FANTASY GUILD 英雄の黎明編 第八話 日常
アルの荷物を取りに王都に戻ってきたアメ。
そこでアメは『大罪の翼』が載っている掲示板を目にする。そこにはアメのまだ知らない二人のメンバーが載っていた。
そんな中アルは、とある人物と接触する!
「ん、んー......」
私は、カーテンの間から差し込む陽の光に照らさせれて目を覚ました。
「私、初めて来る所で爆睡するなんて、恥ずかし!」
アメが寝ていたベッドの隣にある小さな棚の上にドレスの寝間着が置いてあった。
『アメちゃんへ 目が覚めたら、この服に着替えてね。着てた服は洗うから私に持ってきてね。』
ルナさんからの置き手紙が置いてあり、とても綺麗な字で書かれていた。
「ルナさん字も綺麗とか......最高じゃん」
アメは置かれていたドレスの寝間着に着替え、来ていた服を持って下に降りた。
「お、おはようございます」
「あ、おはようアメちゃん。服はそこのカウンターに置いといてくれない?」
「分かりました」
ルナさんは、昨日と変わらずお酒の瓶を並べたりしている。
「まさか、アメちゃんがこんなに寝るとは思わなかったよ」
「え、私そんなに寝てたんですか!?」
「だって、アメちゃん昨日の朝ここに来て、そこから少し話してからずっと寝てるんだもん」
そう言われ、アメはとても恥ずかしくなり、さっきまで見ていたルナの顔が見れなくなった。ルナはアメの反応を見て笑っている。
「はい、これサンドイッチ。ここに来てからなにも食べてないから」
「ありがとうございます!あの......昨日の続きになること聞いてもいいですか......?」
「良いわよ」
「昨日、『称号』っては教えてもらったんですけど、それは何が由来で決まっているんですか?」
このとき、ルナはカノンのことに聞かれるのかとヒヤヒヤしていたが、違う事を聞かれ一安心していた。
「由来は様々よ。自分の使う魔法からだったり、戦闘スタイルや色々なの」
「そうなんですね。あの、イキシアさんの称号って......」
「あ、起きたのかアメ」
「はい、ぐっすりでした」
「それは、良かった」
アルさんも私と同じくらい寝たのかな......
「あの、アルさん。お願いがあるんですけどいいですか?」
「ん、なに?」
「実は、王都の宿泊していた所に荷物を置いてきてしまったので取りに行きたいんです......」
「アルあんた、もしかして無理矢理ここまで連れてきたの!?」
ルナの少し怒りの入った声がバーに響いた。
「ち、違げぇよ!モンスターに襲われてるのを助けて、足怪我してたから歩けないと思って野宿して、朝こっち連れてきたんだよ!」
「ということは、あんた空間魔法使ったわね」
「うっ......」
「え、いつ空間魔法使ったんですか!?」
アメが驚きの声を上げながら聞いてくる。そのとき、アメとルナは少し目を合わせて不思議そうな顔をしていた。
「朝、ここに来るとき森を歩いてるときに、空間魔法で歩く距離を縮めたんだ」
「空間魔法にそんな使い方があったんですね。普段使いしてる物を別空間に収納できるぐらいしか知らなかったので驚きです」
ここでルナがふと気になった事をアメとアルに聞いてきた。
「アメちゃんはここには東の森から直接来たって言ってたけど、荷物とかはどうしてるの?空間魔法で別空間に置いてるの?」
アメは一時ポカンとしながら考えていると、ふと我に返り「アーーー!」と大きな声で叫ぶ。外にいた鳥達がアメの声に驚き急いで飛んで行った。
「王都の宿に置いてきたままだ!アルさんどうしましょ!?」
「じゃあ王都まで取りに行くか。王都までだったら瞬間移動ですぐに着くからアメの準備が出来たら行くか」
「はい!」
そういい口にサンドイッチを咥え自分の寝ていた部屋に駆け足で戻って行った。
するとアメと入れ違いでイキシアが降りてきた。
「ねえアメ。王都に行くの?」
「あぁ、行くけどシアも一緒に行くか?全然構わないけど」
「いいえ行かないわ。そうだアル。あんたに良い話があるわよ」
「良い話?王都で新しいドーナツでも販売されたのか?」
イキシアは少し呆れた顔をし、アルの顔は見ず椅子に座り話を続けた。
