『聖女』と『魔女』はロージャス王国へ ③
見た目は良いけれど、この子もそれだけっぽい気がするわ。
というか、そもそも私の可愛いシアを冤罪で追い出すような存在なんて気に食わないもの。
「ゼガラ様に何をしているんですか!! それにこんな惨状を起こすなんて――」
「煩いわね」
本当に煩い。
そう言う言葉を私が聞く必要も全くないしね。
怯えたような表情を向けられても、正直それがって感じ。それにしても『聖女』ってどちらかというと質素に生きている人が多そうなのだけど、この『聖女』はそういう存在ではなさそう。どちらかというと煌びやかなものを沢山身に着けている。
正直言って『聖女』だからと言って、質素であるべきとは思っていない。別にやることをやるのならば、どれだけ贅沢をしようとも関係がないと思っているから。
――だけど、幾らこの『聖女』が可愛い見た目をしていたとしても、この子のことが気に食わないと思うのは可愛いシアに冤罪をかけた存在だからである。
しかも、不愉快なのは人に対する魅了みたいなのを私にもかけようとしていることね。その魅了のような力は、限られた人にしかかけられないみたいだけど……、それでも私に狙いを定めたのは流石だと思うけれど、私にはそれはきかないのよね。
「貴方、私を魅了しようとしたわね?」
「え、あれ……?」
「私にそんなものが効くわけないじゃない。それにしても魅了の力を持っているなんて貴方、『聖女』らしからぬ能力だわね」
私はそう言って笑いながら、ターシリーに近づいたら、彼女は怯えたような顔をする。
「あ、貴方なんなのよ! 私はこのロージャス王国で『聖女』として、生きていくのよ!! 貴方みたいな『魔女』が何で邪魔してくるのよ!!」
「何でって、貴方が私のシアを虐めたから」
「え?」
「私は正直ロージャス王国がどうなろうとしったことじゃないの。でも私の可愛いシアが『悪女』扱いされていて、ちょっかいを出されるのが面倒だったから」
私の言葉が、ターシリーにとっては予想外だったらしい。
その顔を忌々しそうにゆがめて、シアを睨みつける。そして次の瞬間表情を変えた。アダイたちの存在に気付いたらしい。
「そこの神官さん! 『聖女』である私がこの忌まわしき『魔女』に痛めつけられようとしているんですよ! 私をたすけなさい!」
あら、この子、これだけ遠いのにアダイに魅了をかけようとしだしたわ。何というか、逞しい。
アダイは引っかかるかしら?
引っかかったら、ドラゴンの上から落として魅了を無理やりとくけれど……って思っていたら、アダイは嫌そうな顔をしてターシリーを見ていた。
「はっ、『封印の聖女』様に対して忌まわしき『魔女』なんて呼ぶなんて、貴方の方が忌々しい存在です。そもそも『聖女』としての力を証明しているわけでもなく、『聖女』であるオルタンシア様を追いやった存在などに操られるわけがないでしょう。第一『聖女』というのは――」
何だか、アダイがブツブツ言い始めた。
……とりあえずそんなアダイは放っておこう。
とりあえずターシリーは、拘束してしまおう。
何で魅了がきかないのだろうかと忌々しそうな顔をしている。それにしても可愛い顔立ちでもそういう表情をしていると、異性に引かれそうな感じよね。
「なっ、何をするのよ!! 私は『聖女』なのよ! この私にこんなことをしていいと思っているの!」
「いいに決まっているじゃない。そもそもエルラーサ教の大司教に魅了なんてかけてただで済むわけがないじゃない。正当な『聖女』に対して不当な扱いをしたこのロージャス王国に対して制裁を加える予定があるもの」
ただ私が好き勝手して、このロージャス王国を壊すだけってのも出来るけれど――それよりもこうやってちゃんと処罰したほうがいいものね。
それにしてもターシリーが煩いので、魔法で口を塞いでおく。
全員を無力化してから、シアやアダイたちを降ろす。
それにしてもこのロージャス王国の連中、弱かったわね。思ったよりも弱いっていうか……。
「思ったよりも弱かったわね」
「……ファニー様、私の味方をした方はどんどん排除されましたから」
「ああ、なるほど。この新しい『聖女』に同調する人たちだけが残ったからっていうのもあるのね」
まともな人なら正当に『聖女』として過ごしてきたシアのことを捨てるなんて扱いを許すはずがない。此処にいるのは、王太子たちに同調するものだけだったっていうそういう感じなのね。
さてさて、此処からはアダイに任せましょうかね。
私が口を出しても変なことになりそうだし。
エルラーサ教の大司教であるアダイの方がそういうのはちゃんと出来そうだし。
「アダイ、よろしく頼むわよ」
「はい!! ファニー様の期待に答えられるように頑張ります!!」
それにしても私が頼んだからって、気合入れすぎじゃない?




