ケーテスのスーラ進軍①
「魔王様!」
「大変です!」
ん!?なんだなんだ!?
凄い勢いで寝室の扉を開けたのはレンとロウだった。
「どうしたの2人とも? 何か問題でも発生した?」
「大変です、魔王様」
2人の後ろからサリアがそう言いながら現れた。
この3人にはガルトーヴァの諜報部隊として動いてもらっている。だから、この2人の慌てようからして、大きな問題が発生したのだろう。
「勇者が向かってる……とか?」
「いいえ」
サリアが食い気味に言う。
「ケーテスがスーラに進軍を開始いたしました」
「なに!?ケーテスがスーラに進軍を開始しただって!?」
「……今、全く同じ事を言いましたよ、魔王様」
……
「で、ケーテスってどこ?」
配下の皆が城の客間に集まっている。客間は会議室としても使っている。
「ケーテスはスーラの南側に位置する国で、魔王連合の大魔王が統治しています。そして、進軍を始めたのがつい先ほどとのことなので、明日のお昼頃にはスーラへの攻撃が始まると予想されます」
リオサが地図を指差しながら説明を始める。
「魔王連合? それに大魔王って、そんなのあるんだ?」
「はい。魔王連合とは勇者連合に対抗するべく、魔王が集まって結成された組織で、上位の7人は大魔王と呼ばれています」
勇者連合に魔王連合……そんなものがあるのか……
「大魔王はどうやって決まるの?」
「大魔王は統治する国の大きさと国力。そして、魔王自身の強さで決まります」
そんな大魔王様が今回、スーラに侵攻してるってわけか。同盟を結んでるし行かないわけにはいかないよな。ただ、魔王連合ってのとはあまり関わりたくないな。
「どうしてそんな大魔王様がスーラに攻撃を仕掛けてるんだ? 大魔王って事は国もでかいわけだろ?」
土地を広げたいのか?でも、スーラって結構前からあるっぽいし、何で今なんだろう?
「それがどうやらガルトーヴァが関係しているようで……」
サリアが話に割って入ってくる。
「どういう事?」
俺たちが何か無意識にやっちまったのか?いやでも、変なことしてないよな?
「どうやら、ケーテスはスーラに傘下に入る事を命令していたらしいのです。が、スーラはそれを断り続け、ガルトーヴァと同盟を結んでしまった。それがこの争いの発端みたいです」
それだけの理由で進軍って……ケーテスはかなり好戦的な国みたいだな。
「何でスーラはケーテスの傘下に入らなかったんだ? 入ればこんな事にはならなかったんじゃ?」
「ケーテスの大魔王はかなり非道で極悪人です。魔王になるために大量殺人をしたような奴です、そしてスーラの魔王はお優しい方なので断っていたのでしょう」
魔王になるために人を殺した?そういえば、魔王ってどうやってなるんだ?俺がどうやって魔王になったのかも知らないや。
「今更なんだけどさ……」
「はい?」
「魔王ってどうやってなるの?」
「……本当に今更ですね……」
そういうとリオサが説明を始めた。
「魔王という称号を得るには条件があります。多数の人間の前で非道な行いをし、それを周囲に周知させることです。そうして多くの人間が対象を【魔王】だと認識した時、その者は魔王の称号を得ることができます」
「それじゃあさ、俺はどんな行いをしたんだ?」
俺は怖くなった。自分が魔王になった時、とんでもない事をしたんじゃないか?と。もし、俺も大量殺人なんてしてたらと考えると苦しくなる。
「魔王様は非力だったので、闇ギルドに多額の報酬を払いました。そして闇ギルドが行う仕事先の壁に、自分の名前と姿、魔王である事を書かせたのです。そうして魔王になった。という感じですね」
ショボ過ぎだろ……俺。
皆やめて……!俺をそんな目で見ないで……!それは俺だけど俺じゃないんです!
「なあ、魔王様ぁ。前から気になってたんだけど、自分の事を忘れすぎじゃねぇか?」
レオが俺に向かって言う。
「レオ。魔王様が毒を盛られたのは知っていますね?」
「あぁ、知ってるけど?」
「毒を盛られたあと、目が覚めた魔王様は記憶をなくされていたのです」
「ふーん。そういうことね」
リオサが俺の代わりに説明する。
「あー! それ聞いたことあるっス! 配下に毒を盛られて死んだっていうアホ魔王っスよね!? それ魔王様だったんスか!?」
おい。アホ魔王とはなんだアホ魔王とは。まあ、確かに俺が入る前のユリウスは多分アホだったんだと思うけどさ。
「ナモ。魔王様に失礼ですよ。ここにおられるのは前のアホ魔王様ではございません。ですよね?魔王様?」
リオサの言う通り。俺は前の、アホ魔王とは違う。ただ、リオサの言い方に少し引っかかる。もしかして、中身が違う事に気付かれてるのか?
「そうだね。俺は前とは違う」
何か色々話が脱線しちゃったけど本題に戻ろう。
「ケーテスの軍勢はどのくらいいるの?」
相手の事を知らなくちゃ作戦の立てようがない。ケーテスの大魔王が非道なのはわかったけど、強さがわからない。
「見た感じでは千人はいるかと思われます。そして数匹の魔獣も」
「千人かー。結構多いな」
「はい。スーラの兵士は4百人程度、普通に戦えばケーテスの圧勝でしょう」
サリアの情報通りならケーテスは確実に負ける。しかもその人数差だ。俺たちが行った所でどうにかなるのか分からない。しかもこれは戦争だ。殺さなければいけなくなる。
「誰も殺さないで終わる方法とかないかな?」
「絶対ではないですが、1つだけあります」
「それは?」
「ケーテスの大魔王。グランテレスを戦が始まる前に討てばいいのです」
そうか。敵の大将を討てば戦いが始める前に撤退する可能性が高い。大魔王だって殺さなくていい。ボコボコにして敵兵に大魔王が戦えない、というのを見せつければいいんだ。
「よし。それで行こう」
俺たちは戦いの準備を始めた。




