聖剣①
大魔王ルードとの接触から3日が過ぎた。大魔王が接触してきたので魔王連合関連かと思ったが、特に何もなく、平和な日常を過ごしていた。
「大変だったみたいだな、魔王ユリウス」
過去に俺たちを襲ってきた勇者レイドが話す。
朝、突然来たので、襲撃か!?と思って構えたけど、戦う意思を全く感じなかったので客間に招いた。
「あぁ、そうなんだよ。めっちゃ大変だったよ」
普通に会話する俺たち。確か、倒しに来るとかなんとか言ってたような……あぁ、でも強くなったらって言ってた気がするな。
「魔王様。そんな話はどうでもよいです。勇者レイド。あなたは何をしに来たのですか? 目的を聞かせてもらいましょう」
「まぁ、もし襲ってきても、この前みたいにボコしてやるよ」
リオサとレオが勇者に圧力をかけている。それでも勇者は恐れる事は無く、冷静な顔で理由を話し始めた。
「お前は今、大魔王グランテレスを一撃で倒した魔王として、勇者連合で危険視されてる。そしてもうすぐお前の討伐命令が下ると思う。そうなったら近いうちに、序列上位の勇者たちが来るぞ」
序列上位……か。勇者連合には序列があるのか。
「レイドは序列いくつなの?」
俺がそう言うと、レイドはうつむく。
「俺はそもそも、その枠組みに入ってすらいない。魔王を討伐したことがある人だけに序列がつく仕組みになってる。そして載ったあとの功績で変動するシステムなんだよ」
ほーん。勇者連合って結構厳しいシステムなんだな。それじゃ、レイドがあの時、俺を倒していたら序列に載れてたのか。
「それじゃあさ、序列の上位って事は、とんでもない功績を上げたって事なのか?」
レイドは頷く。
「そうだ。序列1位の勇者テンゲン様は過去に、魔王を57人、大魔王を5人も倒しているんだ」
魔王と大魔王ってそんなにいるの?多すぎるだろ。
「そのテンゲンはそんなに強いのに、何で魔王連合を壊滅させないんだ?」
そんだけ魔王と大魔王を倒せるなら、その気になれば魔王連合を壊滅させれそうなのに……何か理由があって、あえてしないのか?
「それは……」
突然、口ごもるレイド。どうしたんだ?
「勇者テンゲンは、大魔王ルードに負けているのですよ」
リオサがそう言った。
「いや、違う! テンゲン様は負けてなんかない! 大魔王ルードが卑怯な手を使ったんだ!」
レイドが突然大きな声を出す。
なるほど。多分、レイドはテンゲンを尊敬しているんだ。だから言いづらかったんだろう。
「まあまあ、その話は置いといて……」
俺はレイドをなだめた。リオサにも変な事はなるべく言うな、とお願いした。俺って魔王だよな?
「勇者って結構いるのか?」
一応人数は知っておいた方がいいだろう。もしかしたら魔王みたいに、いっぱいいるかもしれないし。
「俺も人数は把握していない。序列のついた人数なら、11人いる」
「勇者って人数を把握しきれないほどいるのか? 勇者ってどうやってなるんだ?」
俺がそう言うとレイドが頷き、説明する。
「聖剣を持てれば、誰でも【勇者】の称号を手に入れられる。が、聖剣は持ち手を選ぶんだ。聖剣に選ばれなければ、勇者にはなれない」
なるほど。魔王と同じで、称号を手に入れればなれるのか。それじゃ聖剣の数だけ勇者がいるんだな。でも、聖剣はどこで見つけるんだろう。
「聖剣ってどうやって手に入れるんだ? ダンジョンみたいなのがあったりするのか?」
「聖剣はその辺に落ちてたり、ダンジョンにあったり、様々だ。何故そこにあるのかどうやって生成されてるかは分かっていない……と思う。見つけれたらラッキーって感じだな」
ラッキーって……見つけても聖剣に選ばれなければ意味ないんじゃないか?
「聖剣は持ち手を選ぶんだろ? 選ばれなかったら見つけても意味ないじゃないの?」
レイドは首を横に振る。
「いや、意味はある。持つことは誰でも可能だからな。本来の切れ味や能力を引き出せないってだけだ。あと、聖剣を持つとステータスが上がるんだけど、選ばれてなかったら上がらない」
「選ばれなかったら、持って帰って売ればいいわけか」
「そういうことだ」
聖剣かー。勇者になれる可能性があるなら、めちゃくちゃ高く売れそうだな。
「【勇者】の称号を得れば、どの聖剣でも扱えるようになるのか?」
「いや、【勇者】の称号を手に入れたからって、どれでも使えるわけじゃない。全ては聖剣が決める。実際に、年齢を重ねた勇者が引退する時に、持っていた聖剣を弟子に渡して勇者になったって話があるからな。聖剣によっては複数の所有者がいる場合もあるだろうな」
「へぇ。なるほどね」
その後も俺たちは色々と話した。
「それでレイドは、俺に警告をしに来てくれたって事でいいんだよね?」
「あぁ、そうだ。お前が俺に倒される前に誰かに倒されるのは困る」
可愛いやっちゃ。
「分かった。気を付けるよ」
「それじゃ、俺は帰る」
レイドが帰ろうとした時、剣を椅子に忘れていたのが見えた。俺はそれを渡そうと、剣を持った。
「レイド。忘れてるぞ~。お前勇者だろ? てことはこれは聖剣だろ? 大事な剣なんだから気を付けろよー?」
俺は笑いながらそう言った。だが周りは驚きの目で俺を見ていた。時が止まったかのようだった。
え?なに?どうした?
「な、な、ななな何でお前が聖剣を持ててるんだ?」
「魔王様!?」
レイドが突然大声を出す。周りの皆が慌て始める。
「え!? なに!?」
俺がそう言うと、レオが俺から聖剣をぶんどる。
「何してんだ魔王様!? 正気か!?」
俺が慌てふためいていると、サリアが説明する。
「魔王様! 聖剣とは対魔王の武器なのです! 魔王に対してだけ、特別な力を発動します。つまり、魔王が聖剣を持つというのは自殺行為なのです!」
え!?そうなの!?そんな事はちゃんと説明してくれないと!
あれ?でも特になんの異常もないぞ?
「いや、でも特に異常ないけど……」
リオサとサリアが俺をじっくり見る。レイドはありえないという表情だ。
「そう……ですね。異常が……ない……」
サリアが驚いている。
「そんな事はありえないはずです……もしかして、勇者レイド。それは聖剣ではないのでは?」
リオサがそう言うと、レイドは強く主張した。
「これは間違いなく聖剣だ! そんなに疑うならそこにある石を切ってみるといい!」
レオがレイドから聖剣を受け取り、近くにあった石に向かって、思い切り振りかぶる。が、石は切れる所か、かすり傷もついていない。
「おい! この剣おかしくねぇか? かすり傷もつかないなんてよ?」
「聖剣とは、そういうものなんだよ。次は俺が切る」
レイドがレオから聖剣を返してもらう。そして、レイドがその石を切ると真っ二つに切れた。
「まじかよ……?」
「ほらな? どうだ?」
これが本物の聖剣だという事が証明された。それなら何故俺の体には異常がないんだ?
リオサがハっとした顔で俺の方を見る。
「魔王様。ステータスを確認してみてください」
言われるがまま、俺はステータスを確認した。するとそこには
【勇者】
の称号が追加されていた。
「俺……【勇者】の称号が……ついてるんだけど……」
俺がそう言うと、その場にいた全員が「えー!?」と驚いた。
俺も驚いた。