「違うわ。昨日私の血鬼ちきが一人連絡してきたわ。王都ではないけど、この国のどこかにあんたの魔力を感じたそうよ。微弱だけどね」
「それ、本当なのか?という事はあるのか?この国に......?」
ここで、イキシアはアルの目を真剣に見て答える。
「えぇ、あると思うわ。あんたの魔力から作られた魔剣の一つがね」
アルは自分の拳を強く握り何かしらの確信を得た。
急に俺の魔力から作られた魔剣の反応。この国は片っ端から探して見つかったのは二本。師匠の家に一本。残りの四本はこの国には無くて他の国に有ると思ってた。でも、急に魔剣がこの国に現れた。俺の魔力から魔剣を作ったのを知ってるのは、『大罪の翼』のメンバーの他にアメだけ。そして俺の魔力から魔剣を作り、残りの四本の魔剣の在処を知ってると思われる師匠だけ。それじゃあいるのか......?この国に......師匠が。
ゴーンゴーンと時計台の針が正午を指して王都全体に聞こえるように鐘の音が響き渡っている。
「本当に一瞬で王都に着いちゃった!さっきまでバーにいたのに!スゴ!」
王都に来るのは二回目のはずのアメが初めて訪れたかのように新鮮な反応をしている。そんなアメにアルは少し大きめに声をかける。
「一時間後にあの時計台の下集合でいいか?俺も少し用事があるから、荷物取ったら近くを散策しといてくれないか?」
時計台の時計はお昼前の十一時を指していた。
一時間後か......メメアちゃんの所に行ってみようかな。依頼受けてから顔出してないから心配してくれてるかもしれないし。
「分かりました!それじゃあ一時間後に!」
そう言いアメは宿の方に歩いて行った。その後ろ姿をアルは見届けると近くの路地裏に入っていった。
「こっちに瞬間移動するとき使用する魔力抑えたし、残溜した魔力も払ったはずなんですけど、なんでここに居るって分かったんですか?」
すると、影の中から女の人が出てきた。その人は、黒のズボンにシャツをを着てしっかり黒のネクタイまでしていた。しかし、スーツのジャケットは両肩にかけていた。腰には一本日本刀が納められていた。
その人はアルを見てニヤリと笑った。
「良かったー!宿の人が私の荷物預かっててくれて。荷物回収できたから早めにメメアさんの所に行こうかな。アルさん待たせるといけないし」
アメはメメアが働いている役所に走って向かった。街並は数日前と変わっていない。そんな街並の中アメは、ある物が目に入って足を止めた。そこには、掲示板が建っていてそこには手配書が貼ってあった。
「『国外追放 アル・ラファエルハート この顔を見たら役所、騎士団にご報告を』アルさんって本当にヤバいんだ。あ、他のメンバーも載ってる!『三つ国の騎士団を壊滅まで追い込んだ女帝』『色んなところから剣を作り出す剣聖』『瞳に映った者は全て消し去るエルフ』いやエルフってイキシアさんのことだろうけど......説明怖!」
アメは掲示板に載っていた四人の手配書を見終えて役所に行こうとしたとき、ある二枚の手配書が目に入った。
「ん?この二人誰だろう......残りのメンバーの人達なのかな。まあ後でで良いや。早くメメアちゃんの所行こっと!」
『禁忌に触れ崩壊を呼び寄せる者』
『奇跡の種族で神に等しい者』
名前が書かれている部分は切り取られていた。
「もしかして、アルさんもこういう説明もあるのかな?」
そんなことを掲示板の前で言っていると、鎧を着た一人の男が掲示板の所で足を止めた。
「今アルと言ったか?この手配書のアルを知っているのか?知っているなら教えてもらおう」
その人はアメを見下げながら話しかけてきた。その人はとても長身で目付きが怖く髪型はこの世界では中々見ないパーマだった。
「い、いえ知りません。ところであなたはどちら様でしょうか......?」
アメが恐る恐る聞くと鎧を着た男は答えてくれた。
「私は王国騎士団・副団長 アイアン・ハイフリーズだ。この掲示板に載っている『大罪の翼』を追っている者だ」
お、王国騎士団!?アルさん達のことを言ったらアルさん達が捕まっちゃうかもしれない......早くこの場から逃げよう!
