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『聖女』と話す昔の話 ⑥

12/11 二話目






「えっと、ファニー様、アダイ様、発言失礼します。け、結局、ファニー様ってどういうことを成したのでしょうか……。ファニー様が『封印の聖女』様なんて言われている理由とか、エルラーサ教にこれだけ歓迎されている理由とか、私、気になります!」

「ふふ、シアは可愛いわねぇ。そんな風に発言失礼しますなんて言わなくていいのよ? 幾らでも発言していいのよ?」

「ひゃっ、ファニー様! こ、こんなところで抱き着かないでください!」

「可愛いもの!」


 しおらしい様子のシアが可愛くて、思わず抱き着いてしまった。

 そんな風に恐る恐る発言しなくていいのに。それにしても抱きつかれると焦っているシアもとっても可愛いわ。可愛すぎるわ。



 ぎゅーっとシアを抱きしめていると、アダイの様子が少しおかしかった。



「これは素晴らしいものを見ております。エルソッラ様とファニー様の仲こそ至高だと思っておりましたが、ファニー様がこれだけ可愛がっている方がこれだけ美しいと、とても絵になります。これこそ、絵師を呼び今すぐ肖像画に……」


 なんかブツブツ言っているんだけど、大丈夫かしら??



「アダイ、大丈夫?」

「こほんっ、問題ありません!! それよりファニー様の偉業について、貴方様は知らないのですね。それにお名前をお聞きしていないので聞いてもよろしいですか?」

「は、はい。わ、私はオルタンシアです! 今はファニー様のお人形です!」

「ふふ、偉いわ。ちゃんと自己紹介出来て」


 いいわねぇ。私のシアが私のお人形ですって、自己紹介するの。



「オルタンシア……? もしかしてロージャス王国の第一の『聖女』様のオルタンシア様ですか? 確かロージャス王国は第一の『聖女』様が変わったと聞いておりますが」

「流石、エルラーサ教。情報が早いわね。私のシアはロージャス王国にある事ない事言われて貶められて、森に捨てられていたの。だから私が拾って飼っているのよ。アダイ、私のシア、とっても可愛いでしょ?」

「はい! とってもかわいらしいです」



 なんだろう、この大司教、私の言葉に全て肯定するぐらいの勢いがあるのだけど……。

 その言葉の後、またアダイはこほんっと咳ばらいをする。



「事情は分かりました。ロージャス王国は確かにきな臭くなっていると聞いてましたが、まさか今では『死の森』と呼ばれている場所にオルタンシア様を捨てるなんて真似をするとは……。あそこは現在では『死の森』と言われていて、人が滅多に近づかないというのに……。ロージャス王国だとあの森の価値も知らないでしょうし、オルタンシア様がそこに捨てられたのは偶然でしょうね。ファニー様に拾われて本当に幸運でしたね。あの森は戦闘力のないものがいけば大変ですから」



 やっぱりエルラーサ教には、しっかりと邪神出現時のこととか、色んな情報が残されているらしい。

 


「はい。私はファニー様に拾われて幸運でした」

「そうでしょう。ファニー様に拾われて飼われて可愛がられるなんて何て羨ましいことでしょうか。歴代の教皇と大司教がむせび泣くレベルです」

「そ、それほどまでですか?」

「はい。当然です。それにオルタンシア様は、現在は『死の森』として呼ばれているあの場所――『精霊の大森林』に住んでいるのでしょう? 私たちはファニー様の御不興を買わないために必要以上に近づかないようにしてますからね!」



 アダイの勢いが凄い。というか御不興って何? って思いながら私は部屋の中央部にあるソファに腰かける。シアにも隣に座ってもらう。アダイは立ったままだ。座ってもいいんだけど。

 しかし勝手に座ってもアダイは文句を言うつもりもないらしい。



「アダイ、私の不興を買うってのは?」

「ファニー様が目を覚まされた時に、『聖女』扱いなんて御免だ。自分のことは放っておいてくれと言っていた記録がありますから」


 うん、それは確かに言ったわよ。私はあの森で過ごすから、私のことは放っておいてエルソッラを『聖女』として祭り上げればいいって。

 

 そもそも私はエルソッラと違ってエルラーサ教とそこまでかかわってきたわけでもなかったし。

 



「アダイ様、あの森は『精霊の大森林』と呼ばれていた場所なんですか!?」

「はい。そうですよ。現在の『死の森』は、魔物が沢山溢れるあの場所は元々は危険も今よりも少なく、人々にとって開かれた神聖な森と伝えられてます。まごう事なき聖地です。精霊様たちが多く住まい、神聖なる空気が森全体を覆いつくしていた場所らしいですよ。その当時のことはファニー様が一番知っているのでは?」

「そうね。昔のあの森は『聖女』や教会にとっても特別な場所で、神力が満ち溢れていた場所だったわね」


 『聖女』たちが良く訪れていた聖なる場所。

 それがあの森だった。まぁ、昔を知らない人たちにとっては信じられないことだろうけれども。



「その場所がどうして、『死の森』と……?」

「まぁ、『死の森』という噂を広めたのは意図的なものもあったそうですが、あの土地に邪神を封印したからですね。邪神の消滅には、大きな力が必要だったのだとエルソッラ様の日記や当時の記録には残されています。そのために用いられた力が、『精霊の大森林』に満ち溢れた神力だったそうです。邪神の消滅に伴い、『精霊の大森林』は姿を変えました。神力は減少し、そして邪神の残骸の、残り香のような魔力が森を覆い、魔物が活性化したそうですよ。邪神が封印されずこの世界を支配したら、その程度の犠牲ではすまなかったでしょう。だからこそ私たちエルラーサ教は、今の平和の暮らしを作ってくれた偉大なる『聖女』様に敬意と尊敬を持っています。邪神を封印するために全力を尽くし邪神が封印された後も邪神の復活の影響で混乱に陥った人々も導いてくださった『暁光の聖女』エルソッラ様と、そして邪神の復活した世でエルソッラ様と一緒に戦い邪神を封印する際にその身ごと封印の一部となり邪神を消滅させた『封印の聖女』ファニー様は私たちエルラーサ教にとってもこの大陸にとっても特別な方です」



 そんな言葉を言い切って、アダイはにっこりと笑った。





 

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[一言] ネッシンナシンジャダナー ファニーすご
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