『聖女』と話す昔の話 ⑧
「アダイはシアのこと、何処まで聞いている?」
「ロージャス王国の『聖女』様が変わったということ、あとはオルタンシア様の悪い噂が出回っていることぐらいでしょうか。そして新しい『聖女』様が贅沢を尽くしているとか、そういう噂ですね。そしてオルタンシア様の味方をしたものが閑職に追いやられたりしているのは聞いてます」
「エルラーサ教としては、どうする気?」
「そうですね。事情を聴きに向かう予定では元々ありましたよ。ただ中々向こうが会おうとしてくれなくて、無理やり押し掛けようかなってなってたところです」
「ふーん。そうなのね。あのね。私の可愛いシアが悪女扱いされているのよ。だからね、私はそれをどうにかしたいの。それにシアを悪女って決めつけて、『死の森』にどんどん来られても困るじゃない? 私が魔法でどうにかするのもいいのだけど、シアは優しいから国民たちにまで被害が行くのが嫌だって言っているの。それで力を貸してほしいのだけど、いいかしら?」
私はシアが悪女なんて呼ばれているのも嫌だし、シア目当てに森に沢山人がくるのも嫌だ。
というか、面倒だから全員どうにか蹴散らしたい気持ちにはなっている。
私の言葉にアダイは、すぐさま答えた。
「もちろんです。ファニー様。幾らでも力を貸しましょう」
「そんな風に貴方一人で安受けしてもいいの?」
「問題ありません! 教皇も他の大神官もファニー様の望みなら何でも聞きます」
「それはそれでどうなの……? それでお礼は何をしたらいいの?」
「お礼? そんなものいりません! ファニー様がなした偉業に対する当然の行いですから」
「いえ、それは嫌だわ。私は誰かに何かをされっぱなしっていうのは嫌いなの」
何だろう、誰かに何かをもらいっぱなしとか、されっぱなしってあんまり好きじゃないのよね。
それに何かをやってもらったら対価を払うのは当然のことだもの。私はちゃんと対価を与えたい。
そう思って告げた言葉に、アダイは考える仕草をする。
そして意気揚々と言う。
「でしたらファニー様とオルタンシア様の肖像画を描かせてください! そしてよろしければ、また此処を訪れていただければ……!」
「肖像画? 貴方達肖像画が好きね」
「えっと、ファニー様だけではなく私のもですか?」
「はい! ファニー様とオルタンシア様の二人の肖像画を! 是非とも!! 此処に並べたいのです!!」
何だろう、良く分からないけれど立ち上がって熱弁しだした。
……本当に肖像画が好きなのね。いや、この場合ただの肖像画には興味がなくて自惚れじゃなく私の肖像画が欲しいってだけかしら。シアのも描こうとしているのは、私と一緒に来たからかしらね。
「シアはどう? 肖像画描かれてもいい? あとこのエルラーサ教の本部にはきたい? 私はどっちでもいいけど」
「肖像画を描かれるのは構いません。……ただ出来たらファニー様と私の肖像画、私も欲しいなって思います。あとエルラーサ教の本部は本来、私には入れない場所ですし、来られるならきたいです」
「シアは本当に可愛いわね!! 聞いた通りよ、アダイ。私とシアの肖像画を描くことは許可するわ。それを私にも献上しなさい。そしてシアが来たがっているから来るわよ。此処に」
正直、こういう私とエルソッラの肖像画だらけの部屋は何とも言えない気持ちになるからよく来たいと思える場所ではない。でもシアが此処に来ることを望んでいるのならば別よ。可愛いお人形さんが望むのだから、それを叶えるのは飼い主として当然よね。
アダイは感涙極まった様子である。
「ありがとうございます!! それでファニー様、ロージャス王国をどうにかしに行きましょうか! 今すぐ行きましょう!」
「……準備とかないの? ちなみに私的には今の王太子は幽閉か死刑にしたいのだけど。あとシアを追い落とした奴も。それでまともな『聖女』にちゃんと結界を張ってもらうことも重要ね。そうしないとシアの望みのロージャス王国の国民が傷つかないようにするっていうのが叶わないもの。あと、ロージャス王国ってそのぼんくら王太子のほかに王位継承権持ってる人っているの?」
「現王の弟君が濃厚ですかね。王位に興味もなく、戦ってばかりのようですが、有能な人ですよ。彼は基本的に王都に居ないのでオルタンシア様の騒動には全く関わってなさそうですしね。あとは側妃が産ませたという王子と王女が候補ですからね。ただ正妃の子供はやめた方がいいと思います。王太子の暴走を止めたりオルタンシア様の助けをしなかった時点で、彼らも王太子と同じような感じでしょう」
確か現王が倒れたため、王太子が実権を握ったのよね。
シアのために何かをしようとした人は、次々と閑職に追いやられたりしていたみたいだし、そのあたりが妥当なのかしら。
まぁ、誰が王位を継ぐにしろ、『聖女』に対して馬鹿な真似をしないことと、シアに何かちょっかいだすなら燃やすって言っとけば大人しくなるかしらね。
王弟か、側妃の子供か。
まぁ、会ってみてまともそうなのに継がせればいいわよね。で、面倒なことは全部エルラーサ教に押し付ければいいわ。
アダイも「是非押し付けてください」なんて言っているしね。
――そしてロージャス王国をどうするか話し合いをした後、早速ロージャス王国に向かうことにした。