FANTASY GUILD 英雄の黎明編 第二話 決めたこと
あれから数年経ち冒険が始まろうとします!
「ちょっとパパ!?私のドレスはどこ!?」
「クローゼットの中になかったか?」
貴族の親子の会話だ。下の階のキッチンや大広間からはメイド達の声が聞こえてくる。
「お食事の準備を早く済ませて。終わったら大広間の飾り付け急いで!」
と、ある屋敷では朝からバタバタしていた。
「はぁ、もうみんな今日私の誕生日だからって私より緊張しちゃって」
私の名前はアメ・ルーンブラッド。この国を代表する五大貴族の内の一つルーンブラッド家の二女として産まれた。
私は数年前、妖精のイタズラにより立ち入りが禁止されている魔物の森に連れてこられ魔物に襲われた。私は襲われたとき助けてくれた男の人を探している。助けられたことは覚えているのだが、どうやって屋敷に帰ってきたのか覚えていない。メイド達に聞いた話だが、妖精に連れていかれ行方不明になった当日の夕方に屋敷の門の前で寝ている状況で見つかったとのことだ。その後、お医者さんが来て色々と診察してくれたが、なんの問題もなかったらしい。だが、しかしこの件には不可解な事がある......。一つは、何故私は妖精に攫われたのか。妖精は持ってる魔力の量が少ない人を連れ去る習性がある。しかし、私は貴族のため普通の人より持っている魔力量は多い。さらに私は、先祖の血を濃く受け継いでいるから魔力がとても多いはずなのにどうして攫われたんだろう。そして私が一番きになるのが、何故あの立ち入り禁止の魔物の森に人がいたのか。さらに、あの男の人は天魔法を使った。さらに大天使の力をも使った....。一体何者?
色んな事を考えている時、ドアをノックする音が聞こえた。
「おい、アメ準備は出来たか?そろそろ客人の出迎えをしないといけない時間だよ」
父だった。あまりに準備に時間がかかって心配で来たんだろう。
「うん、今そっちに行く」
下に下りると大広間からいい匂いがしてきた。大広間の扉を開けるするといい匂いが強くなった。そこには、たくさんの豪華な料理が並べられ、会場が美しくセッティングされていた。
「わぁぁぁ、綺麗」
目をキラキラさせ幼い少女のように喜んでいた。
「やっと私、17歳になるんだ。これで今日から冒険者になれる!」
この国では17歳になると冒険者登録が出来るようになりギルドに所属することが許される。冒険者になる方法は、いくつか有るが17歳になってから冒険者登録をするのが一般的である。
「これはこれは、アメ・ルーンブラッド様。この度は17歳のお誕生日おめでとうございます」
アメの後ろからすっと声をかけて来た者がいた。
「まぁ、ベルト伯爵。遠い所から来て頂きありがとうございます」
彼はルーンブラッド家に仕えるベルト伯爵。主にルーンブラッド家の土地管理をやってもらっている。ルーンブラッド家の土地は広大なため土地の端にベルト家の屋敷を建て、境界線の役割もしてもらっている。見た目は少しおじさんぽいが、前は冒険者だったらしく剣の腕前はある。しかし気が弱い。忙しい両親に変わって親代わりもしてくれた。
アメはベルト伯爵に一礼をした。その一礼はとても綺麗で煌びやかだった。アメは頭を上げベルト伯爵と目をあわせる。するとベルト伯爵はアメに近寄り小さな声で耳元で話す。
「例の準備完了致しました。けれど良いんですか?最悪、ルーンブラッド家を敵にするかもしれないのですよ」
アメは何も気に留めないように
「いいの!私は私の好きなようにやるだけだから!」
その言葉に一切の躊躇いや不安は感じなかった。
「それに、ベルトがもしもの時は手を回してくれそうだし。二ヒヒヒヒ....」
「勘弁してくださいよ......」
この様子を伺うにアメはどれほどベルトに迷惑をかけてきたのだろうか。
「それではアメ様、私は最終確認をしてきますのでこれで」
と言い残しベルトは去って行った。ベルトが居なくなると、ルーンブラッド家に仕える他の貴族達もアメに一言挨拶をしようと長蛇の列ができていた。挨拶をしてる時のアメの顔には疲れている顔はせずに笑顔でたち振る舞っていた。
「はぁ、やっと終った」
全員分の挨拶が終わる頃にはすっかり疲れきっていた。そこに追撃をかけるかのように
「アメ、そろそろお前のスピーチの時間だぞ」
アメは思った。疲れている娘にさらに追い打ちをかけていいものなのだろうかと。
会場の電気が消え暗闇に包まれる。しかし一カ所だけステージの上だけ電気がついていた。
「本日は私の17歳の誕生日会に来て頂きありがとうございます」
ステージに立つアメの姿は、凛々しく繊細で上品なスピーチだ。そのスピーチをするアメに先ほど去って行ったベルトが戻ってきて何か合図をしている。その合図を見たアメは急に笑顔になりこう言った。
「突然ながら、今日私はルーンブラッド家を出て行こうと思います!」
その一言に会場は騒然としだした。屋敷に仕えるメイドはもちろんアメの両親も驚いていた。
「な、なにを言ってるんだアメ!」
「そ、そうですよアメ様なにを言っているんですか」
こうなることは分かっていたかのようにアメは話しだす。
「私は冒険者になって五年前助けてくれた男の人を探して......結婚します!」
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