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謎の少年

「おお! これめっちゃ美味そうだな」


 俺は串焼きを見て大興奮する。グランテレスとの戦いから3日が経ち、自分や皆に対してのご褒美を買うために1人でメルドルに来ていた。リオサは俺が1人でメルドルに行くのを猛反対していたが、朝から頼みまくって今に至る。俺は子供じゃないんだぞ!


「何か良さげな物ないかな~」


 チョコみたいな甘いお菓子が欲しいな。この世界に来て甘いものを食べていない。スーラリオに聞いたら、甘いお菓子はあまりないらしい。メルドルには専門店が一応あると聞いたから来てみたが――


「並びすぎだろ……」


 信じられないくらいの長蛇の列。買う気失せた……

 その列を見てガッカリしてる俺に突然、黒髪の少年が小声で話しかけてきた。


「魔王ユリウスだよね?」


 ――!?何故、俺がユリウスだと分かったんだ!?もしかして俺って大魔王倒したから有名人になっちゃったのか!?


「何で俺の事知ってるの!?」


 もしかして……勇者か?可能性はある。ここはメルドルで勇者がいる。この前の襲撃に来た少年はここの正式な勇者じゃなかったみたいだし、この子がメルドルの正式な勇者の可能性がある。


「大丈夫。俺は勇者じゃないよ! 大魔王倒したって聞いてファンになったんだ」


 なーんだ。勇者じゃなくて、俺のファンか……ってファン!?


「へ、へぇ、俺のファンなんだ……もしかして俺のファンクラブとかあっちゃったり……?」

「いやいや、そんなのはないよ」


 笑いながら話す少年。ちょっと期待しちゃったじゃないか。


「そんな事よりさ、今日は何でメルドルに?」


 少年が俺に目的を聞いてくる。


「君はメルドルに詳しかったりする?」

「うん。かなり」


 この子に案内してもうかな?メルドルが地元の子っぽいし、それが早いかも。


「甘い食べ物を買いたいんだけど、どこかにいい店ないかな?」

「ああ、あそこ見てガックリしてたもんね。お客さんがいっぱいいるわけじゃないけど美味しい甘いお菓子を売ってるとこ知ってるよ」

「お? じゃあ案内してくれる?」

「分かった! ついてきて」


 少年に案内された場所に行くと、確かにお菓子屋さんがあった。けど……


「大丈夫か……?」


 少年に聞こえないくらいの小さな声が思わず漏れる。お客さんが少ないどころか、いない。そりゃそうだ。あまりにも外観がボロボロすぎる。そもそもお店が開いてるのかどうかすらも外から見ると分からない。少年が中に入っていく。


「おばちゃーん!」


 お店に入り、少年が叫ぶと奥から老婆が出てきた。


「あらあら、今日も買いに来てくれたのかい?」

「うん。ここのお菓子が一番、美味しいからね!」


 少年がニコニコと笑顔で話す。ええ子や……


「今日はお客さんも連れて来たよ!」

「あらあら、まあまあ。こんなボロボロの店に来てくれてありがとねぇ~」


 老婆が俺に向かって深く頭を下げる。


「あぁ、えっと……この子から美味しいと聞いたので……」

「おばちゃん! いつもの頂戴!」

「待っててねぇ」


 老婆はそう言うとカウンターの前にあるガラスのケースから食べ物を取る。


「はいよ」

「ありがとう、おばちゃん! ユリウスもこれ食べてみて!」


 少年から大福のような食べ物を受け取る。

 これ大福じゃないか?中にあんこみたいなの入ってるし……食べてみるか。


「うまっ!」


 めちゃくちゃ美味しい。完全に大福だ。この世界に大福あったんだ。


「でしょ? おばちゃんの作るお菓子が一番美味しいんだ!」

「この大福はどうやって作ってるんですか?」


 俺がそう言うと、少年とおばちゃんが首を傾げた。


「ダイフク……? なにそれ?」


 この世界では大福って名前じゃないのか?


