↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/4

エピローグ いつか来る平和を信じて

 さてゴールデンウィークが終(お)わった。今日(きょう)も学校(がっこう)での日常(にちじょう)が始(はじ)まる。教室(きょうしつ)では休暇(きゅうか)中(ちゅう)に何(なに)をしてたか、生徒(せいと)同士(どうし)での話(はなし)に花(はな)が咲(さ)いていた。


「ねぇ、どこか旅行(りょこう)してきた?」


「うん。異世界(いせかい)で空(そら)を飛(と)んで、魔(ま)獣(じゅう)を退(たい)治(じ)したりしてたよ」


「はいはい、ゲームの話(はなし)ね。モンハンっていうんだっけ、私は遊(あそ)んだことないけど」


 私の友(とも)だちが、適当(てきとう)に話(はなし)を聞(き)き流(なが)してくれる。都合(つごう)がいい女子(じょし)で何(なに)よりだ。


「……でも貴女(あなた)、ちょっと雰囲気(ふんいき)が変(か)わった? 何(なん)だか、たくましくなったみたい」


「あー、わかる? 旅(たび)が私をワイルドに成長(せいちょう)させたのよね。可愛(かわい)がってあげるわよ、子猫(こねこ)ちゃん」


「か、からかわないでよぉ。もう……」


 隣(となり)の席(せき)の彼女(かのじょ)が、顔(かお)を赤(あか)くして俯(うつむ)く。この子(こ)は私のことが好(す)きなんだよね。テレパシー能(のう)力(りょく)があると、そういうことがわかってしまうのだ。教室(きょうしつ)に先生(せんせい)が入(はい)ってきて、そろそろ一(いち)時(じ)間(かん)目(め)の授業(じゅぎょう)が始(はじ)まる。


『どう? 可愛(かわい)い子(こ)でしょ、私の友(とも)だち』


 そう私が、異世界(いせかい)からテレパシーで妹(いもうと)に話(はな)しかける。実(じつ)は今(いま)、教室(きょうしつ)で授業(じゅぎょう)を受(う)けているのは、私に成(な)りすました妹(いもうと)なのであった。私たちは他(ほか)の誰(だれ)にも聞(き)かれない会話(かいわ)を繰(く)り広(ひろ)げる。


『うん。こっちの世界(せかい)の女子(じょし)っていいねぇ。誰(だれ)も何(なに)も殺(ころ)してない、清(きよ)らかな存在(そんざい)だわ。平和(へいわ)の尊(とうと)さが身(み)に染(し)みるなぁ。私も、この子(こ)を好(す)きになっちゃいそう』


『なっていいよ。私たち、好(この)みも似(に)てるんだから。将来(しょうらい)は三人(さんにん)で付(つ)き合(あ)ってもいいんじゃないかな。彼女(かのじょ)も同(おな)じ顔(かお)の私たちを歓迎(かんげい)してくれると思(おも)う』


 長(なが)く家(いえ)に留(とど)まったためか、妹(いもうと)は連休(れんきゅう)が明(あ)ける時期(じき)になって「まだ、帰(かえ)りたくない」と言(い)い出(だ)したのだ。三年(さんねん)も異世界(いせかい)で過(す)ごしてたんだから無理(むり)もなかった。なので私は帰宅(きたく)した両親(りょうしん)に事情(じじょう)を話(はな)して、私が妹(いもうと)の代(か)わりにしばらく異世界(いせかい)へ行(い)くことを了承(りょうしょう)してもらったのである。今(いま)は妹(いもうと)も両親(りょうしん)も、長(なが)い期間(きかん)を一緒(いっしょ)に過(す)ごすのは久(ひさ)しぶりだから大喜(おおよろこ)びしている。


『お姉(ねえ)ちゃんの方(ほう)はどう? 勇者(ゆうしゃ)の仕事(しごと)って面倒(めんどう)じゃない?』


『そんなこともないよ。学校(がっこう)でのお勉強(べんきょう)よりは向(む)いてる気(き)がするなぁ。貴女(あなた)は久(ひさ)しぶりの高校(こうこう)生活(せいかつ)が楽(たの)しいんでしょ。やっぱり、いい関係(かんけい)だよね、私たち』


 ちなみに私は、異世界(いせかい)でもスマホで動画(どうが)を見(み)たりしている。私と妹(いもうと)が次元(じげん)を超(こ)えて繋(つな)がっているからか、電波(でんぱ)が普通(ふつう)に入(はい)るのだ。テレポートで渡(わた)せば、妹(いもうと)がスマホを充電(じゅうでん)してから送(おく)り返(かえ)してくれる。


 テレビ番組(ばんぐみ)もマンガも配信(はいしん)で見(み)られるから不自由(ふじゆう)を感(かん)じないし、私の衣食住(いしょくじゅう)は王(おう)都(と)で、全(すべ)て無料(むりょう)で提(てい)供(きょう)される。楽(たの)しい楽(たの)しい、異世界(いせかい)ライフである。私たち姉妹(しまい)を恐(おそ)れている人(ひと)も多(おお)いのは事実(じじつ)だけど、だからと言(い)って、王様(おうさま)だって勇者(ゆうしゃ)と完全(かんぜん)に絶縁(ぜつえん)したい訳(わけ)じゃないのだ。


『じゃ、ちょっと仕事(しごと)に専念(せんねん)するから。私の分(ぶん)まで授業(じゅぎょう)を聞(き)いておいてねー』


『うん、気(き)を付(つ)けてね、お姉(ねえ)ちゃん……。……愛(あい)してる』


 じんわりとした胸(むね)の温(あたた)かさを感(かん)じながら、通話(つうわ)を切(き)った。青空(あおぞら)の下(もと)、私は空(そら)を飛(と)びながら国(こっ)境(きょう)付近(ふきん)のパトロールを続(つづ)ける。他国(たこく)の軍勢(ぐんぜい)が攻(せ)めてくるのは珍(めずら)しくもなくて、そんな世(よ)の中(なか)では、まだまだ勇者(ゆうしゃ)の力(ちから)が必要(ひつよう)とされるのである。


 いつまでも付(つ)き合(あ)う義理(ぎり)はないけど、スピード違反(いはん)を気(き)にせず空(そら)を飛(と)べる生活(せいかつ)は中々(なかなか)に捨(す)てがたい。戦(たたか)い疲(つか)れた妹(いもうと)のためなら、どんな脅威(きょうい)も殺(ころ)して見(み)せよう。いつか来(く)る平和(へいわ)を信(しん)じて、今日(きょう)もスマホ片手(かたて)に私は異世界(いせかい)の空(そら)を駆(か)け抜(ぬ)けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。