FANTASY GUILD 英雄の黎明編 第七話 ギルドメンバー
『大罪の翼』のギルドホームにやってきたアメ。そこには魅力的な人達がいて、アメは心を惹かれつつあった。そこで、アメの母親の真実が明かされる。『大罪の翼』のギルドメンバーは何か知っているようで......?
私は昇りたての太陽の陽に照らされながら目を覚ました。起きたばかりの体には、ちょっと寒い気温だった。
「んー、さむ」
「おはよ、アメさん」
「おはようございます。アルさん朝早いんですね。」
「まあ、ここ魔物が出る森なのでどちらか一人は見張りしないといけないので......」
「すいません!自分だけ寝てしまって。ほんとにごめんなさい!」
アメは大きな声で謝った。その声に木の枝にいた小鳥達が驚いて慌てながら飛んでいった。
「大丈夫です。慣れてるんで」
なんて爽やかな笑顔。惚れちゃう。あ、もう惚れてるんだった。
「では、頭もそろそろ冴えきて思うので、そろそろ行きましょうか」
「はい!」
私達が『大罪の翼』のホームに向かって、森を歩き出して三十分程がたたった。陽も上がってきた段々と暑くなってきた。
「あの、『大罪の翼』のホームってどこにあるんですか?ほとんどのギルドは王都にホームがあると思うんですけど、『大罪の翼』はそういう訳にはいきませんよね?」
「そうなんだよ、だからこの東の森にホームがあるんだ」
「ハハ......魔物が出る所にギルドのホームがあるなんて......」
すると、アルの足がピタリと止まった。後ろにいたアメもつられて足を止めた。
「ど、どうしたんですか?」
アルの目の前には大きな樹が聳そびえたっていた。しかし、アルはその樹を見ているわけではなく、樹の根元を見ていた。そこには扉が一つあった。
「樹に扉!?」
「うん、ここが僕達のギルド『大罪の翼』のホームだよ」
「この樹が!?」
「ちょっと待っててね。今開けるから。我、アル・ラファエルハートが命ずる。扉よ開け。」
すると扉に文字が浮かび上がってきた。
『我いる所に真実あり』
アルは扉に浮かび上がった言葉の続きを言うように
「我いる所に大罪あり」
すると、扉からガチャッと音がした。
「今のは、ここの扉を開けるための合い言葉だから覚えといてね」
「はい」
「それじゃ、中に入ろう」
中に入るとそこは、薄暗くオシャレで、壁一面たくさんのお酒が置いてあった。そこはバーのような所だった。中に入ってきたのに気付いたのか、奥から誰か出てきた。その人は、バーテンダーのような服装をしていた
「あ、おかえりアル」
アメはその人を見て驚いた。なぜならその人はとてつもなく美人だったからである。
明るい紫色の瞳にキラキラしている大きな目!サラサラ黒髪を結んで大人の色気がでるポニーテール!
そしてスリムで長身の体!大き過ぎない胸!もう女の人として最高......
「あぁ、ただいま」
「その隣の娘こは?」
「後で話すよから、みんなを呼んできてもらえる?
