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【連載版】捨てられた『聖女』を拾ったので、『魔女』は飼うことにした。  作者: 池中織奈


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『聖女』と話す昔の話 ③




「ファニー様、出来るっていってますけど何するんですか?」

「んー。盛大に脅しちゃえばいいんじゃない。それで国が滅んでもそれはそれだしー」

「いえ、出来れば……国民たちには被害がないようにしてほしいです……」

「シアは優しくていい子ね」

「いえ……、私はただ自分の故郷の国が大変な目に遭うのは止めたいっていうか……。嫌だって思っているだけで、優しいわけではないです」

「ふふ、そういう考えなのが優しいのよ」



 シアは何だかんだ優しいというか、割り切れない所がシアの良さだと思うわ。

 それにしてもシアは国自体が駄目になるのは嫌だって思っているのね。それならばそれでどうにでも出来るわ。



「んー、じゃあ上を挿げ替えれたらいいわよね? 国を守るための結界が上手く起動しないとなると国民たちも死んでしまう可能性もあるわね。それがシアは嫌なのよね」

「……そうですね。出来ればですけど。ファニー様なら、そういう風に出来ますか?」

「ふふ、出来るわよ。シアのその期待に、私が応えようじゃない」

「いいんですか? ファニー様は、そこまでする必要ないのに……」

「いいのよ。だって私はシアの飼い主だもの。可愛いお人形さんのために、全力を尽くすのは当然だもの」



 それにしても上目遣いするシアは可愛いわ。それにいじらしいし、最高じゃないの!


 私は正直シアを捨てた国なんて国ごと滅びてもいいのでは? って感じなのだけれども、シアが望むのならば私が出来る限り叶えてあげよう。


 ……とはいってもシアを追放なんてした馬鹿にかんしては容赦はする気はない。それにシアを蹴落とした子にも。シアもそのくらい分かっていると思う。ただシアは関係のない国民たちにまで何かがあるのが嫌だって思っているだけだもの。



 シアを安心させるためにも、きっちりと引導を渡すためにも、どうしましょう。



 正直に言うと、使える伝手は幾つもある。

 知り合いの異種族たちを使ってもいいし、ロームたちドラゴンを使ってもいい。でも人間の国にそれをけしかけるのは悪手かしら。


 それにドラゴンたちも人の国にはあまり行かないものね。

 一斉に向かったら騒ぎになるだけで終わりかもしれない。滅ぼすだけなら簡単に出来るけれど、シアはそれを望んでいないのよね。


 正直力づくで実力行使する方が得意なのだけれど。



「ファニー様、どうしました? や、やっぱり難しいですか?」

「ああ、もう不安そうな顔をしなくていいのよ。シア。少し、どういう伝手を使おうか考えていただけよ」

「伝手?」

「ええ。私、これでも長生きしているから、結構色んな伝手があるのよ。使おうと思えば使える伝手は幾つかあるわ。……多分、今も使えるはず」


 まぁ、幾つかはあくまで多分になるけれど。

 だって人の寿命なんて短いから、人間の方の伝手だと大体が無効かもしれないわ。


 と、そこまで考えて以前エルソッラからもらったものを思い出した。





「えーっと、そういえばあれってまだ有効かしら」



 私はそう言いながら、引き出しの中をあさる。確かこの辺りにしまっていたはず……。っていうか、この存在結構忘れてたわ。エルソッラの思い出の場所巡りで関連場所いったのに、すっかり忘れてたけど、確か……。




「あったあった」

「……ファニー様、それって」

「エルソッラの『聖女』時代に使っていた首飾りね。特注品よ。今の時代だと、所謂聖遺物って呼ばれる物の類ね。エルソッラが残してくれたのよねぇ」



 私が少しだけ眠る前、エルソッラはこれを私に託したのよね。私はこれを首にかけて眠ったんだっけ。特にエルソッラのもっていた首飾りって、色んな魔法がかかっているのよね。



 

『ファニー。貴方が次に目が覚める時、私は既に没している可能性が高いわ。なるべく長生きするつもりだけど、これを渡しておくわ。貴方が目覚めて、貴方の知っている人たちが皆いなくなっていたとしても、私がファニーを親友だと思っていることは忘れないで。だから貴方が目覚めた時には迎えをよこすから。そして未来永劫私の親友である貴方が力を貸してほしい時はエルラーサ教の本部に顔を出してね。絶対に後世まで伝えきるから』



 確かそんなことをエルソッラは言っていたんだっけ?

 エルラーサ教っていうのは、昔から根付いている宗教である。ちなみに信仰している神の名から宗教名は来ている。エルソッラの名前は、そこからとられたって聞いた。

 そして『暁光の聖女』と呼ばれるだけの功績を残したエルソッラは、エルラーサ教にとっても大切な存在である。寧ろ、あそこの連中はエルソッラの事を女神か何かだと思っている節がある。


 ……私が目を覚ました時、色々あいつら騒がしかったのよねぇ。

 というか、今でも私は返事とかしなくても貢物なのかなんかよこしてきたりするし、形式的にそれを続けているっていうより、私がまだ生きていることを知ってやっていると思うのよね。



 そう考えると、エルラーサ教がほぼ国を牛耳っている神聖国家に向かいましょうか。

 そしてエルラーサ教の本部によったらいいかもしれないわ。ロージャス帝国が『聖女』に非道な真似をしたってのも、十分にエルラーサ教なら口出し出来るだろうし。


 エルソッラが伝説のように伝えられている『聖女』だからってのもあるけれど、エルラーサ教の信徒って沢山いて、その手はどこの国にも割と伸びているし。



 

「シア、エルラーサ教の本部に行きましょう!」




 私はそう言って、シアの手を握る。

 シアは戸惑いながらも、それに頷いた。





 


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