。
「へぇ。これが肉まんじゅうか」
名前からなんとなく予想はついていたが、屋台には肉まんが売っていた。
「おいしいらしいっスよ!」
確かに美味しそうだ。俺たちが屋台の前に立っていると、屋台のおっちゃんが話しかけてきた。
「いらっしゃい! 初めて見る顔だねぇ。この辺の人かい?」
「いえ、用事があって他の国から来ました」
「へぇ、そうかい! この国を楽しんでいってな! 数は人数分でいいかい?」
「はい。大丈夫です」
おっちゃんが肉まんを紙に包みだした。見てると、数が1個多いような……?他国から来たお客さんだから、おまけ?なのかな?
「はい! お待ち! 熱いうちに食ってくれよ!」
おっちゃんはそう言うと、1人ずつ肉まんを手渡す。俺が最後のはずだが、おっちゃんの手にはもう1つ肉まんがあった。おまけだと思っていたが違ったようだ。おっちゃんは俺の横にいた、小さな女の子に渡した。女の子がペコリと頭を下げる。
「いいってことよ!」
君は誰……?
「それじゃ、肉まん1個銅貨2枚で、銀貨1枚と銅貨6枚ねー!」
ん?肉まん1個2枚で……って、えーっと……俺、リオサ、レオ、ナモ、サリア、レン、ロウ……7人だよな……?もしかしてこの子の分も含まれてる……か?
「えーと……おっちゃん、この子は……」
そう言いだそうとする俺を、女の子はウルウルした目で見つめてくる。よし……おじちゃんが買ってあげよう!
「まいどありー!」
俺は女の子の分まで払ってあげた。俺たちは肉まんを手に持って歩き出す。そうすると、女の子まで一緒に歩き出した。
「魔王様。この子は……」
リオサが小さい声で話しかけてくる。
「うーん……迷子かな?」
リオサが見てください、と女の子の首元を指さす。
「この子は奴隷です。このまま連れて行っては大変な事になります」
それもそうだよな……この子の所有者を探してあげるか。このままここに置き去りにするのも可哀想だ。
俺たちがコソコソ話していることに、皆が気付く。
「どうしたんスか? 迷子っスか?」
ナモもコソコソ話に入ってくる。
「そうなんだよ。主を探してあげた方がいいかなって話をしてたんだよ」
「俺は探してやったほうがいいじゃねぇかって思うな。どういう契約結んでるか、わかんねぇし。もしかしたら、何かしらの効果が発動して死んじまうかも」
レオの言う通りだ。奴隷契約時に首輪にどんな効果を付与されたか分からない。昔の俺とリオサみたいに距離が離れると爆発する、なんて効果だったら大変だ。
「そうだね。すぐに見つけてあげよう」
俺がそう言うと、サリア率いる諜報部隊が速攻で動き出した。
「すぐに見つけてきます!」
サリア達に任せておけば、すぐに見つかるだろう。もし、この子にとって嫌な主が来たら、俺の【魔力消去】で解放してあげよう。もし相手が奴隷商人だったら、なるべく揉めたくはないけど、仕方ないよね。
「ねぇ、お名前は?」
俺たちはサリア達を待っている間、近くにあった広場のベンチに座っていた。
「えーと……いくつなの?」
……
ダメだこりゃ。何も話してくれない……サリアもレオもナモも話しかけたが、全く何も答えてくれなかった。もしかして、話せないのかも。
「さっきの肉まんじゅう美味しかったかな?」
そう聞くと、コクリと頷く女の子。
言葉は理解しているみたいだな。声が出ないのかな。
「ただいま戻りました」
サリア達が戻ってきたが、表情を見る感じ、どうやら見つからなかったみたいだ。
「申し訳ございません。魔王様。周りを探してきたのですが、奴隷を探してる様子の人物はおらず。その子の主を見つける事が、出来ませんでした……!」
サリアが深く頭を下げる。まあ、見つからなかったんだったらしょうがない。サリアが見つけられなかったんだ。俺たちは責められない。
「大丈夫だよ。皆でゆっくり探そうか」
俺がそう言うと、サリアは申し訳なさそうに後ろに下がる。別にいいのに……
「それじゃあ、行こっか」
俺がそう言って、女の子の手を取った瞬間だった――
「おやおや? いけませんねぇ……」
後ろから声がした。声が聞こえた。女の子が震えだした。そして俺はすぐに分かった。この声がする方に、この子の主がいる。そして――
この子は絶対に返してはいけない、と
「さっきぶりですねぇ……魔王ユリウスさん」