「分かったわ」
そういい、アルと話していた女の人は奥に戻って行った。
「あの、みんなというのはもしかして......」
「そうだよ、『大罪の翼』のギルドメンバーだ」
私、本当に『大罪の翼』に来たんだ。
「連れて来たわよー」
すると、さっきの女の人の後ろを四人が付いて来ていた。奥から出てきた五人がアルとアメの前に横並びでならんだ。
「さあ、自己紹介しようか。さっき、一瞬だけ会ったこの女の人は、ここのバーのバーテンダーでありS級ランク冒険者......ルナ・ジェットブラック。称号は『女帝』」
「こんにんわ」
「は、はい!こんにちわ!」
急に声かけられて声が裏返っちゃった。でも、ほんとに最高の人だ。
「で、そのルナの隣にいる静かな男の子が、ここのバーの用心棒で同じくS級ランク冒険者。ラビ・ジェットブラック。称号は『暴虐』ちなみに、ルナとは姉弟だけど全然似てないよ」
アルは似てないと言ったが、髪色以外は瓜二つで似ていてアメからすると、どっちがルナかラビか分からない程だった。髪はとても綺麗な白髪だった。
「こ、こんにちは......」
「......」
無視された......。でもルナさんとそっくりだから、めちゃくちゃ美少年!年は私と同じくらいかな?身長は私と同じ157センチくらいかな。
「ごめんね、この子人見知りで」
「い、いえ!大丈夫です!」
私これから、こんな美しい姉弟と一緒にいれるんだ......幸せ。
「そして、ラビの隣にいる金髪の女の人がエルフのイキシア・ピーチフレイだ。みんなシアと呼んでいるよ。彼女のここでの役割は物資調達で、ここにあるお酒とかは......」
「アル!あんたどこまで話す気!?そんな知らない女連れてきてどうする気なの!?」
この人ちょっと中りが強くて怖いな......でも、何がとは言わないけど......デカいな......。何あれ、あんな怪物見たことないわ。しかも、身長170くらいあってスタイル良すぎ。長い金髪にエメラルドみたいに綺麗な宝石のような瞳最高か?そして、なんと言っても、服がヤバい。白のセーターにミニスカは一線超えちゃってるよ!胸元空いてるし......。
「まあ、待ってよシア。この人のことについては、後で必ず説明するからさ」
「ふん!」
「ごめんね、シアは気は強いけど裏では、ぬいぐるみとおしゃべりしたりして、意外な一面もあるんだ」
「変なこと言うな!アルのバカ!」
と恥ずかしそうにしながら、バーのカウンター席に座った。
「ルナ姉強いお酒頂戴!」
「はいはい......」
「話を戻すんだけど、シアはここのお酒などの物資調達が役割なんだ。そしてシアの称号は......」
「アル......私のことは、どんなに話してもいいけど、それだけは......言わないで。お願い」
そう言うと、イキシアは頼んだお酒が来るのをまたず、奥に戻っていった。アルは、しまったという顔をしていた。
「ほら、アル。またシアの気に障ること言ったね」
「あぁ......後で謝っておくよ」
アメはイキシアの聞いたらいけないことを聞いてしまう所だったのかと思い、心拍数が上がっている。
「じゃあ、気を取り直して、ここにいる最後の一人を紹介するね」
「は、はい」
「あそこの隅で踞うずくまってるのが、キリ・リュージョン。シアと同じ物資調達が役割だよ。そして称号は『剣聖』」
「け、剣聖って、過去に王国軍三万に対して一人で全滅させたあ・の・剣聖ですか......?」
「そうだよ。でもその話って君が多分、赤ちゃんぐらいのときだったと思うけどよく知ってたね」
「流石に王国軍相手に一人で勝つなんて話はあっという間に広まりますよ......」
すると、踞って寝ていたのかフラフラ立ちながら、アルとアメの方に近づいてきた。
さっきは、よく見えなかったけど、けっこう厳いかついパーカー着てて、ズボンもチェーンとかついてて、かなりオシャレな人なのかな。でも、パーカー被ってて、顔が中々見えないな。
「ねえ、アル。なんでそんな話し方なの?いつも通りにしなよ」
人差し指をアルのおでこに突きつけながら話している。
「......そうだな、俺もそろそろこの喋り方に疲れてたところだ。ありがとなキリ」
「ふん、その喋り方がイライラするだけだ」
その二人の隣にいたアメは急に口調が変わったアルをみてビックリしていた。
「ごめんな、アメ。これがいつも通りの俺なんだ。ビックリしたか?」
「いえ!ビックリはしましたけど、そちらのアメさんの方がしっくりきます!」
「そっかそれはよかった!」
アルはアメにどう思われたか心配していたが、嬉しい言葉が返ってきてアルは笑顔で笑っていた。
「ところで、そこの女は誰だ?」
質問にアルは口角を上げながら答えた。
「僕の隣にいるのは、アメ。アメ・ルーンブラッド!」
その名前に、ルナ、ラビ、キリの三人が驚いた顔でアメを見た。
「嘘でしょ!?」
「ほんとに?」
「......」
「だから、僕がギルドに入らない?って誘ったんだ」
驚いていた三人はお互いに顔を見合わせながらなにか話している。すると、話が終わったのかルナがアメに向かって話しだした。
「そういえば、ここに来たって事は野宿したのよね?上の階に空いてる部屋があるからそこで寝てくるといいわ。野宿じゃ、疲れはとれないからね」
急に「寝るといいわ」といわれアメは驚いた。
「え、いや......」
「そうだよ、アメ寝てきなよ。話はそれからだ」
アメはアルの眩しい笑顔に負けてしまい寝ることにした。
「階段上って一番右奥の部屋だからね」
「わ、分かりました......」
私来てそうそう、入ってもないギルドで寝ていいのかな......