「そ、そうなんですね!私はこれから寄る所があるので失礼します!」
そう言い残しその場をすぐに立ち去ろうとすると、アイアンに肩に手を置かれ止められた。アメは手を振りほどこうとしたが、アイアンの手はピクリとも動かない。
「は、離して下さい!」
「そういう訳にはいかない。貴様は私に嘘をついた」
「そ、そんな!私ウソなんてついてません!言いがかりはやめて下さい!」
「知らないのか?気持ちの動揺で己の持っている魔力は歪んで、心の焦りなどが分かるんだぞ。貴様冒険者だろ?何故そんな基本を知らない。そして知られない為の対処法も知らないとみる。貴様、冒険者として終わってるぞ」
アメは膝から崩れ落ちた。最後の言葉はアメの心に深く刺さった。恐らく消し去ることが出来ない傷を。
冒険者としての基本?そういえば私......冒険者になることだけしか考えてなかったから冒険者としての基本知らないんだ。私軽い気持ちで冒険者になろうとしてたんだ......
「ふん、まあいい。知っていてもそこら中で噂になっている話だろうからな」
アイアンが崩れ落ちたアメの前から立ち去ろうとした瞬間誰かがアイアンの腕を掴んだ。
「おい、今の言い方はないだろ。謝れ、アメに」
それはアルだった。アルは怒っていた。
「貴様は!......探したぞ!アル・ラファエルハート!」
「ストーカーかよ変態が。それよりアメに謝れ」
「謝ったら私と戦ってくれるのか?それなら、そこの女が気が済むまで謝ろう」
アルの怒りはさらに増していった。
「バカにしてんのか?今すぐにでも、あの世に送ってやろうか?」
「それはこちらとして、とてもありがたい」
アイアンの答え方に限界がきたのか、蹴りをしようとしたとん上空から声がした。
「待て!」
その声にアルの動きがピクリと止まった。
街は急に影に覆われた。アメが上空を見ると、そこには海賊船が浮かんでいた。アメは船が浮かんでいることにも驚いたが、それ以上に船の大きさに驚いた。
「デカッ!」
その船の大きさは山一つと変わらない大きさだった。
そして、船の上には人が一人立っていた。その人はアルがさっき会っていたスーツを着た人だった。
「アル!今日はそこまでだ。ん?隣にいるのは彼女か?その娘も連れて来い!」
「彼女じゃねぇ!」
アルは怒りながら魔法を唱え、初めて会ったときと同じように翼を生やした。前と違っていたのは片方の翼が漆黒に染まっていたことだった。アルはアメの背中に手を廻し抱きしめた。
え!?ウソウソ!あのアル様に抱きしめられてる!最高の一時だ!
アルは浮かれているアメの事などは気にせず、船に向かって飛んだ。
「わりぃな、おっさん。勝負はまた今度だ。またなー」
「次ぎ会う時は全軍を率いて貴様を倒し、永遠牢獄にぶち込んでやる!」
「やれるもんなら、やってみなー」
アルは下瞼を軽く下に引っ張り、少しバカにした顔でアイアンを見た。その顔を見たアイアンは激怒していたが、空を飛んでいるアルとアメには何も聞こえなかった。
空を飛んで船に乗るまでは、あっという間だった。しかしアメには、飛んでいる恐怖や飛ぶスピードに着いて行けずフラフラしている。
「お前いつも王都に来ると面倒事引き起こすよな」
「い、いや、それほどでも」
「褒めてねぇよ。ところでその女の子は?結構可愛いし、どこかで見た記憶があるんだけど、どこで見たんだっけなー」
「いや、思い出すより先に船動かせよ。長いしてたら王都の迎撃部隊に狙われるぞ」
「まあ話は後で聞くわ」
スーツを着た女の人は腰に納めていた日本刀を鞘から抜き船に突き刺した。
「目的地、大罪の翼ギルドホーム。使用魔法、空間移動・透明化・物理攻撃軽減。使用魔力は最低限にし、騎士団に追跡されないようにせよ。それでは......出向だ!」
船の上には、アル・アメ・スーツを着た女の人の三人しか乗ってないはずなのに、帆が下ろされ、舵が勝手に回り始めた。船は大罪の翼のギルドホームの方向に旋回し進み始めた。
「それじゃあアル。話を聞こうか。この頼れてカッコ良くてイケメンの私、『大罪の翼』団長 ティメア・ロードナイトがね」
この度FANTASY GUILD 英雄の黎明編 第八話 日常を読んで頂きありがとうございます。
やっと団長を登場させることが出来ました!これで黎明編に登場する『大罪の翼』のメンバー全員が揃いました!
残りのメンバーは黎明編後の登場になる予定です!
黎明編は、アメの母親・アメはギルドに入るのか、イキシアの過去、この三つの物語です。
次話もよろしくお願いします。