表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】捨てられた『聖女』を拾ったので、『魔女』は飼うことにした。  作者: 池中織奈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/40

笑わない『聖女』 ①




「オルタンシア、おはよう」

「……おはようございます」



 オルタンシアが私に飼われることを了承してから、少しが経過する。

 オルタンシアは、ただただ私にいわれるがままに過ごしているような――そういう雰囲気である。



 オルタンシアは、私が目を覚ます前にいつも目を覚ましている。

 『聖女』という職業は、毎日神に対する祈りを捧げる。私の昔の友人であった『聖女』も飽きもせず毎日毎日、神に祈りを捧げていた。ちなみに私はそんな面倒なことは全くしていない!



 正直言うと、祈りなんてしない私でも神力が使えたりするわけで、祈ったとしても祈らなかったとしてもそういう力は使えるので、才能とかの問題だと思うわ。

 まぁ、友人がいうには祈りを捧げた方がその力が増すとか言っていたけれど、実際がどうなのか私は知らないわ。



 何にせよ、オルタンシアはとても敬虔な『聖女』だったということなのだろう。神を信じ、祈り続けた『聖女』が、今は何らかの影響で捨てられた。

 私は神というものがこの世界に実在していることは知っているけれど、私は神というものをあんまり好きではない。





「オルタンシア、何か食べたいものある?」

「何でも」



 オルタンシアは自己主張をしない。

 私が何を言っても、一言二言で返してくる。



 元からオルタンシアがこういう風に自己主張しない性格だったのか、それともただ単に色んなことが起きてオルタンシアは言葉を発さないのか。



 拾ったばかりの私には分からない。



 私は一先ずオルタンシアという綺麗なお人形さんが私の家で動いて喋っている。それだけでも満足していた。

 だって可愛いもの。

 可愛いお人形さんが私の言葉に返事を返しているってだけでも面白いわよね。



 私、この家に他人を入れたのは久しぶりのことだ。何だかこうして此処に人がいるのも不思議な気持ちで、新鮮な気分になっている。








「オルタンシア、ちょっと出かけてくるわ。いい子にしていてね。あと逃げようとは思わないこと! すぐに連れ戻すからね」



 私はそう言って、オルタンシアを置いて家から出る。

 オルタンシアはただ小さく頷いた。



 オルタンシアは、自発的に何かをしようということはあまりない。ただ、祈りだけは毎日自分の意志でしているみたいだけれどもそれだけだ。






 私が家を出たのは、森の中で素材を手に入れるためである。魔物を狩ったり、薬草などを収穫するのは私の日課である。

 ちなみにこの場所は死の森なんて呼ばれているけれど、その名前に似つかわしくない部分も多くある。



 一つは薬草が豊富に生えていること。

 もう一つは、この場所には聖域と呼ばれる場所が存在していること。




 結局のところ、死の森という名付けは人が行ったものなのよね。

 この場所って確かに魔物も多いし、危険な植物だって生えている。だからこそ死の森なんて呼ばれているだけで、此処はとてもたくさんの資源が溢れている。この場所の真価を知られれば此処を手に入れようとする人も結構出てくるだろう。

 まぁ、そんなことはさせないけどね。




 さてさて、精霊たちはオルタンシアを追ってきている人はいないっていっていたけれど、念のため色々強化しておこうかな。私の可愛い人形さんを奪われてしまったら嫌だもの。


 

 私は煩わしいことは嫌いだから、元々自分の家に人が近づけば分かるようにはしてあった。

 だけど人形さんを拾ったので、オルタンシアが誰かに奪われたりしないように私はまた魔法を行使した。




 ……今の所、近づくのはいないみたい。

 ふーんって感じね。

 それにしても『聖女』であるオルタンシアが捨てられているだけでも不思議なのに、探しに来ないとなるとよっぽどの事態が起きているということ。



 その事情に関してはどうでもいい。




 私はそんなことを考えながら、私は死の森の中心部にある湖――この森の中の聖域と呼ばれる場所の一つを訪れる。


 その場には、多くの生物が顔を出す。

 空気が澄んで、神力が溢れている。精霊たちがこの死の森に多く住まうのは、聖域と呼ばれる場所に惹かれているからと言えるだろう。



 



「あら、ファニー、こんにちは」

「こんにちは」



 私に挨拶をしてきたのは、所謂上位精霊と呼ばれているような存在である。

 この死の森に長い間住んでいる私は、この森に長く生きている精霊たちとも知人である。





「『聖女』を拾ったんですって? ファニーは優しいわね」

「優しさからじゃないわよ。可愛い子だったから拾ったの」

「ふふ、そういうならそれでもいいわ。ファニーらしい理由だもの」




 私は自分がやりたいように、やっているだけなのだ。

 というか、精霊たちって結構私に対する好感度高いと思うのよね。一緒に過ごしているからっていうのもあるだろうし、何かあった時に精霊を助けた事もあるからだろうけれども。



 例えば私が『聖女』であるオルタンシアを見捨てていたとしても、私に優しく笑いかけたことだろう。

 


 私は湖の水を汲んでいく。

 この聖域の水というのは、何かを調合したりするときに使用するととても効能がよくなる。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