「ごめん。故郷のお菓子と似てて、それだと思ったんだけど……このお菓子の名前って何ていうの?」


 2人が目を合わせる。


「お菓子に名前なんてないよ? お菓子はお菓子」

「そうだねぇ。お菓子に名前はつけないねぇ」


 なるほど。


 そんな話をしていると太陽が沈みかけているの気が付いた。

 やば!もうそんな時間か!?リオサに怒られる!


「もう帰らなきゃ!すみません、おばちゃん。これ、14個ください!」

「ありがとねぇ」


 お菓子を受け取り、老婆のお菓子屋さんを後にした俺たちは、メルドルの門に向かっていた。


「いやー、今日は助かったよ」

「全然いいよ!」


 甘いもの買えたし、謎の少年と仲良くなれたし、今日はいい日だな。そういえばこの少年の名前聞いてなかったな。


「ねぇ、君の名――」


 俺がそう言おうとした時、横から大きな声が聞こえた。


「何故、お前がここにいる?!」


 横を通ろうとしていた青年たちが俺たちを見て武器を構える。

 なに!?どうしたの!?


「え? なんですか!?」

「魔王……何故お前がここにいる?! 目的は何だ? 答えろ! 俺たちは勇者パーティーだ! お前をここで殺す!」


 おいおい。俺が魔王だってバレちゃってるよ。それに勇者パーティーだって?絶対にこの子を巻き添えにしたくないし、ここはさっさと逃げよう。俺がそう思って走り出そうとした瞬間――


「こっちだよ、ユリウス」


 少年が俺の腕を引っ張った。

 この子、めっちゃ力強いな!?でも地元の子なら上手く逃げれる道を知ってるかもしれない。この子の言う通りに逃げよう。


「次こっち!」


 俺は少年に言われるがままに逃げた。そうすると追いかけて来ていた勇者たちの姿が見えなくなって、声も聞こえなくなった。

 逃げ切れたみたいだ。流石、地元っ子。凄いな。


「流石、地元の子だね。君のおかげで逃げ切れたよ」


 俺がそう言うと、目の前の少年が右手を出す。


「俺の名前は『ルード』よろしくね」

「俺の名前はユリウス。知ってると思うけど……よろしく」


 俺たちは握手をした。何の握手?とは思ったけど。

 あっ、と少年が何かを思い出したかのような顔をする。


「この後、行かなきゃいけない所があった! それじゃあまたね! ユリウス」

「ああ、またね」


 ルードはそう言うとそそくさとどっかに行ってしまった。

 最近の少年は元気だなー。また、か。多分もう会うことはないかもなー。なんて考えながら、俺は帰路についた。




 俺は会議室兼客間で買ってきたお菓子を食べていた。

 マジでめちゃくちゃ美味しい。また今度買いに行こう。今日の事を考えると、流石に次は変装していった方がいいな。

 レオが扉を開けて入ってきた。


「何か美味いお菓子買ってきたらしーな」

「そうなんだよ。食べてみて」


 レオに買ってきたお菓子を渡す。レオがお菓子をツンツンする。


「なんだ? この白い変なお菓子は?」

「まあ、食べてみなって」


 レオが美味いと声を上げる。

 そうだろうそうだろうと頷く俺。


「そういえば、メルドルに行ってきたって聞いたけど、大丈夫だったか?」


 レオがお菓子を食べながら話す。


「大丈夫? 何が?」


 俺がそう言うと、近くにいたリオサが話に入ってきた。


「メルドルに、大魔王ルードが来ていたようですよ」


 ルード……?確か今日仲良くなった少年がそんな名前だったな。


「へ、へぇ。どんな奴なの?」


 まさか、な……


「大魔王ルードは魔王連合の大魔王で、少年のような風貌から舐められがちですが、連合の中でもトップクラスの実力者との噂です。メルドル出身らしいので、来ていたようですね」


 まじかよ……あの少年、大魔王だったのか……

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