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きまぐれ

「もちろんすべての思いに対して行動がズレてるわけじゃない」

「でも、君たちは仕事や学校といった大きなものになると、簡単に思いと行動がズレてしまうんだ」

「それにね、君たちは『幸せになりたい』と思って生きてるかもしれないけど、それってつまり『今は幸せじゃない』って思ってるってことなんだよ」

「だから、まずはそこに気付いて、『なんで幸せじゃないって感じてるんだろう?』って疑問に思わなくちゃ」

「自分の思いに気付いたらあとはしっかり考えるんだよ・・・」


 そこまで話したところでルーラーは突然口を閉じる。


「少し喋り過ぎちゃったね」

「まぁ、君たちもこれから少しは自分の思いに目を向けて・・・」

「俺からも聞いていいか?」

「なんだい?」

「お前はなんでこの国をこんな風にしたんだ?」


 ジョンは素朴な疑問をぶつけてみる。

 ルーラーの行っている国民の監視はやはり常軌を逸していると思ったからだ。


「それは楽しいからだよ」

「!?」

「君たち人間は簡単に操れるから見ていて楽しいんだ」

「みんなが楽しんだり、苦しんだりしてるのが面白いんだよ」


 ルーラーは嬉しそうな表情で語るが、ジョンとエヴァは怒りに満ちた表情を浮かべる。


「それのどこが面白いんだ!」

「まるで悪魔だな」

「いいねそれ!悪魔か・・・その名前を僕の新しい名前に採用しようかな?」

「ふざけるな!」

「ふざけてないよ」

「それが僕なんだ」


 エヴァは話にならないと言った表情で、そっぽを向く。

 ジョンはそれでもなんとか食い下がる。


「君たちも楽しいことが好きだろう?」

「僕もそれと同じさ」

「なんで君たちだけ楽しんで、僕が楽しんじゃいけないのさ」

「それに大半の国民にとってここは天国だろう?」

「だからさ、楽しくないのは君たちだけなんだよ」

「そんなことない!」

「そんなことあるさ!!」

「だって!誰も君たちみたいに声を挙げてないんだから!」

「自分の本当の思いに嘘をついてまで国に甘えてるんだよ」

「甘えてるから僕も甘えられるような仕組みを提供してあげてるじゃないか」

「実際この国には幸せが溢れてるだろう?」


 ルーラーはとても楽しそうな笑みを浮かべて話す。


「人間関係も面白いよ」

「義理だ人情だと言ってみんな自分の思いではなく誰かの思いで動いてる」

「で、みんなでそんな社会を築きあげるからそれに息苦しさを感じる人は無理やりそれに合わせてる」

「人を思う、社会を思うなんて言えば聞こえはいいが、それはつまりみんなで甘え合ってるってこと」

「だから、人間関係は簡単に切ることができない」

「そんなことをしてるから人間関係に苦しむ人がいるのにね」

「もし人間関係を築くなら互いに『楽』じゃないとダメだ」

「互いに干渉し合う関係は絶対に苦痛が生まれる」

「互いを好きにさせるのが本当の人間関係だよ」

「でも、君たちには無理だね」

「で、僕はそれを見てるのが楽しい」


 ジョンとエヴァは完全に諦めていた。

 ルーラーを止めることも、変えることもできないことを。


「あっ!そういえばさ、外はすでに片付いているよ!」

「それってどういう・・・」

「みんな死んじゃったってこと」

「!?」

「君たちと話している間に殲滅は終わったみたいだ」

「生き残ってるのは君たちだけ」

「本当に革命ができるとでも思ってたの?」


 その言葉と同時にルーラーは大笑い。

 ジョンとエヴァはともに膝から崩れ落ち、大きなショックを受ける。


「ねぇ?いまどんな気持ち?」

「ショック受けたの?悲しいの?怒ってるの?」

「もう一度頑張って仲間を集めて、作戦を練ったら成功するかもよ?」

「そしたら幸せになれるかな?」

「もしかしたら別のやり方も見つかるかもよ?」


 エヴァはその言葉に大声を上げて涙を流す。

 ジョンは気が抜けてしまったのか、放心状態だ。


「ありゃりゃ、女の子の方は元気だけど、男の子の方は完全に壊れちゃったかな?」

「そこまで傷つけるつもりはなかったんだけど」

「まぁいっか。君たち、国から逃がしてあげる」


 エヴァはルーラーが馬鹿にしていると思って激昂し、彼の目の前まで詰め寄る。


「ふざけるな!」

「だから、ふざけてないって」

「じゃあ何で!」

「きまぐれだよ」

「君たちを見てたらさ、逃がしてあげたくなっちゃった」

「なんでだろう?よくわかんないけど、2人を隣国まで運んであげるよ」


 ルーラーの言葉にジョンは静かにを顔をあげ、どういうことか尋ねる。


「それは本当なのか?」

「あぁ、本当だよ。ちょっと待ってて、すぐに迎えを呼ぶから」


 ルーラーは軍へ連絡を入れると、セントラルタワーの入り口まで迎えを手配する。


「大丈夫だよ。心配しないで」

「君たちを傷つけさせはしないから」


 途端にやさしくなるルーラーにジョンとエヴァは不信感を募らせる。


「本当に大丈夫なのか?」

「だから言ってるだろ?きまぐれだって」

「でも、もし、まだやるって言うんなら、ここで君たちを終わらせてあげる」

「わかった、従う・・・」


 ジョンとエヴァはルーラーの言うことに従うことにして、黙って迎えが来るのを待つ。


「着いたみたいだよ」

「お前に感謝なんてしない」

「いいよ」

「もう二度と戻ってきちゃダメだよ」

「もし戻ってきたら次は逃がさないから」


 ジョンはルーラーの意味が分からない行動にイライラを爆発させる。


「お前は一体何なんだよ!」

「悪魔だよ」


 ルーラーは表情はとても不気味な表情で彼らを見送る。

 外に出たジョンとエヴァは本当に軍の車が来ていることを確認すると、そのまま乗り込んだ。

 周囲は多くの警官や取締局員、軍人に囲まれていて、革命軍メンバーの亡骸とともに瓦礫が散乱していた。


 2人の戦いはここで終わりを告げた。


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