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【連載版】捨てられた『聖女』を拾ったので、『魔女』は飼うことにした。  作者: 池中織奈


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『聖女』と話す昔の話 ⑤


「『封印の聖女』?」

「大司祭のアダイ様が跪いているぞ」


 ざわざわと周りがざわめく。

 あー、面倒! というか何で本当にその名前が残っているのかしら。私は『聖女』なんて私に似つかわしくない呼び名は全部エルソッラに押し付けていたはず……なんだけど。



 でもエルソッラは、後世にまで絶対に私の名を伝えて見せるってそう言ってたから、それで伝わっているってことかしらね。


「ファニー様、『封印の聖女』っていうのは?」

「あー……」


 シアに問いかけられて、思わず言葉を濁す。

 周りの反応を見る限り、実際の私のことを知っているのはおそらくエルラーサ教の中でも有力者だけだろう。こんなところで自分の事を散々話したら面倒なことになるに決まっている。


 私はアダイと呼ばれた男に視線を向ける。

 ……何でか知らないけれどにっこにこである。




「ファニー様、そしてお付き添いの方もどうぞ、中へ」



 そして私たちを、エルラーサ教の本部の中へと連れて行った。

 しかもかなり奥のエリアに連れていこうとしているようだ。エルラーサ教はこの世界でも一番大きな宗教で、その本部の奥まったエリアなんて機密事項だらけで普通の人は入れないはずだけど……いいのかしら。



「私たちを奥まで連れて行っていいの?」

「当然です。貴方様は『封印の聖女』ファニー様ですから」

「あら、私が偽物だったらどうする気?」

「ドラゴンに乗ってエルラーサ教の本部にやってきて、囲まれても平然としているなんてファニー様以外に考えられません。それに伝え聞いている見た目と一致していますし、ファニー様は何か証拠もお持ちでしょう?」

「これのこと?」

「おおっ! これぞ、まさにエルソッラ様の首飾り!!」



 なんだろう、向けられる視線が思っていたよりも重い。

 私に対して崇拝みたいな、良く分からない好意を抱いているように見える。私ってエルラーサ教とそんなに関わってきてないのだけど、寧ろ貢物が来ていても放置していたのだけど……。



 エルソッラの首飾りを見て、魔法具を使って本物かどうか鑑定していた。そして嬉しそうな顔をして目をキラキラさせている。




 どうしてこんなにテンションが高いのかしらね。

 そんなことを考えながら、案内された部屋はアダイの部屋の本棚の奥の隠し部屋だった。色んな鍵がかけられているようで、一つ一つ開錠していくアダイ。

 思いっきり私に開錠方法見られているけど、いいの?




「アダイ」

「ファニー様が私の名を呼ぶなんてっ」

「そんなことで感動しないでくれる? それより秘密の部屋の開錠方法思いっきり私とシアに見られているけれど、いいのかしら? 私、忍び込み放題よ?」

「問題ありません! エルラーサ教はファニー様に隠すことなど何もありません。それにそちらの方はファニー様が連れてきた方ですから」


 そんなことを断言された。

 というか、このノリあれだわ。思い出したけれど昔もエルラーサ教ってこういうノリの連中が多かった気がするわ。

 やたらと私のことを『聖女』に祭り上げようとして、ファニー様ファニー様言っていたわ。何で昔と同じノリなのかしら……。



 貢物が継続されているから私が生きていることを知っているとは思っていたけれど、何だかこういう風な態度されるとは予想外だったわ。

 私と手を繋いでいるシアなんて驚きっぱなしよ。




 そしていくつもの鍵を開錠してたどり着いた隠し部屋にたどり着いて思わず一言。




「……なによ、此処」



 その部屋は私やエルソッラを含む邪神に対して行動した面々に関係するものが沢山置かれているのだけど……一番目立つところに巨大な私とエルソッラの肖像画が飾られていたわ。

 あの頃だと私の肖像画とか書いた人も確かにいたけれど。というか、一つだけじゃなくて沢山飾られているのだけど、何ここ? 機密事項だらけの特別な部屋に案内されると思ったのに私とエルソッラの肖像画飾りすぎじゃない??


 いや、まぁ、私はエルソッラに『聖女』を押し付けて『聖女』なんて名が広まらないようにしてもらったから、ある意味私が『封印の聖女』なんて似合わない名でよばれていたのは機密事項だけど。……なんなのこの部屋??




「聖戦における偉大なる英雄、『暁光の聖女』様と『封印の聖女』様を奉る部屋です!」

「英雄扱いと聖女呼びはやめなさい。私は英雄なんて柄じゃないわ」

「ああぁああ、本当にファニー様がこの場にいらしてくださっているなんてっ。それにエルソッラ様の日記5冊目の108ページ14行目に書かれていた通りの性格ですね!」

「なんて……?」


 思わず言われた言葉が理解出来なくて聞き返してしまう。

 というか、さっきまでキラキラした目は向けてもここまで動揺してなかったのに、この部屋にたどり着いた途端、冷静さ失いすぎじゃない??



「此処は教皇や大司祭、それに一部の者のみが入れる聖なる部屋なのです。教皇と大司祭はエルソッラ様の聖なる日記を読む権利を与えられるのです! 私はそれを暗記しております!!」




 ……聖なる日記? 多分普通のエルソッラの日記よね?

 それを暗記しているって何なのかしら。



エルラーサ教の教皇や大司祭は大体エルソッラとファニーのオタクです。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、腐敗してるよりは全然いいよね
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