アメが部屋に入ったのを確認すると、ルナが話しだす。
「ねえ、アル?」
「ん?」
「アメちゃんって......もしかして......」
「そうだ......アメは......」
アルは力強く拳を握っている。
「カノンの娘だ......」
アルの言葉にみんな息が詰まっている。
「それ本当にカノン姉ねえの保証あるの?」
アルはキリからの質問に真剣な眼差しで答える。
「昨日、アメが寝ているときに魔剣の力を使って記憶の中を見た。そしたら、アメの母親の記憶だけが無くなってた。」
「それがなんの保証になるの?」
「この国で特定の記憶を消せるのは一人しかいないだろ......?キリ、お前はアメがここに入ってきたときから、気付いてたんじゃないのか?」
「......。」
キリはなにも言わずに扉から外へ出て行った。キリが出て行った後、ルナが話題を少し変えようと話しだす。
「それで、これからあの娘はどうするの?」
「ギルドに入れようと思ってる......」
ここまで、ほとんど無口だったラビが話しだした。
「なんで入れるの?」
「もし、アメがカノンの力を受け継いでいたとしたら、どうだ?」
「確かに、カノンの力を受け継いでいたとしたら、僕達もとても助かるし、あのカノンの力に何回助けられたかも分からない。でも、カノンの力を受け継いでいないとしたらどう?僕達は国から追われる側で、あの娘こはまだ追われる立場にない。その判断を間違えるとあの娘の道は茨だよ?」
「確かにラビの言う通りだ。でも俺はアメに入ってほしいと思うよ......それが、カノンとの約束だから」
最後の約束にはラビ達に聞こえないような小さな声で話した。
「それに一番の問題は、そこじゃないだろアメ。入れようとしてもギルドの過半数以上の賛成がないと入れないぞ。今ホームにいるのは、四人だ。ここの四人が賛成してもあと二人は必要だぞ。どうするつもりなんだ?」
「まあ、一番良いのはマスターから推薦もらうことなんだけどな」
「いや、それは無理でしょ」
ルナとラビが口を揃えて言った。
「そういう所は似てるんだけどな。まあ、そうだよな......。で、その肝心なマスターはどこ行ったんだ?」
「王都に新しい料理店ができたとかで出かけて行ったわよ」
「ほんと自由だな......じゃあ、副マスターは?あいつ暇だろ」
「それが、マスターが連れて行っちゃったの」
アルはその話を聞いて呆れた顔をしていて、ルナはその顔を見て苦笑いしていた。
「まあ、いいや。俺も疲れたから寝るわ。アメのことはまた、明日考えるわ」
「分かったわ」
そういい、アルも奥から二階へと上って行った。
「ねえ、姉貴。ほんとにカノンの娘だと思う?」
「私も魔眼で見てみたけど、カノンちゃんと似た魔力を感じるから間違いないと思う」
「そっか......。じゃあ今度は僕らがカノンを助けないとね」
「そうだね。そう思ってアルはアメちゃんを連れてきたのかな......」
「でも、アメは自分を捨てた母親を許せるのかな......」
『大罪の翼』所属
元ギルドマスター カノン・ルーンブラッド・ヘルト
称号『革命』
ついに『大罪の翼』四人の正体を知ったアメ。そして、アメをどうやってギルドに入れさせるか考えるアルの裏で、ルナとラビは何を思うのか。次回、嘘の記憶。
無事、四人のメンバーを紹介することができました!ちょっと一安心してます。十話以内にギルドマスターの戦闘シーンが出せたら良いなと思っています。
これからもよろしくお願い致します。