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ケーテスのスーラ進軍②

 戦いの当日の朝、俺たちは作戦会議をしていた。


「サリア。それと、レオとロウは先にスーラに行って、このことをスーラリオに伝えてきてくれ」

「はい! 分かりました!」


 3人はそう言うと、部屋を飛び出していった。


「そして3人とも。絶対に殺しはダメだよ」


 皆が頷く。俺たちは人を殺さない。


「皆は大魔王グランテレスまでの道を開いてくれればいい。3人で千人を相手するわけだから、無理そうならすぐに離脱してね。自分の命優先で頼むよ」

「頑張って、魔王様の道を開けるっス!」

「りょーかいだ魔王様!俺たちが道を開けて魔王様が大魔王の野郎をぶっ飛ばす。今日はいい日になりそうだなぁ!?」

「そうですね、レオ。大魔王を倒したら、魔王様の名とガルトーヴァの名が広まる事、間違いなしです」


 あんまり広まって欲しくないけどね……でも、そうは言ってられない。スーラが崩壊するのも、スーラリオが殺されるのも、悲惨な戦場も俺は見たくないんだ。だから戦争が始まる前に――


「行こうか」




 スーラの南側、スーラとケーテスの国境付近にある荒野の岩陰で、俺たちは待機していた。


「魔王様、来ました。ケーテスの軍勢です」


 リオサがそう言うので俺も一緒に見る。うわぁ、滅茶苦茶強そうな奴らばかりじゃん。


「グランテレスはどこにいる?」

「あれが、グランテレスっス!」


 ナモが指を指した方を見ると――


「でっか!」


 レオよりも大きい筋肉隆々の金髪で短髪の大男が歩いている。3m近くあるんじゃないか?


「初めてグランテレスを見たんスが、凄い迫力っスね!」

「あれが、大魔王……」


 大魔王になるには魔王自身の強さも必要だと聞いた。大魔王ってもしかして、あんな化け物みたいな奴ばっかなのか?


「そろそろ行きますよ。魔王様」

「うっし!」

「よーしっス!」


 リオサと他の皆は覚悟を決めているようだ。俺も覚悟を決める。


「よし!行くぞ皆!」


 俺たちはケーテスの軍勢の前に出た。そして――


「悪いな。ここから先には行かせないぞ!」


 計画通り、3人が道を開けるように俺の前に立って敵をなぎ倒す。


「退けよ雑魚どもがぁ!魔王ユリウス様が通るぞ!」


 レオ!凄い強いし頼もしいけど、恥ずかしいからやめてくれ!


「敵襲!敵襲!」


 敵軍が騒ぎ出す。


「こいつらなんなんだ!?」


 3人とも強いぞ!思ったよりも簡単に道が出来ていってる!この調子ならすぐ大魔王の所に行けそうだ!

 そう思った時だった――


「はーい。ストップぅ」


 一番前を走っていたレオが止まる。


「レオさん!?どうしたんスか!?」


 レオの前にレオと同じくらいの身長のヒョロっとしたロン毛の男が立っている。

 見ただけでなんとなくわかる。こいつは多分強い。


「俺がこいつの足止めしとくからさぁ、先行ってくれ」


 レオがそう言うので――


「頼みましたよ」

「頼んだっス!」

「死ぬなよレオ!」


 俺たちはまた前に進みだす。


「いかせねぇよぉ!?」


 ヒョロロン毛が俺たちへ攻撃しようとする。


「てめぇの相手は俺だ!」


 そうレオの声が後から聞こえた。この作戦はスピード重視だ。相手が冷静になって俺たちを囲みだしたらそこで終わる可能性が高い。だから、任せるしかない。




 もう2人が何人、倒したか分からない。かなり疲れている様子の2人。俺も一緒になって戦いたいが、大魔王の強さがわからない以上、変に体力を消耗させるわけにはいかない。

 頑張ってくれ2人とも……!


「見えました! グランテレスです!」


 体格がいいから見えやすいな。もうすぐだ!


「魔王様! リオサさん! 伏せてくださいっス!」


 ナモはそう言うと大きくしたハンマーを振り回し始めた。そうすると敵がハンマーを避けるために後退し、ナモを中心に円状の空間が出来た。


「今っス! 魔王様! ハンマーで飛ばすっス!」


 ナモは俺をグランテレスの所にハンマーで吹っ飛ばすみたいだ。


「いいぞ! ナモ! 回してくれ!」

「はいっス! うおぉぉ!!」


 力いっぱいハンマーを振るナモ。ちょうどいいタイミングでハンマーに向かってジャンプする。

 今だ……!


「いっけぇぇ!!」


 俺は野球ボールのように宙を飛ぶ。上から見ると綺麗な人の道が見えた。2人の頑張りがよくわかる。

 そして今からは――


「俺が頑張る番だ……!」


 俺は大魔王の前に着地した。そして顔を上げる。


「初めまして。大魔王グランテレス。俺はガルトーヴァの魔王ユリウス。お前を倒しに来た」


 周りの兵士が俺を囲んで、戦闘態勢に入る。

 俺は予め考えていた作戦があった。サリアが言っていたんだ。この大魔王はキレやすいって。だから――


「うわぁ、だっせぇーな。大魔王なのに配下にだけ戦わせて自分は戦わないとか……ありえないだろ?もしかしてビビってる感じか?」


 俺は半笑い気味に言う。

 効いてくれ!馬鹿であってくれ!頼む!


「なんだと……? 俺が?この大魔王の俺様がビビってるだと?」


 お?


「あぁ、そうだよ。ビビってるね。俺に」

「いいだろう。お前らは手を出すな。分かったか?」


 兵士たちに目配せするグランテレス。周りの兵士が下がり始めた。

 これでタイマンだ。タイマンなら勝ち目がある。こいつが馬鹿で助かった。


「来いよ!」


 俺が挑発すると、凄い勢いで向かってくるグランテレス。

 そしてグランテレスが、拳を思い切り振りかぶる。

 何か……遅くね……?

 そう思いながら俺はグランテレスの拳を躱し、グランテレスのお腹を思い切り殴る。


「あぐぅッ!!」


 グランテレスはそう唸ると軽く吹っ飛んだ。巨体なので砂ぼこりが舞う。俺はすかさず戦闘態勢に戻る。だが一向にグランテレスは起きてこない。

 どうした……?

 砂ぼこりが晴れ、グランテレスが見えた。泡を吹いて倒れている。


「大魔王様が……負けた……!?」


 周りの兵士が騒ぎ始めた。

 え?終わり!?まさかの一発KO!?

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